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「町田さんのご自宅であってますか〜?」
ある日突然、知らない男が尋ねてきた。
最初は地区の偉い人とかで
集金にでもきたのかと思った。
けれど、インターホン越しに見た彼らは
偉い人にしては若く見えた。
そして1人ではなく
2人の若い男であったため
地区の人ではないだろうと確信した。
なにせ、この地区は若者がいない。
「はい、町田です」
出ないわけにもいかないと思って
ドアを開け、顔を合わせる。
2人とも毛穴ひとつ見つからない綺麗な肌に
切れ長な目を持っていた。
片方は短髪、ちらっと見えた耳にはたくさんのピアス。チャラそうな話し方をし、雰囲気もチャラチャラしていた。
もう一方は長髪で長身。無口な感じで、とても怖い雰囲気だった。
顔を合わせていられなくなって
すぐに目を逸らしてしまった。
「町田結衣さんですか〜?」
「はい」
「ならよかったです〜」
と、ドアが閉まった。
嫌な感じだなあとは思ったが
そこまで深くは考えていなかった。
「結衣さん、矢野晴人って知ってますよね〜?」
矢野晴人。私の元彼である。
つい数日前に別れたばかり。
「はい。なぜ?」
晴人とはもう繋がりはない。
そして晴人と私が付き合っていたことを知っているのは
唯一の友達である、塩田桜のみ。
塩田桜とは小学校からの友達で
大学生になった今でも
月一であうくらいには仲が良い。
「いやあ、矢野晴人が借金を背負ってたらしくてね?その保証人があなたになってるの」
「はあ」
「借金は5000万。すぐに返せる?」
「いや、無理です。晴人に言ってもらってもいいですか」
「矢野晴人さあ、行方がわかんなくなってるんだよね。家にもいないし。」
「えぇ?」
「だから、結衣さんに返してもらわなきゃいけないんだよねえ」
「いや、でも、保証人になった覚えはないので」
たしか、勝手に保証人にされた場合は
返済の義務はなかったはずだ。
「うんうん。けどね、このサイン、男の筆跡じゃあないんだよね。酔っ払ったときとかに唆されて書いちゃったかなあ?」
そういって見せてきた紙には
私の字で、私の名前が書いてあった。
もちろん、書いた覚えはない。
「てことで、結衣さんには5000万返してもらわないといけないんだけど」
そんな大金、あるわけがない。
「返せないなら、返せるようにお手伝い、させてもらいますからねえ」
そういって楽しそうに笑う。
「どうですか?」
「…..返せないです」
その言葉を聞いた途端
話していた短髪の男も
黙って聞いていた長髪の男も
口角をあげた。
「わかりました〜。では、返済のお手伝い、させていただきますからねえ〜」
「なに、すればいいんですか?」
私が想像したのは
男に媚を売ること、体を売ること。
「普通は、金持ちの男への接待です。けど、あまりにも愛想がなさすぎるのでとりあえずはうちで働いてもらいます」
「はあ」
「…不服なら、そういう店にぶち込むが?」
長髪の男が口を開いた。
「いえ、大丈夫です」
「うん。ならうちに向かいましょ〜」
そういって家の近くに止めてあった高級車へ乗り込み
長い長いドライブを経て
都会にある、彼らの屋敷についた。