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あれから数日経って、まりあとの距離は少しずつ縮まってきた。とはいえ、まだ完全に心を開けているわけじゃない。けど、最近になってやっと、あの時のすれ違いが無駄だったことに気づき始めた。俺が嫉妬していたのも、結局はまりあのことを気にしているからだってわかっていた。
そんなある日、放課後の帰り道。いつも通り、まりあとの距離を保ちながら歩いていたけれど、今日はなんだかいつも以上に静かだ。
「李斗、今日なんかぼーっとしてるね。」
まりあがふと声をかけてきた。俺は軽く眉をひそめてから答えた。
「うるせぇよ。別に、そんなことないだろ。」
でも、実際には何も考えたくないくらい、心の中がモヤモヤしていた。あのすれ違いのせいで、どうしてもまりあが気になって仕方がない。あの日のことを思い出すたび、なんだか胸がぎゅっと締めつけられるような気がして。
「ほんとに?」まりあがじっと俺を見つめる。
「ほんと。」
「ふーん…」まりあは少し考え込むような顔をして、やがてぽつりと言った。
「李斗、私のこと、少しは気にしてくれてるんだよね?」
その言葉に、俺は一瞬、息を呑んだ。
「……当たり前だろ。」
自分でもびっくりするくらい、すぐに答えてしまった。まりあは少し驚いたように目を見開く。
「ほんとに?」
「あぁ。」
「だって、李斗って、普段あんまりそういうこと言わないもん。」
「それは、俺が別にお前に興味ないからだろ。」
「え?」
「なんてな。」
俺は笑って誤魔化す。でも、内心はちょっと焦っていた。だって、本当に興味がないなら、わざわざ気にしないでしょ?
その後も会話は続いて、何となく帰り道は静かな雰囲気になってしまった。
***
そして、次の日の放課後。俺はまたまりあと一緒に帰っていた。
今日は珍しく、まりあが「ちょっと寄り道したい」と言い出した。いつもなら、すぐに帰ろうとするタイプなのに。
「何か用か?」
「うん、ちょっとだけ…お参りに行きたいなって。」
「お参り?」
「うん、私、実はおばあちゃんと一緒によくお参りに行くの。でも、最近は全然行けてなくて。」
俺は少しだけ考えてから、軽く頷いた。
「わかった。」
まりあの手を引いて、少し遠回りしながらお寺に向かう。たまにはこういう静かな時間も悪くないな、なんて思いながら歩いていると、まりあが不意に立ち止まった。
「…李斗、こっち。」
何かが変わったわけじゃない。でも、何かが変わっているのは確かだった。まりあが見上げたその先には、大きな木が広がっていた。
「ここ、好きなんだ。」まりあが静かに言う。
「……ふーん。」
俺は適当に返事をして、そのまままりあの横に立った。けれど、まりあが少し顔を赤くして、じっと俺を見つめてきた。
「李斗、今日はありがとう。なんか、ちょっとだけ…特別な日みたい。」
その言葉に、俺は思わず心臓が跳ね上がる。
「別に、普通だろ。」
けど、心の中では何かが動いていた。まりあが少し照れたように笑って、俺の肩に軽く触れた瞬間──
「ありがとう、李斗。」
その一言で、俺の胸はさらに高鳴る。突然、まりあが自分から手を伸ばしてきた。そして、何の前触れもなく──
ぎゅっ。
まりあが、俺をハグしてきた。
「……まりあ?」
「だって、李斗が…」
「お前、なんで急に…」
まりあは黙ってしばらく俺の胸に顔を埋めていた。その姿が可愛くて、心臓がドキドキしっぱなしだ。
「……何か、言いたいことあんのか?」
「うーん…でも、どうしても言えないかな。」
まりあは、恥ずかしそうに顔を赤くして微笑んだ。
「なんだ、それ…」
「だって、私はやっぱり…李斗のこと、すごく気になる。」
その言葉に、俺は胸がキュンとして、どうしようもなく動けなくなった。
「……俺も。」
その一言が、まりあに届いたのか、彼女は嬉しそうに顔を上げた。
「ほんとに?」
「ほんとだよ。」
その瞬間、俺の胸の中で何かが弾けた。恋って、こんなにも心を揺さぶるものだったのか。
まりあとの距離が、少しだけ縮まった気がした──いや、もっと近づいていたことを、俺はようやく感じ取ることができた。
次回、ついに二人の関係は新たなステージに進んでいく──?