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ふわりと暖かい風が頬を撫でる。凍えるような寒さも気付けばなくなり、もうすぐ桜が満開になる頃だろう。この時期になると思い出す相手がいる。俺の初恋の人だ。まだ幼かった俺に人懐こい笑顔で話しかけてきたそいつは3歳年の離れた近所のお兄さんだった。そいつが高校を卒業し上京してからは一度も連絡を取っていない。俺も高校を卒業後上京してもう8年が経っているためもう10年以上離れたそいつのことを想い続けているらしい。「アマル元気かな」
ボソリとつぶやき風に揺れる桜を眺めていると視界の端に桜に似た綺麗なピンクの髪が靡くのが写った。あ、まる…?俺の記憶の中のアマルは髪色の可愛らしさに似合わないツーブロだが、目の前にいるこの人は綺麗に伸ばされた髪をハーフアップに結んでいる。髪型はだいぶ違うが俺が見間違えるはずがない。既に通り過ぎてしまったそのピンクの髪を追いながら俺は普段出さないような大声で愛しいその名前を叫んだ。
「アマル!」
俺の声に反応したのか足を止めゆっくりと振り返ったその人は俺の姿をみると目を見開いた。そして優しく微笑むと同時にその目は次第に潤っていく。
「ぷりっつ…」
久々に見たアマルの輪郭がぼやけていく。ああ、俺も泣いているんだ。
「なに泣いてんねん!」
「お前もな!」
10年前と変わらないやりとり、それだけで胸がいっぱいになった。
近くの喫茶店に入り離れていた時間を埋めるかのように会話を楽しんでいると、古びた時計がポーンと5時を合図した。もうすっかり薄暗くなってしまった外をぼんやりと眺めていたアマルはその音を境に帰る支度を始めてしまった。
「帰りたくないな…。っ!いや、そうやなくて!お前とまだ居たいとかやないから!」
意図せず口から溢れてしまった言葉に俺は慌てて否定をするが、否定すればするほど先程の言葉が本心であったことが伝わってしまう。きょとんと惚けた顔をしていたアマルが急にふと笑い、家来るか?なんて誘うもんだから乗るしかない。
「しゃーないな、そんなに来て欲しいんなら行ってやるよ!」
誤魔化すように巫山戯たけどきっと今俺の顔は緩んでしまっているのだろう。
学生時代と変わらない殺風景な部屋。促されるままソファに座るとアマルの匂いに満たされた。ずっと想い続けていた相手が目の前にいる。その事実だけでたまらなく幸せだ。
「そんなに俺に会えて嬉しいか?」
くすと笑いながらコーヒーを淹れてきてくれたアマルが隣に座った。なぜバレている?
「無意識?ずーっとニヤけながら俺の方見てるよ」
俺の馬鹿野郎恥ずすぎるやろ!渡されたコーヒーをテーブルに置けば傍にあったクッションで顔を隠した。
「うるさい、嬉しいに決まってるやろ」
不意に頭に暖かい手が乗せられた。こうして撫でられるのは何年ぶりだろう。やっぱり何年経っても変わらない、俺はコイツが好きだ。
「俺さ、お前のこと好きだったんだよな」
不意にアマルが漏らした気持ちに動揺が隠せない。
「は?えっ!?」
なんて間抜けな声が出てしまった。いや、待てよ。好きだった、過去形だ。今は好きやないからこんなことを言ったのだろう。
「俺も好きやったよ」
嘘だ、今も好き。今も好きなんよ…クッションで顔を隠したまま溢れ出そうになる涙を堪える。
「それなら告白したらよかったな…なあ、今でもまだ間に合う?」
顔を隠していたクッションが取り上げられ今にも泣き出しそうな顔が晒された。
「ぷりっつ、お前のことが好きです。」
ああ、ずっと聞きたかった言葉。堪えていた涙が頬を伝う。
「俺も、好きやでアマル」
俺が言い終わるかどうかのタイミングで抱き締められた。俺は今世界一幸せやと思う。
「俺と、付き合ってください」
「よろこんで!」