テラーノベル
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霧深い長野の山奥。高そびえ立つ「百合の会」の聖地は、大理石で造られた不気味なほど美しい神殿だった。
「気をつけて、太陽くん。ここから先は電波だけでなく、あらゆる外部との接触が遮断されている」
乃木憂助が静かに告げ、ブリーフケースから取り出した銃のボルトを引く。
「……ああ、胸糞悪い匂いだ。タンポポの温床そのものだな」
トレンチコートの野崎守も、散弾銃を構えて周囲を警戒する。
4人が大聖堂の床を踏み締めた、その瞬間だった。
ガガガガガッ!!と重い駆動音が響き、太陽の足元の床が突如として反転。太陽は静止する暇もなく、真っ暗な地下へと滑り落とされてしまった。
「太陽くん!!」
乃木が手を伸ばすが、床は瞬時に閉じられ、上層からは大量の武装信者たちの足音が響き始めた。
「チッ、分断されたか! 乃木、ドラム! 上は俺たちで食い止める、太陽を信じて前へ進むぞ!」
野崎の銃声が、大聖堂に鳴り響く。
ドサリ、と冷たいコンクリートの床に着地した朝野太陽。
そこは、無数の培養液の管が壁を這う、広大な地下実験場だった。
「……よく来たね、朝野太陽。いや、本物の『夜桜の婿』と言うべきかな」
部屋の奥から、カタカタと車椅子を回して現れたのは、タンポポの白衣を着た研究員。その横の培養カプセルから、プシューと緑色のガスが噴き出し、一人の少年が静かに歩き出てきた。
太陽は息を呑んだ。
ボロボロの制服、右手の薬指に光る(模造品の)結婚指輪、そして、その顔。
どこからどう見ても、自分自身――朝野太陽の完璧なクローンだった。
「長野駅での戦闘、実に見事だった。おかげで君の『開花(ブルーミング)』のバイオデータはすべて回収させてもらったよ。ソメイニンと君の遺伝子を融合させた、この『植物クローン』は、本物以上の出力を誇る」
クローン太陽の目が、不気味な緑色の光を放ち、冷酷に細められた。
「……オレが本物。お前はここで、枯れるんだよ」
クローンが地を蹴った。その踏み込みは、太陽自身の最高速度と寸分違わない。
ガキィィィン!!
激しい衝撃波が地下室を揺らし、二人の拳が正面から衝突した。
「くっ……! 動きが、完全に俺と同じ……!?」
太陽は驚愕した。
「夜桜式乱打――『百花』!」
太陽が放つ超高速の連撃。しかし、クローンはそれをすべて同じ「夜桜式回避術」で紙一重でかわし、全く同じタイミングで「剛蓮」のカウンターを太陽の腹部に叩き込んできた。
ドゴォォォン!!
太陽の身体が吹き飛び、コンクリートの柱をへし折って叩きつけられる。
「ガハッ……!」と血を吐く太陽。
「無駄だよ。君が夜桜家で学んだ技術も、その肉体の限界も、すべてデータ化されている。さらに、こちらの身体はソメイニンによって痛覚を遮断され、再生能力も桁違いだ」
研究員が邪悪に笑う。クローンの衣服の隙間から、緑色の蔓(つる)が這い出し、その拳をさらに巨大に強化していく。
(強い……。技術もパワーも、全部俺と同じか、それ以上だ……)
傷だらけの身体を起こしながら、太陽は恐怖に囚われそうになった。
その時、脳裏に浮かんだのは、元の世界に残してきた最愛の妻・六美の笑顔、そして、この世界で出会った「帰る場所を失くした自分」を相棒と呼んでくれた乃木や野崎の姿だった。
(データ? 限界? ……そんなものに、俺の『夜桜の誇り』が負けるかよ!)
ドクン。
太陽の心臓が、これまでになく深く、力強く脈打った。
薬指の指輪が、血のように真っ赤な光の波動を放ち、地下室の電気をすべてショートさせる。
太陽の瞳が、通常の開花を超えた、怒りと決意の深紅に染まった。
「お前は俺の姿を真似できても……俺がみんなを守りたいと思う『心』までは、コピーできてないんだよ!!」
極限の精神状態で、太陽の『開花』がさらなる進化を遂げる。
自分自身の鏡像を打ち破るための、本当の限界突破の拳が放たれようとしていた。
ユナ @お嬢様化
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るーぱ
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まーや
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コメント
1件
うわあ、今回もめちゃくちゃ熱かったですね……! 自分のクローンと戦うって、これ以上ないくらい精神に来る展開だと思うんですけど、「心までコピーできてない」って言い切った太陽くん、本当にカッコよかったです。指輪が深紅に光る演出も、物語の積み重ねが感じられてゾクゾクしました。六美さんや仲間たちの存在が彼の原動力になってるのが伝わってきて、設定の整合性と描写の熱量のバランスが絶妙でした。続きが気になりすぎます……!