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第一話:クラスティー・ショーのアシスタントは、誰?
スプリングフィールドの朝は、いつもと変わらない。新聞にはバートの悪事、リサの表彰、ホーマーの事故が並び、空にはほんのりとピンク色が広がっていた。そんな中、クラスティー・ザ・クラウンは、TV局の会議室で大きな声を張り上げていた。
「なあ、聞いてくれよ!オレ様の新番組『クラスティーショー』、いよいよ来月からスタートだ!」
周りのスタッフが拍手する中、一人、サイドショー・メルは静かに立っていた。彼のトレードマークである長い骨のような髪が揺れ、冷たい視線をクラスティーに向ける。
「クラスティー……それで、アシスタントはもちろん僕だろう?」
クラスティーは一瞬目をそらし、慌てたように笑った。
「え?あ、ああ~、そのことなんだけどな……メル、おまえとは、別のアシスタントにするんだよ!」
一瞬、空気が止まった。メルの目がカッと見開かれ、深いため息をついた。
「僕では……不足だと?長年、君のそばでピエロの足を支えてきた僕が?」
「いやいや、そういうわけじゃ……とにかく、新しい風を入れたいんだよ!視聴率だって、若いヤツが必要なんだってさ。局が言ってんだよ、局が!」
だが、メルは何も言わず、クラスティーを一瞥して、無言で部屋を出て行った。長いコートがヒラリと揺れ、その姿はいつになく哀愁を帯びていた。
翌日から、クラスティーは番組用のアシスタントオーディションを始めた。候補者は次々と現れたが、どれもパッとしない。
● リサ・シンプソン:知性は抜群だが、ギャグが全くウケない。 ● ディスコ・スチュー:音楽センスはあるが、喋るたびに時代遅れ感がすごい。 ● ネルソン・マンツ:ギャグのたびに「ハッハー!」と自分で笑って終わる。 ● アプーの八つ子のひとり:天才的だが、舞台の上で居眠りしてしまう。
「ダメだ……全部ダメだ!どうしてこうなるんだ!」
クラスティーは控室で頭を抱え、煙草に火をつけようとしてマッチを折りまくった。
「結局、メルしかいねーってことか……」
その晩、クラスティーはバーで一人酒を飲んでいた。酔いが回り、カウンターの上でぼやく。
「オレが悪かったのか?いや、でも時代の波には逆らえねーし……でもアイツ、いつも黙って支えてくれてたっけな……」
すると、背後から重い足音。
「クラスティー」
その声に、クラスティーは振り返った。そこには、静かに立つサイドショー・メルの姿が。
「……ああ、来てくれたのか。オレ、あれからずっと考えててさ」
「いや、言い訳はいい。君が何を求めようと、私はステージの上で君の後ろに立つ。それが私の仕事だ」
「……メル。オレ、お前がいないとダメみたいだ。頼む、戻ってくれよ」
メルはしばし沈黙したが、やがて微笑んだ。
「……条件がある」
「なんだ?金か?高級寿司か?」
「……毎週のエンディングで、私の見せ場を作れ」
クラスティーは一瞬固まったが、やがて声をあげて笑った。
「いいとも!それで視聴率が取れりゃ、局も文句は言えねえ!」
数週間後、『クラスティーショー』は華々しくスタートした。クラスティーの脇には、以前と変わらぬ真面目な顔で、でも少し誇らしげに立つサイドショー・メルがいた。
そして、エンディングでは毎回なぜか詩を朗読するメルの姿が。子どもたちには意味がわからなかったが、妙に人気が出て、SNSでは「#メル詩人」がトレンド入り。
スプリングフィールドのTVには、またひとつ名コンビが戻ってきた。