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-銃に付いているスコープを覗く。
そこに、1人の男と、少し離れたところに五十嵐と蒼が追いかけていた。
と、
瓦礫の山からヒナタが現れて男を追いかけ始める。
『・・・』
そして、その瓦礫に男と女の姿がある。
その2人も遅れて、男の方へ走る。
あの男は知っている。
あの時、五十嵐と蒼の隣にいた。
『今日も来たのか、』
俺はもう一度、バッグを持っている男を見る。
この後、どこに行きそうかはなんとなくわかった。
俺は、建物を降りる。
薄暗く、ゴミが散乱している道を歩く。
と、
遠くから足音が聞こえる。
1人、走って近づいてくる。
姿は見えずともわかる。
俺は、ゴミ箱の裏に身を潜める。
やはりここへ来たか、
もうそろそろか、
俺はゴミ箱の裏から身を出した。
『うわぁ!』
男が驚き、尻餅をつく。
俺は男に近づく。
『そのバッグに何が入ってる、』
俺は銃を男に向けて言った。
男は身体を震わせていた。
『こ、これはっ…』
男はバッグを大事そうに抱えたまま言う。
『どうしてもこれが必要なんだ!大事な娘のために!』
『・・・』
俺は黙って聞いていた。
『娘は病弱で重い病気にかかってて、治すのに大量のお金が必要だったんだ!でもそんなお金はないし、でももう時間がなくて、こうするしかなかったんだ!』
なるほど、
『色々な店から、少しずつ盗ったんだ。少しならいいだろう?どうせ、贅沢なことに使うんだろうから!だからちょっとだけ盗ったんだ!』
だからか、
『なあ?お前は、その店のものだけど贅沢なことに使われるのと、盗んだとしても1人の命を救うために使うの、どっちに使うべきだと思うんだ?なあ!教えろよ‼︎』
正直、迷っていた。
ー『周りのことなんてどうでもいいでしょ、私たちが幸せならそれでいいじゃん。』
『気に入らない奴は全員蹴散らしてしまえ。俺たちの名を汚すなよ、カイト。』ー
嫌いな奴の声が聞こえた。
クソジジィとクソババァの声を聞くだけで反吐が出そうだ。
ー『助けてくれてありがとう、お兄さん!』ー
『・・・』
初めて俺に感謝をしてくれた女の子。
名前も知らない子だ。
でも、俺を変えてくれた英雄の1人。
その女の子の声が聞こえた。
と、
男が逃げようとしていた。
『チッ!』
どうすればいいかなんてわかんねーよ!
ー『では、あなたが経験した中で、本当に正しいと思ったことをしなさい。そうすれば、気づいた時には誰かを助けているはずだ。』ー
まただ、
別の英雄が、
初めて憧れた人の声がした。
ー前を向けー
ー自分を信じろー
『待て、』
俺は自然と、そう言っていた。
『なんだよ!俺が間違ってると言いたいのか!』
『他にも多くの奴らがお前を捕まえようとしている。』
『んなのわかってるよ‼︎』
男が大声をあげた。
だから、
『だから、援護する。』
『は?』
これでいいだろうか。
でも、
これが、俺の答えだ。
正しいと本気で考えて、
本当に正しいと思ったことだから。
『お前なんか信じられねーよ!』
『信じなくていい、俺がそうするだけだ。』
男が走る。
俺も後を追う。
『来るなよ!』
でも、ついていく。
そして、
『見つけた!』
五十嵐が、脇道から出てきた。
『やめろ!』
俺は、五十嵐に言う。
『柳原…どうして……』
なんて言おう、
『大事な命のために、今はやめろ。』
上手く伝えられただろうか。
でも、五十嵐は追いかけるだけで止めようとしなかった。
その後、蒼も合流、
あと…
一匹狼たち、
俺たちは男を追いかけた。-
ー建物の屋根から、バッグを抱えた男とスナイパーライフルを持った男の一部始終を見ていた。
『へぇー、アイツもやるじゃん。』
もう、アタシの出番はないだろう。
男たちに背を向けて歩く。ー
皆と合流した。
バッグを持つ男は、古びた建物に入っていった。
ここか、
五十嵐さんから少し、話を聞いていた。
男が入っていった建物の中へ入る。
と、
『これで、娘を!』
受付で、男は言う。
しかし、
『これは、盗んだものですよね?』
受付で、止められていた。
『お願いします、娘を…』
『それは出来ません。』
と、
周りから、銃を持った男たちが現れる。
『ここへ来ると思っていたぞ、持っているもの全てを捨てて手を上げろ!』
銃を持った男が言う。
男は仕方なく、手を上げた。
『ちょっと待ってくれ!』
五十嵐さんが、言った。
『君たちは…』
『その男は大事な娘の?命を救うために?お金を盗んだ?と聞きました。それが本当なのかどうか、わかりませんか?』
五十嵐さんは受付の方に訊く。
まだ状況は、五十嵐さんにもよくわかっていないようだ。
『はい。こちらの方には娘がいて、治療をするのに、多くのお金が必要でした。』
『なら、』
五十嵐さんは、柳原さんの背中を押した。
柳原さんはウザそうな顔をした後、困った表情を見せた。
『俺が決めることじゃない。でも、命が優先だ。その娘のために、金を使ってくれ。』
柳原さんが言った。
『でも、それは…』
『俺も、その娘に使ったほうがいいと思います。』
五十嵐さんが言った。
『命を優先するべきだと思います。』
蒼さんも言う。
『あなたたちに決められることではありません!』
受付の方は受け入れてくれなかった。
何か、言わないと…
『命を落とせば、もう助けられないんですよ。手遅れになってからじゃ、遅いんですよ。少しでも早い方が助かる可能性も高いはずです。お願いします。』
僕は頭を下げて言う。
『そうです、助けられる時に助けないと!』
本当は悪いことなんだろう。
最悪、本当にもらうべき人に渡ったことで、別の誰かが助かるということがあるかもしれない。
だけど、放っておけない。
命のために、この男はお金を盗んだ。
悪いことだけど、
覚悟のいることた。
だから、少しでも報われて欲しい。
僕が同じ立場なら、
同じことをしていたかもしれないから。
『わかりました。こちらのお金を使って、治療を行います。』
受付の方が許してくれた。
『そのかわり、きっちり働いて返してもらわないとな。』
『あ、ありがとうございます。』
男は、泣きながら頭を下げた。
『罪は認めます。刑務所にでも入ります。でも、どうか娘をお願いします…』
男は泣き崩れた。
この人は悪いことをした。
でも、悪い人ではないんだろう。
『よかったですね。』
『はい。皆さまも、本当にありがとうございました。』
男は土下座をして感謝を伝えた。
『お力になれて良かったです。』
僕は微笑んで言った。
『銅ッチ!サンキューな!』
五十嵐さんが肩に腕を乗せて言う。
『お疲れ様でした。』
僕は笑顔で言った。
『皆さん、お疲れ様でした。』
蒼さんが返した。
『お疲れ様!』
五十嵐さんが元気に言う。
『そういえば、銅ッチってなんですか?』
気になっていた。
多分僕のことだろうけど。
『銅のことだけど、ダメかな?』
『いえ、気になっただけで大丈夫ですよ。』
ちょっとだけ気になるけど…
『それより、その子は誰なんだ?』
五十嵐さんが、琥珀さんを見て言う。
そうか、琥珀さんと会うのは初めてだったな。
『あぁ、この子は琥珀さん。ちょっと怖がりなんです。』
ちょっとどころではないんだろうけど、
『彼女か?』
!
僕は驚く。
『お、その反応は正解だな!一匹狼卒業おめでとう!』
『やめて!』
蒼さんも笑っていた。
『おめでとうございます、銅さん。』
恥ずかしいな。
『琥珀さん、銅さんにくっついていますね。』
蒼さんが言う。
『昔のことが原因みたいで、人が怖いそうです。』
『俺と蒼ッチは大丈夫か?怖がらせないようにはするけどよ、今も怖いんじゃないかな?』
そうかもしれないな。
でも、そうだとは言えないよな。
『もう、そろそろ戻りましょうか。』
『そうだな、じゃあこれで。また会おうな!』
気を使ってくれたんだろうか。
もうしわけないな。
それにあまり話せていなかった。
…