テラーノベル
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ないこが隣にいるだけで、あれほど止まらなかった涙が、少しずつ落ち着いてきた。
けれど、感情があふれたあとの心は、まだボロボロのままだった。
「……りうらって、がんばってないように見える?」
ぽつりと呟いたその声は、とても小さくて、でも確かに届いた。
ないこは少し目を丸くしてから、真剣な顔で答えた。
「え? なに言うてんの笑 むしろ、頑張りすぎ」
「……でも、あんまり言われないから。えらいねって、ちゃんと見てるよって……誰にも言われないと、りうら、頑張ってる意味あるのかなって思っちゃうんだ」
「……っ」
ないこはしばらく黙ってから、ぽん、と自分のスマホを取り出した。
そこには、りうらの配信の切り抜きや、ファンのコメントがびっしりと並んでた。
「これ、見たことある?」
「……なに、それ」
「みんな、りうらのことちゃんと見てるよ。『今日もやり過ぎなくらいがんばってました』『この子ほんまに努力家』『りうらくんの歌に救われました』──こんなのばっかや。りうらが知らんだけでみんなりうらのことを見てる」
「……ほんとに?」
「ほんと」
ないこの声が、少し震えていた。
「……りうらはな、誰よりもちゃんとやってる。誰よりも気ぃ使って、頑張って、弱音も吐かない。……だからな、たまには、信じろ。俺らのことも、リスナーのことも、ほんまに見とるって」
その言葉に、りうらの目にまた涙が溜まっていく。
「……ありがと、ないくん……」
「泣くなよ〜笑」
「……泣くけど」
「うそうそ笑 今日ぐらいいっぱい泣き。全部受け止めるから」
2人で静かに笑って、しばらくの間、何も話さずに隣に座っていた。
心の痛みは、すぐには消えない。
けど──誰かと分け合うことで、少しだけ、楽になる。
そしてきっと、明日もりうらはがんばる。
今度は、“ひとりじゃない”ってことを、信じながら。
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