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アレクシスが静かに手をかざすと、空間が歪み、影がうごめく。
その中心に現れたのは、血の契約の象徴── 「興魔族ケンドラ」 だった。
「ほう……懐かしい顔じゃのう。」
巨大な漆黒の鎧をまとい、四肢に蠢く魔紋を刻んだ異形の存在。
その瞳は、深淵の闇よりも冷たく、何者をも見下すような気配を放っていた。
異魚天は眉をひそめる。
「まさか……お前は……」
ケンドラはゆっくりと笑った。
「フフフ……お前は知らんじゃろうな。レイスとの戦いが“偶然”ではなかったことを。」
異魚天の背筋が冷たくなった。
「俺たちが出会ったのは、ただの運命ではない……?」
アレクシスが口元にワインを運びながら、楽しげに言う。
「レイスは、最初から仕組まれた駒だったのさ。」
異魚天の刀の柄が、強く握られる。
「……どういうことだ。」
ケンドラが嗤う。
「100年前、わしとアレクシスは契約を結んだのじゃ。『王国を陥没させる』 というな。」
「陥没……?」
異魚天の脳裏に、100年前の戦場の記憶がよぎる。
多くの兵士や民が地獄へと呑み込まれた、あの悪夢。
ケンドラは続けた。
「しかし、邪魔が入った。あの時、レイスがわしを討とうとしたからのう。」
「つまり……レイスは、お前らの計画を阻止しようとしていた?」
「そういうことじゃ。」
異魚天は歯を食いしばる。
「なら、なぜレイスの仲間たちは次々と死んでいったんだ!? なぜあの時、レイスは──」
アレクシスが肩をすくめる。
「簡単なことさ。レイスは“最初から裏切られる運命”にあった。」
異魚天の心臓が大きく跳ねた。
「……お前が仕組んだのか?」
アレクシスは優雅に笑いながら、ワイングラスを揺らした。
「興魔族との契約は、ただの『王国陥没』のためじゃない。
英雄を“孤独”にするためのものでもあったのさ。」
異魚天は、強く刀を握りしめた。
「……許さねえ。」
「何だ、怒ったのか?」
「レイスは……俺の親友だ。弄ぶ貴様を、俺は許さねえ!!」
異魚天の鬼気が爆発する。
だが、アレクシスは冷静だった。
「フフ……なら見せてやろう。『王国陥没の再現』をな。」
ズズズズズ……!!!
地面が震え、周囲の建物が軋む。
闇の中から、かつての王国を呑み込んだ奈落が再び現れようとしていた。
100年前の悲劇が、再び繰り返される──。