「どしたの」
目が覚めてしまった、午前二時。
胸が締め付けられて熱い雫が頬を伝う。
「!!」
それに気づいた彼は驚いて身を起こした。
真っ暗な部屋に秒針だけが響いている。
「…」
彼は落ち着きを取り戻し、穏やかな声でなだめ始めた。
「だいじょーぶ。嫌いになんかならへんよ」
嗚咽に滲んだ視界、掛け布団の上に投げ出された自分の両手がつめたく震えている。
ーこわいのだ、彼が消えてしまうことが。
彼の体温が後ろから私を包み込む。
「いるよ、ここに」
幼子をあやすように、ただぎゅっと私の細い体躯を抱き締める。
「どこにもいかへん」
仕事中の彼からは発せられることのないであろう、甘やかな声。
震える肩にその前髪が柔く触れた。
「いかへんよ」
絹のような柔らかさだった。
寝かしつけるようにとん、とんと穏やかに私の腕を撫でる。
「すいとーよ、ずっと」
ああ、永遠なんてないのに。
「すき…」
そんなこと言って、
「すきやってん…」
底無しの私をまた満たすんだね
彼は私の唇を奪い、優しくねじ伏せる。
永遠なんてないけど
いまはあなたの腕の中にいよう
それを我々は幸福と呼ぶのだろうー
彼は深く味わうように、それでいて優しく慰めるように角度を変える。
「す、き…」
終わりばかり見てしまう
それでも離れたくないよ
「…」
唇と唇がそっと離れる。
拭わなかった。
二人の呼吸だけが響く。
少し開いた窓から吹き込む風が深夜の静けさと織り混ざって白い肩に触れた。
「ここにいるよ」
彼は私を、黒い瞳で真っ直ぐに見つめていた。
〈終〉







