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【tyhr】
最終話
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ろふまお塾の収録終わり、楽屋で僕はまた彼と二人きりになった。
「もちさん……伝えたいことがあるんです」
椅子に座って、お互いに向き合いながら真剣な眼差しで彼を見る。改まってどうしたのかと、彼は首を傾げた。
二人しかいない静かな空気。握りしめた拳からは緊張の汗が滲み出ていた。
「ずっと言えなかったことがあって────」
「甲斐田くん、話してくれてありがとう」
僕が話し終わってから、開口一番に彼はそう言った。
彼に全て話した。幼い頃見た夢を今も見続けていて、それが恋愛できないほどに影響されていること。
正直、彼を好きになり始めた頃は夢のことを隠しておこうと思っていた。それは彼と付き合えるとは夢にも思っていなかったからで、実際付き合えたとなれば話は変わってくる。
なにより、一生隠して生きていくのは辛い。
初めて僕が好きになった彼なら、受け止めてくれると願っている。初めて僕が好きになった彼なら、受け止めてもらえなくても伝えて後悔はないと思っている。
『カチ……カチ……カチ』
時計の秒針の音は、いつもより大きく感じた。心做しか、遅くも感じる。
「甲斐田くんの気持ち、よく分かった」
ずっと難しい顔をしていた彼は、ようやく見慣れた優しい顔で話し始めた。
未成年に話すことなのかと、話している途中でも迷いがあったし、自分でも夢を思い出して苦しかった。けれど、彼の優しそうな顔を見ればそれも良かったと思えて、気が抜ける。
「もちさん、ごめんなさいこんな話……。でも、隠してるままだと騙してるみたいで苦しいんです……」
こんなの僕の都合だ。
「いや、謝ることじゃないよ。むしろ、打ち明けてくれてありがとう、甲斐田くん」
『あぁ、彼を好きになって良かったな』心からそう思った。
なんで僕は躊躇っていたんだろう。彼を見くびりすぎたのかもしれない。僕が思っている倍以上に、彼は優しかった。
「もちさん、ほんとに、いいんすか……?僕、僕ずっと、誰かにこのことを話したくって……。でも引かれるかもって、もちさんっ、嫌いになるかなあ、て」
視界がボヤけてくる。うわぁ、泣いちゃってるのかな、恥ずかしい。そう思って、少し顔を俯かせた。でもこれが本音なんだ。
目から零れ落ちてくる数滴の涙は、そのまま僕の袴丈に滲んで色を濃くさせる。
「嫌いになんてならないよ。なにより、嬉しいんだ。甲斐田くんが僕を好きになってくれて」
「もちさん……」
「僕の気持ちは変わらないよ。甲斐田くん」
ずっと聞きたかった言葉。聞けない言葉だと思っていたから億劫になっていた。それが彼の口から聞けたのだ。涙を流しながら、僕は安堵で微笑んだ。
「甲斐田くんは泣き虫だなあ 」
彼が椅子から立ち上がり、こちらの席まで寄ってくる。すると、僕の目の前で立ち止まり、ゆっくりとしゃがんで同じ目線になった。同じ目線の彼を見るのは少し新鮮だ。
「もちさっ……」
突然どうしたのか、僕がそう聞くまでもなかった。
「甲斐田くん、好きだよ」
唇を重ねるだけ。『好き』、それだけ。それ以外の含みなど無い。優しいキスだった。
「僕も好きです……!」
「ふふ、ありがとう」
彼は笑みを零すと、僕の顔に手を伸ばし、涙を拭んだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ぅあッあっ、ん……うぅ」
軋むベットで、僕は抱かれている。現実で、抱かれている。好きな人に、彼に、抱かれている。
「甲斐田くんっ、痛くない……?」
「大丈夫、ですっ……ぅあ」
あぁ、こんなに幸せな気持ちで抱かれることなど生涯ないと思っていたから、胸がいっぱいだ。彼に触って欲しい。彼で満たされたい。もっと。もっと……。
けど、少し予想外でもあった。それは数分前に遡る。
ベットに来たはいいものの、いざ始めようとなると二人の間に色々な疑問が浮かんだ。
どっちが抱くの?抱かれるの? 経験はあるの?準備無しで入るの?
そこで僕は、年上のプライドを保つためにも彼を押し倒した。しかし、上手くいくわけもなく。現に彼は僕より長く生きているし、先輩でもあるわけだから……。まんまと押し返されて形勢逆転してしまう。
「甲斐田くん、もしかして僕を抱こうとか考えてる?無理だよ」
あっさりと拒否されてしまった。
「ま、まぁ年下であるもちさんに無理させるくらいなら、僕は抱かれますよ」
「はあ、そういうことじゃないんだけど」
なにやら見当違いだったようで、彼は少し呆れながらも、だけどやっぱり子供のように胸を躍らせているようだった。
「もちさんって童貞?」
「甲斐田くんちょっと黙って」
それは今から分かるよ、と意味深なことを言われたが、あまり深く考えずに着ていた服を脱いだ────
そこからは凄いもので。
まず一つ驚いたのは、すんなり入ったことだ。
「甲斐田くん、自分でいじってる……?」
「うっ……」
恋愛をしたことが無い僕は、言い訳が見つからなかった。恥じらいで顔が熱くなっていく。いじっていることは事実だが、全く痛みが無いのは少し驚いた。
「あの夢見てから、ずっと一人でシてたんだ。可愛いね、甲斐田くんは…。 可愛い…」
「やぁッ……う、んぅ…」
羞恥心が芽生えていく。『可愛い』、その一言で心が軽くなるわけがなかった。恥ずかしすぎて茹でダコになってしまいそうだ。
もう一つ驚いたのは、彼が上手かったこと。なんだ、僕が初めてでは無いのか……。なんて思ったけど、そんなこと言う暇もないほど上手い。
さっきから僕の良いとこばかり見つけては、執拗に攻めてくる。
「ぁあっ……いやっそこ、ッいや…… 」
「そう…?その割には、可愛く喘ぐよね 」
「あん、あぁッ、や……んぅ…」
「ほら、やっぱりね。ここがいいってことも知ってるよ」
「んぁあ……!?やッ、なんでッ、ぁ……」
年上としてのプライドなど、もうどうでもいい。ただ彼と愛し合えるのなら、抱いても抱かれてもどちらでもいいのだ。
それくらい、彼が愛おしくてたまらない。
「もちさんッ、すきぃ……すき、です…… 」
「うん、うん、僕もだよ。甲斐田くん」
彼は僕の頭の後ろへ手を伸ばし、引き寄せた。そのまま深く長いキスをする。あの日唇を重ねるだけだったキスとは比べ物にならないくらいに、絡めて、音を立てて、いやらしかった。
「甲斐田くん……僕はまだ……君に隠してることがある……」
彼がなにか呟いたようだけど、僕の耳には届かなかった。
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ty side
僕は最初ビックリした。
「甲斐田晴って言います。よろしくお願いします!剣持さん!」
彼が僕の同僚になったこと。彼と同じグループのメンバーになったこと。
────彼と、また会えると思っていなかったから。
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あれはいつ頃だっただろうか。
僕はその日、異世界に迷い込んでしまったんだ。夢のような話だと思う。自分でも夢なんじゃないかと疑った。
でもそうでは無いみたいだ。
如何せん”狐”を追いかけていたら道に迷ったみたいで、異世界というのもありえる。見たこともない建造物や生き物をこの目で見たから、間違いないだろう。
「ここっ、どこだ……?」
荒くなった息を整えるために、立ち止まって辺りを見渡してみる。すると木々の奥に、一風変わった建物が見えた。そこに人がいるようだ。僕は人を見つけると、たちまち気が抜けた。道を聞こう。そして帰ろう。
木々を抜け、その人の方へと向かった。
「すみませーん。道を教えてほしいんです、けど……」
そこにポツンと立っていたのは子供だった。
「女の子……じゃなくて男の子か……」
まだ性別も見分けがつかないくらい幼くて、そして綺麗な顔立ちをしている子供だった。
肌は透き通るように白く、そして華奢な体をしている。ホワイトカラーの髪は、なんとも異世界人らしかった。
「あぁ〜……えっと、親はいる?」
「おにぃ、さん……たす、けて……」
「えっ」
想像もしていなかった返事が返ってきて、思わず固まってしまった。
一体この子供に何があったのだろう。そう聞きたいが、答えられるほど状態が良くないようだ。走ってきた僕よりも息が荒く、震えていて、重い空気を放つ男の子は、取り憑かれているように見えた。
「だ、大丈夫?どこか悪い?」
異世界人と話すのは少し勇気がいるが、そんなのは通用しない。子供が苦しがっているのを見放すほど外道ではない。
「と、とりつかれちゃったの!たすけて!おにいさん……!!」
「え、えぇやっぱり!?」
男の子はさっきとは相反して、声を荒らげながら助けを求めた。ここまで言われれば、僕にできることを最大限しなければ。
「どう、したらいいのかな?」
「ぁ、わかんな、い……」
そうか。この子はまだ幼くて、自分でどうこうできる年齢ではない。当然、自分に取り憑いた霊を祓えるわけがない。
「しき、しきじょうれいっ、てやつ……が、さいきん、おおくてっ、それ……」
「色情霊……?」
「おかぁっさん、がいってた…こどもには、とりつかないよって……。でもぜったいいる……。 “魔”じゃないから……たおし、かたわからない……」
『魔』がなんのことかは分からないが、ツギハギで説明してくれたこの子の言葉を、一言一句聞き逃さずに理解した。
……そう、つまり、この子に取り憑いている色情霊を僕が祓わなければいけないんだ。
「ほんとに、いいの……?」
「はやくっ、してっ、たすけて……」
「……うん」
少しどころか、だいぶ気が引けるが、仕方ない。
僕は男の子を連れて、近くにあった小屋へと向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「はぁっ、あ”、やめでッ……」
「ごめん、ごめんっ、もう少しだよ……」
「い”ッ、ぁ……んっ…あ」
身体中から汗が溢れ出る。僕の汗が男の子に滴る。
できる限り優しくしよう。この子の記憶に残らないように。
「た”すけてッ、くるっぁ、しい……」
「ごめんね、助けてあげるよ……。ごめんね……」
「んあ”ッッ……?!」
「あ、れ……?大丈夫……?」
少し強く突いたところがいいところだったのか、そのまま男の子は果てて意識を失ってしまった。
「はぁ……、良かった。祓えたのかな…。おっかない霊だよ、本当に」
聞いたことがあった。『色情霊』は、人に取り憑いて、性衝動を強く刺激する幽霊のことだ。
言葉を選ばないなら、ムラムラさせてくる霊かな…。
僕は周りを片付けて、後処理も済ませた。
この子には申し訳ないけれど、顔を覚えられては困るから、その場を後にした。
というか、早く現世に帰らなければ……。
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『もちさん……。僕、こんな夢、ずっと見続けてるんです。気味悪いですか……?でも、もちさんが好きな気持ちは本当なんです』
『嫌いになんてならないよ。なにより、嬉しいんだ。甲斐田くんが僕を好きになってくれて』
僕は再会した時思ったんだ。あの時のことは黙っていようって。
彼が秘密を打ち明けてくれたのに、不平等かもしれないけどね。
どうしてあの時も高校生の姿だったんだって聞かれそうだから。そんな建前を作って、これからも隠していく。
好きだよ、甲斐田くん。
僕の方が、ずっと前からね。
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end
コメント
3件
これ、甲斐田が見てた夢の相手は剣持さんなんですか??これは、なんでずっと夢を見続けてたんですか??
え、まさかの展開すぎました!!めちゃくちゃ面白かったです👏