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「あ、そう言えば詩歌ちゃんって替えの下着とか洋服持って来たの?」

「その、下着は一応1セットだけ持って来ました。けど、服は今着ているものしか……」

「そっか。まあ今日は寝るだけだし俺の服貸すよ。着てる服は今から洗えば乾くだろうからひとまず大丈夫そうだね」

「はい、よろしくお願いします」

「それじゃあ先にシャワー浴びて来て? あ、洗う物はこの袋に入れてね。シャワー浴びてる間に洗濯を頼んでおくからさ」

「え? あの、洗濯はご自分でなさらないんですか?」

「うん。まあ洗濯機はあるけど使わないかな。頼めば洗ってくれるし、そっちの方が楽じゃない?」

「でも、洗濯くらいなら自分で……」

「俺もちょうど洗いたい物あるし、今から自分でやるのも面倒だから頼んじゃうよ。ね?」

「……はい。それじゃあ、お先にシャワー失礼しますね」

郁斗に言われた通り浴室へ向かい、服を脱いでシャワーを浴び始めた詩歌。

そんな彼女の行動を見計らって先程渡した袋を回収した郁斗はコンシェルジュを呼んで洗濯物を託してリビングへと戻って行った。

シャワーを浴びている詩歌はふと、ある事を思う。

(そういえば、ここってリビングの他に後いくつ部屋があるんだろう? 使っていない部屋、あるのかな)

リビングから見渡した限り、いくつか部屋へ繋がるドアはあったのだけど、そのうちの一つは郁斗の寝室だろう。残りの部屋の中で、自身が使える部屋があるのか詩歌は気になった。

(それに、私はどこで寝ればいいんだろう? やっぱり、ソファーの上かな?)

とまあ、そんな感じで寝床の事ばかりを気にしている彼女なのだが、この後、もっと重大な問題がある事に気付く。

シャワーを終えて郁斗が用意してくれた彼の大きめなTシャツを着てみた詩歌は、自身の姿を見て衝撃を受ける。

(な、何か……ブカブカだし、ちょっと脚が目立っちゃうかな……)

彼のズボンは流石に大きくて穿けないのでTシャツがワンピースのような役割になっているのだけど、それにしても少し裾の部分が短く、若干太腿が見えてしまう。

それに、

(……そういえば私、男の人と御付き合いした事もないから異性と二人きりで夜を過ごすなんて初めてなのに……これから一緒に暮らすとか、ハードルが高過ぎるのでは?)

今になってようやく、事の重大さに気が付いたのだ。

一度意識をしてしまうと恥ずかしいのと戸惑いでこれからどうすればいいのか分からなくなる詩歌。

(で、でも……こんな事くらいで狼狽うろたえてちゃ、キャバクラで働くなんて無理だよね。男の人を相手にしなきゃならないんだもん)

明日からキャバクラで働く事を考えると弱音など吐いている場合ではないと思い直した彼女は、

「あの、洋服ありがとうございます」

意を決して浴室から出ると、郁斗が待つリビングへ足を踏み入れたのだった。

優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

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