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「ねぇ、由紀。」
急に親友に話しかけられてバッと隣を見る。「驚かせないでよー!」とおどけてみせたら、いつもは“驚かしてないよ!”と笑いながら言ってくるくせに、今日はいつになく弱々しい声で
「ごめん」
と言ってくるから、私は少し固まってしまった。
どこまでも澄んでいる青空の下。眼の前の青い景色を眺めながら暫くして黙り込んでしまい、二人の静かな時間が流れた。
「海…近いけど、あんまり来なくなっちゃったよね」
不意にそう言ってきた。まぁ確かにあまり来ていなかった。
「ほんと、ほんと。勉強ばっかしてたから」
「んなことないでしょ?」
「えぇー…ひどくない?笑」
「どうせ家でゲームでもしてたんでしょ!」
「それはそうだけどさ!」
…楽しい。ずっとこうしていたい。でもいつも悲しそうに「ばいばい」と言って別れてしまうから。
「…あー楽しかった!じゃぁばいばい」
私はどこかに消えちゃいそうな手を取りたくて必死に叫んだ。それでも親友は止まってくれない。どうしても行ってほしくない。ぐっと力を込めて手を伸ばした。
「ッ、」
「あ…」
けれど、伸ばした手の先には、親友の手ではなくただの虚空があった。
蝉と波の音が合わさりうるさい夏が帰ってくる。
もう行く時間だ
「…またね」
「うん。ばいばい」
私の親友は今、幽霊だ