テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
23
210
#dzr社
ぶれん
2,461
#🦍🍆🍌⛄️🐷
停電してからものの数分でブレーカーは復活し明るくなったが、俺の体は動かぬままだ。
そのとき、コンコン、と扉を叩く音が聞こえた。
「ぼんさん?いるッスか?」
「…MEN…。いるよ、俺はここに。」
「…入っていいッスか?」
許可を出すまもなくMENは俺の部屋に入ってきて、静かに扉を閉めた。
「ブレーカーが落ちたから、一旦ゲームは中断ってことになったんです。俺、ちょっとぼんさんが心配で。自分のせいで、とか言って落ち込んでないかなーって。あ、余計なお世話だったら申し訳ないッスけど。」
その通りだ。その通りすぎる。
うずくまった俺をあえてそっとしておいてくれているのか、ただ俺の様子に気づいていないだけなのか分からないけど、MENの言葉は淡々としていた。
けれど、今の俺は、人の温かさを欲していた。
「MEN、こっち…きて?俺の手、握ってくれない?」
なんというお願いをしてんだこのおっさんは、と自分でも思った。でもMENが来てくれたことがただ嬉しくて嬉しくて、俺の心は「これ以上」を求めてしまっていた。
「なんスかぼんさん。今日は随分甘えん坊なんスね。 」
そう俺のことをせせ笑うようにしながらも、俺の手を優しく包み込むように握ってくれる。
そしてそっと、隣に座ってくれた。
「MEN…あったかい…落ち着く…。」
心の内をそのまま声に出して、MENに少しもたれかかる。
いいだろう、今くらいは。最年長が後輩に甘えても。
MENの心音が聞こえ、俺の心は落ち着いていく。
「ぼんさん…」
MENがふと、何が意を決したようにつぶやく。そして、
「誰も、ぼんさんのこと迷惑だ、とか、思ってないッスからね?あんまり、今日のことや、ほかの動画でのこと、繊細になりすぎないでください。ドズル社の中で安心してボケたりツッコんだりするぼんさんを、俺らも視聴者さんたちも求めてます。傷ついたり、悩んでわからなくなったりしたら、今みたいにしてていいですから。何時間でも、何日でも。俺は、俺たちは、ぼんさんの傍にずっといるッス。」
と語る。その言葉一つ一つが優しくて、頼もしくて。かっこよかった。
「ありがと、MEN…。」
俺は耐えきれず、MENの胸の中に顔を埋めた。
MENは俺の体を優しくさすってくれている。MENの胸の中で俺は考えていた。
幸せだろう、こんな人が近くにいて、いつも支えてくれたなら。
頼もしくて面白くて優しくて、かっこいい人が自分のことを何よりも大切に思ってくれたなら。
自分がいつでも甘えられる存在が…あったなら。
MENの胸から顔を外し、そしてMENの目を見る。
「ありがとう、MEN。」
心の底からの感謝だ。でも、同時に、もう二度とこんな甘えはしないと宣言するように堂々と。甘えられる存在が近くにいてくれたら幸せだろう。けれど、それは叶わない。叶えられないんだ。
これ以上、MENの近くにいるとMENに迷惑がかかるくらい、俺の心はMENを欲してしまっている。
最年長として迷惑はかけられない。
MENは俺の感謝に少し驚いたような素振りを見せた。でも、
「はい、ぼんさん。いつでも、俺らに甘えてきてください。いつでも受け止めます。」と微笑む。
今の俺にその言葉と表情は何より辛く、先程の決心が揺らぐ。
…こんなことで揺らいでちゃダメだ。
そう自分に言い聞かせ、心を奮い立たせる。
「…あぁ!」
と精一杯の明るい声で返事をし、MENにそろそろ動画の時間じゃないか、と伝える。
MENは少し寂しそうな表情をしたが、渋々俺の部屋のドアノブに手をかける。
「本当にありがとう。MEN。」
「…もう3回目ッスよ?それ。」
扉を見たままMENは返事をし、部屋をあとにしていく。
俺は意を決し、再びVRゴーグルとマイクとヘッドフォンをつけた。
甘えなんて…しちゃいけないから。
コメント
1件
うわあ、この回…めちゃくちゃ沁みました。停電の暗闇が二人だけの特別な空間を作っていて、MENさんの「傍にずっといる」という台詞に胸が熱くなりました。でも、主人公が「もう甘えない」と心に誓うラストが本当に切ない…。温かさと痛みが同時に来る、印象的なエピソードでした。