テラーノベル
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よる。
そいつは、ただ不思議なやつだった。いつもぼんやりとした、とろんとした目で俺を見つめてくる。
クラスのやつらも、俺の友達も、みんなよるを気味悪がっていた。
……何を見ている?
誰を見ている?
その瞳に映っているのが自分だと思うと、胸の奥がざわつく。
まるで、俺の中の何かを見透かされているみたいで。
あいつは、俺が移動すると決まって後ろからちょこちょことついてくる。
一定の距離を保ったまま、黙って。
……いったい、何がしたいんだ。
耐えきれなくなって、俺は声をかけた。
「……お前、何がしたいんだ」
「……」
「おい」
「……」
返事はない。
無表情のまま、相変わらず何を考えているのか分からない目で俺を見ている。
ふざけているのか。
何も答えないそいつに、思わず舌打ちしそうになる。
「次の授業、移動だからな。……遅刻するなよ」
「……」
分かっているのか、いないのか。
よるは小さく、ほんのわずかに頷いた。
「はぁ……」
なんなんだあいつは。
せめて何か一言でも話してくれればいいのにーー
「……」
背中に、軽い衝撃。
よるが俺の肩を叩いていた。
「……なんだ」
「案内してください」
小さく、淡々とした声だった。
……なぜ、ここに来たばかりの謎だらけな転校生に、そこまでしてやらなければならないんだ。
俺はきょろきょろと周囲を見渡した。
貴重な休み時間を、こいつに使いたくない。
だが、近くに他に頼れそうなやつもいない。
本当に。
ほんっとうに不快で仕方なかったが、結局、俺は案内してやることにした。
「ここが調理室。その奥が音楽室だ」
「……」
「はぁ……」
一応、もう一度言う。
「いいか。ここが調理室で、その奥が音楽室。調理室は料理をするところで、音楽室はーー」
途中で言葉を切り、よるを見る。
「……なぁ、聞いてるのか?」
返事はない。
いくら説明しても、うんともすんとも言わない。
……もういい。
これ以上付き合ってたら、休み時間が削られるだけだ。
「一通り説明はした。分からないことがあったら、他のやつに聞け」
そう言い残し、教室へ戻ろうとした、そのとき。
「……は?」
袖に、弱い力がかかる。
よるが、俺の服を引っ張っていた。
「次の授業は、なんの教科ですか?」
「ーーっ、自分で調べろ!!」
声が、思ったよりも強く出た。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「あいつ、最近調子乗ってるよな。」
「思った。どうせ転校生の友達って立場になってチヤホヤされたい、とかくだらないこと考えてんだろ。」
「……」
たまたま廊下を通ろうとした時、”同じ部活だったクラスメイト”に陰口を言われているのに気づいた。
ああ、これだからあいつには近づきたくなかったのに……!
俺は苛立ちが抑えきれなく、貧乏ゆすりをした。
何秒か経った頃、後ろから何かの気配がした。
気の所為か、と思うが、一応振り向いてみる。
「……」
「ひぃっ!」
そこには、よるがいた。
まさか後ろにいるとは思わず吃驚した。
俺が考え事をしてるうちに、いつの間にか背後にいたらしい。
「大丈夫ですか」
尻もちをついた俺に手を差し伸べようとする。びっくりさせたのはおまえだろうが……!!とは思ったが、おまえ、手を差し伸べるなんてことが出来たのかという気持ちもあった。
「やめてくれ、もう俺に関わるな。」
「……どうしてですか」
「そもそも、なぜ俺に関わろうとしてくる?構ってもらいたいなら、他のやつに構ってもらえ。俺は忙しい。それだけだ。」
少し酷い言葉を使った。
けれど、どれもこれもよるが俺に関わらないようにするためだ。
これ以上俺と一緒にいると、よるのことも……。
それだけは避けたかった。
……いや、これ以上加害者を増やしたくなかった。
「……」
まただんまりになったよるに、これでいい。となるべく早足で離れた。
よるは、追いかけようとしてこなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
朝、いつも通り登校し教室へ入る。するとーー
「あ、ゆう。はよー」
部活が同じだったクラスメイトに自分の名前を呼ばれる。その言葉に、また何か隠したんだろうな、と思った。こいつが朝に声をかけてくるのは珍しい。
「……」
俺は無視を決め込み、自分の椅子へ座る。
「つれねえなぁー、俺は仲良くしたいだけなのに。」
その言葉に、ぴくっとからだが動いた。仲良く?……よくそんなことがいえたもんだな。俺の彼女を奪って、学校に悪い噂ながして、物隠して。もうこりごりだ。何が楽しい?何故そんなことをする?
ーーそのままずっと考え事をしていると、あっという間に3限目だった。次の授業は古文らしく、必要なものが黒板に書いていた。授業まであと2分だったので、学生カバンの中身を出し、教科書を探した。
……ない。いや、ないはずがない。昨日準備したはずだし、なんなら今日も確認した。カバンを見つめながら呆然としていると、後ろから笑い声が聞こえた。
ああ、そうか。こいつか。……俺は泣きそうになるのを堪えながら、なんとか頼れるやつがいないか周囲を探した。目にとまったのは、よるだった。
「よる、教科書、貸してくれないか」
「……何かあったんですか」
「何もない。ごめん、後で返すから」
「わかりました」
よると同じ授業を受けるというのに、よるはあっさり了承してくれた。何故か分からないけど、涙が込み上げそうになった。……いや、しっかりしろ。テンションがハイになっているだけだ。大丈夫、大丈夫……。
ーーチャイムが鳴った。
授業が終わった後、よるに返した。よるは何も言わなかった。
たかが教科書、たかが教科書だ。こんな出来事だけで、こいつの人間性を測っては行けない。でも少し、ほんの少し、嬉しかった。
……これは優しさではないかもしれない。むしろ、哀れみの視線を向けられているのかもしれない。けれど、
悪い奴ではない、のかもしれない……?
#独り言
QuartoMew
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#いじめ
コメント
1件
あーーさん、第1話読みました!😭💕 「よる」くん、めっちゃ気になる…!無表情で無口だけど、主人公のことずっと見てる感じがもうミステリアスすぎる…。最初は鬱陶しがってた主人公が、最後に教科書貸してもらってちょっと心開きかける流れ、めちゃくちゃエモかったです…!「悪い奴ではないのかもしれない」って結論に至るまでが丁寧でグッときた。 陰口とか物隠しのクラスメイト、ムカつくけど現実味あって腹立った〜!!続きが気になりすぎるので、よるくんの正体?みたいなものも含めて早く読みたいです🌸✨