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酒に溺れた。
悪い気はしなかった。気が楽になる。
煙草に溺れた。
あの少し煙る香りが、ドンドン癖になる。
女に溺れた。
毎日別の女と交わった。満たされなかった。
沢山の欲に溺れた。
叶わないことは無理してでも叶えた。
数年前、大切な人が姿を消した。
すぐに帰ってくる、そう思った。
アイツは気が強くて、俺には持っていないものを持っているから、平気だ。
そう思った。
そう思ってしまった。
翌日、テレビをつけた。
アイツはまだ帰ってきていない。
「用事が長引いているのか?」
そう思った。
アイツのことはなるべく考えないようにした。
考えたくなかった。
1年が経っても、3年経っても、いつまで経っても、アイツは、帰ってこなかった。
見つけに行く勇気はなかった。
俺は、どこにでも行けるヒーローでも勇者でもなんでもない。
体力の限界も、脳の限界も、寿命の限界もある。
アイツが戻ってこない間、色んなものに溺れて溺れて溺れて。だけどアイツは帰ってこなかった。
何かに溺れても浮かび上がるアイツは、今の俺にとっては邪魔でしかなかった。
俺は勇気がない。勇気を持てない。
薄々気づいていた。アイツはもう一生帰らないんじゃないかって。だから、更に色んなものに溺れていった。
ギャンブルにもハマったし、命をかけた遊びもハマった。だけど、それでも頭に思い浮かぶのは、憤怒した顔で怒ってくるアイツの顔。
金で何かを買っても、プレゼントする人はいなかった。女に溺れてまで言うことではないが、アイツが好きだったから。
そう思いながら、海に行った。
アイツとよく来たところだ。
ペンダントを片手に、海に潜る。
もちろん、何時間も
俺は、死ぬつもりだった。
人魚姫のように、泡になって消える。というよりは、息ができなくて、暴れて暴れて、最後には力尽きる。というほうが、俺らしかった。
やがて、視界が暗くなっていった。
ペンダントは、上に上がっていく。
どうせなら深くまで沈みたいな。と呑気なことを考えながら、俺は