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名前伏せ無し
同棲中のジェルとさとみ。家では甘い言葉にハグにキス
とろけるように優しいジェルが、さとみだけのものだった。
けれど。
今日は収録日。
スタジオに集まった“すとぷり”メンバーの前では、ジェルの態度がまるで違う。
「おはよ〜。莉犬、今日なんか髪セットいつもとちゃうやん?かわええやん!」
「えっ、やっぱ気づいた?ありがと〜!」
ジェルはにこにこと莉犬と喋っている。
その隣で、さとみは黙ってスマホをいじっていた。
(……あぁ、またかよ)
普段はあんなに「好き」「今日も可愛い」「ぎゅーさせて」とか言ってくるくせに、
メンバーがいると急に“ビジネス同僚モード”。
ころんが無邪気にジェルにじゃれついても、
なーくんが肩をぽんっと叩いても、
るぅとが話しかけても、ジェルは自然に笑って応じる。
けど、さとみにだけは一切、目を合わせてこない。
「さとみくんって今日テンション低くない?眠いの?」と莉犬が笑って聞いたとき、
ジェルはただ「放っとけや、いつものことやろ」と笑ってみせた。
それが、地味に刺さる。
収録が終わり、ふたりきりになった帰り道。
さとみは前を歩くジェルの背中に、小さく呟いた。
「……俺って、メンバー以下?」
ジェルの足がぴたりと止まる。
「……は?」
「外じゃ、俺にだけそっけないじゃん。莉犬とかころんには普通に褒めるのに、俺のことなんか目も合わせないよな」
ジェルは一歩近づいてくる。
けれど、さとみはそっぽを向いたままだ。
「……嫉妬してくれんの、かわい」
「ふざけんな。マジで不安になるんだよ」
その言葉に、ジェルはさとみの手を強く握った。
家の鍵を開ける前、その場でキスするみたいに距離を詰めて。
「なぁ……外で触ったら、欲抑えきかんようなるやん。バレたら、ぜったい離される。それがいやなんや」
「……」
「俺がさとちゃん避けるの、好きすぎるからやで。嫉妬とかいちばん可愛いって。もっとして?」
「……うぜぇ……」
「でも帰ったら、いつも通り甘えてくれんねやろ?」
「……知らねぇよ……」と小さく呟いて、
それでも指先だけは、ぎゅっとジェルの手を握り返していた。
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