テラーノベル
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夜風がアルコールで熱った体を優しく、だが冷酷に冷やしていく。何故、あんなことを口走ってしまったのだろう。あそこで止められていれば良かったのに。もうまともに思考を持てない。せっかくならばあそこで振ってもらえれば良かった。良かったのに。涙が一筋頬を伝って顎に止まり、やがて地面にシミを作る。もう一度やり直したいなんて言えない。そして時間は心に構わず無機質に進み続けていく。
数時間前、jackとフサキンはバーで飲んでいた。良い感じに酔いが回ってきた頃、jackは震える手をフサキンの前に差し出した。そして静かに、だが有無を言わさぬ声で言い放った
「フサキン。どうだろうか…そのパートナーとして我とやっていけないだろうか…」
数秒の沈黙。そしてフサキンはあっけらかんとした様子で言い放った。
「うん?もう俺達は仲間でしょ?え?」
そうだ。当然の事だった。元々、コイツとは仲間だった。戦闘もして、一緒に飯食って、馬鹿して。こっちがどれだけ呆れさせてもコイツはずっと真面目に叱ってくれてた。それなのに、何を今更。悲しさよりもそんな事に早く気づけなかった喪失感の方が大きかった。
「うん…だからその、お返事は考えとくよ。って言っても変か。ははっ」
いつもの笑い方じゃない。乾き切った笑い。わざわざこんな戯言に付き合ってくれたのに、どうしても馬鹿馬鹿しくて。1秒でも長くいたいという希望は砕けちり、代わりに早く離れたい。距離を置きたいという拒絶に変わっていた静かに手を戻し、席を立つ。
「おう。サンキュー。ちょっと先に出るわ。あ、これ我の飲んだ分の金」
そう言って、千円札を2枚フサキンの前に差し出す。そして背を向けて店を出て行った。本当に自分勝手で情けない。いつもは心地良いと感じていた夜風も冷たい視線を向けている気がした。
家に帰ると、込み上げてきた涙で枕を濡らしそのまま寝てしまった。夢というのは現実に酷く無干渉で、それでいて、欲望に忠実な物だった
─夢の中─
「おーい!jack!!こっち!!こっち!!」
「フサキン……?どうしてここに…?」
「どうしてもこうしても俺らは恋人でしょ?そんで今日は結婚式。今まで楽しかった、そしてこれからも楽しませてくれよ!」
「……!うん!!」
──────────────
二人の唇が重なり合ったタイミングで目が覚めた。そしてスマホを見ると通知が一つ
『やっぱり俺達は友達が一番良い関係だと思うよ!これからもよろしくな!』
いつも通りの活発な言葉。それがぽっかりと空いた心を埋めてくれる訳でもなく、どうしようもなく悲しい、だがそれ以上に失った感覚で空を飛べそうだった。震える指でブロックの文字をタップして、洗面台へ行く。涙の跡が残った頬。涙でまつ毛が束になっていた。唇を噛み締め、口を開きそしてカッターを喉に突きつけ一言
「あー早く夢から覚めたい」
めたんがす
茹で枕
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