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ことの発端は親友の由梨が自殺で亡くなったことだ。
数ヶ月前、町の海に原型を留めていない女性の死体が見つかった。解剖をし、調べるとその死体は由梨であることがわかった。誰かが殺害、突き落としたというような証拠がなかった為、自殺という判断が下された。由梨と親友だった私は魂を抜かれたようになり1ヶ月ほど家に籠もっていた。毎日泣いて過ごしていたが、ある日あちらの世界にいけば由梨に会えるかもしれないと思い、私は海に行った。
海は私と由梨が散々遊びに来た場所だった。嬉しいことがあっても、悲しいことがあっても、理由をつけていつも海に来ていた。そんな思い出の場所。一歩、また一歩と深い方へ歩いていく。後悔や恐怖はなかった。海面が大体腰辺りまで来た時に、急に由梨の声が聞こえた気がした。でも、あちらの世界に近づけているんだろうと思い足は止めなかった。しかし、声は大きくなっていく。気になってしまい、思わず辺りを見回す。1ヶ月間、ずっと待ち望んでいた声。喉の奥から絞り出すように
「由梨…?」
と死ぬより先に由梨のことを探し、呼んでいる自分が居た。ふと、
「由紀。」
後ろの方ではっきりと名前を呼ばれた。振り返って見てみると、あの由梨は宙に浮いていた。現実ではありえない光景にあ然としていると、由梨が喋りだした。
「とりあえず…さ。ゆっくり話したいから浜辺に行こうよ。」
私は言われるがままに由梨についていった。
ついた途端、私は涙が止まらなくてまともに喋ることができなかった。状況は全くわからないが、ずっと会いたかった由梨が目の前にいる。それだけで何とも言えないような気持ちになった。
「落ち着いた?」
「ゆりっ…どこ、いってたの?」
「とーいとこ。でも大丈夫だよ。由紀には会えるから。」
「それってどうゆう…」
「まぁまぁ!久しぶりに会えたんだし、話そうよ!」
「…う、うん!」
久々に由梨と話している間は夢みたいだった。我も忘れて話していたが、一体どれくらい時間が経っただろう。もう夕日が沈みかけていた。
「そろそろ時間かな。」
「え?」
「ごめんね。家に帰んないと」
「でも、由梨の家はこっちでしょ?前みたいに一緒に帰ろうよ!」
「…ごめん。ごめんね。」
「由梨…?」
「ばいばい」
「え」
由梨がそう言った途端、強い風が吹き始めた。思わず目を閉じてしまい、風が止んだ時には由梨がいなくなっていた。その後日が暮れても探し続けたが、親に引き止められ、仕方なく家に帰った。