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「 狼が笑った 」
こちらは第三者から見たお話となっています。
森は湿っていた。
月の雲に隠れるたび闇が濃くなる。
その度に何かが足元をかすめる気がした。
「いたぞ..!! 」
松明が照らした先でりうらが笑っていた。
血の水たまりの真ん中で膝を抱えてゆっくりと揺れている。
髪も顔も赤黒く固まった血で覆われていた。
その手にはまだ暖かい何かが握られている。
落ちた。
心臓だった。
ぬちゃりと音を立てて地面に転がった。
赫 : やぁ。
りうらは顔を上げた。
金色の瞳が月明かりを反射する。
笑った。
声を出さず口角だけを上げる。
あまりに子供らしい笑顔だった。
次の瞬間、森中の木々から何かが落ちた。
首。
腕。
脚。
それぞれ別々の枝に吊るされていたものがずるりと落ちて村人たちの足元に転がった。
すべて血の跡を引きながらりうらの周りに集まっていく。
赫 : ほら、元通り。
にこりと笑ったその瞬間村人たちの背後から骨の擦れる音が響いた。
振り返るとそこには顔を失った人間がいた。
肩から上はないのに口がある場所で微かに笑っているように見えた。
赫 : りうらずっと我慢してたんだ。ずっと、ずっといい子にしてたんだ。
森の影から無数の目が覗いている。
ひしゃげた顔。
割れた口。
折れた手足。
森に埋められた死体たちが這い出してきたのだ。
最初の悲鳴はすぐに途切れた。
血が跳ね返る音、骨が砕ける音、肉が裂ける音だけが続く。
りうらはそれを見ながらまるで祭りを見ている子供かのように楽しそうに笑っていた。
夜が明ける頃、街の入り口には綺麗に並べられた沢山の顔があった。
笑った顔も、泣いた顔もすべて同じ方向を向いている。
その中心にりうらが座っていた。
血まみれの頬で静かに微笑んで言った。
「 次は君の番だよ 」
その言葉と同時に背後で枝が折れるような音がしたような気がした。
end.
コメント
7件
え神🫵🏻( 題名?からもう天才すんぎた…刺さりまくり、みうちの書く小説全部刺さってる気がする()