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僕は国の真ん中あたりの研究所で育った。
少し大きい国お城の隣にあるんだ。
そこに何があるのか、誰がいるのか、
一般人は知らないのだけど、僕の育て親__カンヅキは知っていた。
「国の重要な人物がいるんだよ」
「国王様はもちろん、服を造る人もいるんだ」
僕は今から5年ぶり…本当は10年の予定だった謹慎を正式に解除してもらい、外に出る。
ずっとカンヅキとだけ、喋っていた。
ずっとカンヅキと沢山のぬいぐるみと過ごした。
カンヅキは僕に陽の光を与えてくれた。
カンヅキとぬいぐるみで、本を読んだ。
150冊以上は読んだ。今も宝物だよ。
カンヅキは忙しい研究者だから僕は寂しい。
ほんとに懐かしいことがよく思い浮かばる。
思い浮かべる必要なんてないようなことも。
研究所に来る前のことも。
「そろそろ行こっか!」
「はい、、」
「怖い?」
「…人と話すのとか、世間の目とかが、」
「大丈夫だいじょぶ!行こう!ビビ!」
ビビは僕のあだ名。
カンヅキとあった日、ずっとビクビクしてた。
名前がなかった。だからビビ。
後で実名も話した。『リン』だよ、って。
でも、やっぱりビビって呼ばれる。まぁいい。
「取り敢えず、管理館に行こう!」
少し眩しい空の元、2人で外へ出た。
すぐ近くの管理館、、なのに。
あの子、人殺したっていう…なんて言葉が入る。
僕は有名人だ。そう思わなくちゃ無理なんだ…
どんよりしている。心做しか空も。
管理館の3階、登録室。
エレベーターに乗って着くまで、ずっとフードを深く被った。
「こんにちは、カンヅキ様ですね。」
「はい、お願いします!」
突っかからない声でカンヅキは喋る。
「この書類のこの項目に書いてください。」
「はーい。」
僕の手を引いて、柔らかいソファーに座る。
側に着いた木製のミニテーブルに書類を載せて、今にも泣きそうな目で手を進めた。
なんでかなって、聞きたい、でも今じゃない。
カンヅキ リン/15歳/…スラスラ書いていく。
「良かった、本当…」
「何がですか、」
「認められて、良かった…報われてね」
この瞬間、カンヅキの忙しさの原因が1つ、理解出来たような気がした。たかが、育て子が認められただけで感情昂るようなのは出ない。
カンヅキの手が止まった。
『人生希望』と書いてある。
「ねぇ、なりたいものとか、ある?」
「んー、、」
1面の壁のど真ん中にある掲示板に目をやる。
文句板、みたいなもの。
「僕、人の役に立てるようになりたい」
「お!いいじゃん!細かいこととかは?」
自分の得意、好きを思い浮かべてみる。
「小説を書いたり、服作ったりとかですかね」
「え〜♪素敵じゃん!」
ガタイの良い、顔も良い、可愛い人だ。
桃色の短髪を頑張って結った三つ編みとか。
改めて思った。
「よし、これで完了!」
「はい、了解致します!」
「少々、お待ちください」
「はーい!」
「ねぇ、僕あっち行ってきます。」
僕の行先はあの文句板。
さっきのなりたいものはそこから出した。
『本がつまらない』
『服がダサい。多様性的にもバツ。』
『好きなことさせてよ〜』
『生きる価値をつけて、救って。』
もう、ぶっちゃけどれでも良かった。
それは政府に言うことか?なんてものもある。
色々眺めていると、埋もれた紙を見つけた。
『リンの謹慎は無駄!出させて!』
リン…謹慎…恐らく僕だ。
じゃあこれはカンヅキの?
「君、かな。本当にすまん。。」
待ち時間、カンヅキがトイレに行った時。
図太い声に見惚れた。
他の人とは少し違う服を着た、強そうな人。
誰だろう…?