m「だったら自分で歌詞を書けよ!!書いたこともないくせに偉そうな口聞くなッ…」
元貴がそう叫んで、部屋を出ていった。
元貴が怒ってしまったのは、あるスタッフの一言からだった。
『こんなありきたりな歌詞で響くんですかね…』
正直俺も結構イラついた。
せっかく元貴が身を削って書いてくれた歌詞に、なんでそんな無神経なことが言えるんだ。
h「…無神経すぎるんだよ…」
r「もう貴方ミセスに要らないよ。早く出てって」
涼ちゃんがスタッフに向かってストレート伝えた。
これ以上、こういう人が居るとミセスが崩れていってしまう。
歌詞が書かれた紙を手に持ち、改めて目を通す。
こんな素敵な歌詞、他の人には書けないよ。
ミセスの音楽も元貴が居なきゃ作れないよ。
涼ちゃんが荷物をまとめている。
俺も自分の荷物をまとめ、元貴のもまとめとく。
どこに居るんだろうな、元貴。
r「あ、いたいた。元貴、帰ろっか」
m「…うん」
h「はい、荷物持ってきたよ」
m「ありがとう」
元貴の目元が赤くなっている。
そう言う元貴の姿はどうも見ていて苦しい。
どう言葉をかければ元貴は傷つかないんだろう。
h「なんでそんなに頑張るの、」
元貴の動いていた腕が止まる。
しまった、間違えてしまった。
何、口走っているんだ自分。
m「だって…待っていてくれている人がいるから。」
でも、元貴は答えてくれた。
いつもコメントで「頑張りすぎないで」って言われるといつも怪訝な顔をするのに。
これが幼馴染の特権なのか、そう思った。
r「元貴、僕あの曲弾きたい」
m「…あんなの、意味ないよ」
r「大事な元貴の一曲なんだから、ミセスの一曲にもさせてよ」
m「…僕、歌う気ないよ」
h「ミセスの作業用BGM?笑」
r「あはは!笑 それめっちゃいいじゃん!」
車内でそんな会話が繰り広げられていた。
元貴に今日は家に泊まって欲しいと言われた。
涼ちゃんも誘っていたが、翌日に予定があるらしい。
風呂を先に入らせてもらった。
テレビでたまたまミセスの曲が紹介されていた。
【大森元貴の歌唱力、歌詞、表現力】
やはり、元貴にばかりスポットは当てられる。
確かに元貴も凄いけどミセスの曲を作り上げているのは結局誰だと思っているんだよ。
しばらく見ていると、突然テレビが消えた。
びっくりして後ろを向くと元貴がいた。
まだ頭にバスタオルを被せて半裸の元貴が。
m「こんなん見てんじゃねえよ…」
低い声でそう言って脱衣所へ消えていった。
元貴のあの態度、初めて見た。
今の元貴は弱っているから逆らう気にならない。
だから、スマホでXを見ていた。
そうした数分後に元貴が戻ってきた。
だからスマホを置いて空間を見つめた。
すると元貴が隣に座ったと思ったら、腿がぶつかり合う距離で顔を近づけキスしてきた。
h「…元貴、ダメだよ…俺たちはまだ
m「うるさい。いいからこの気持ちを消させてくれよ」
h「んぉ″♡♡もときッ!♡♡もぅ抜いでぇ、♡♡」
俺たちはバンドとしての役目を終えたら付き合うなんて、アホらしい約束をしていた。
それまではキスや触れ合いは駄目って話してた。
なのに、元貴は俺たちの約束を破った。
m「若井ッ……出す…」
h「むぃッ♡♡♡ッッッ~~~~♡♡♡♡♡♡」
m「ごめん。若井、本当にごめん」
朝、起きると元貴がずっと謝ってきた。
目も合わせないし、ずっとベッドの淵で俯きながら謝られていた。
どうもその様子に胸が苦しめられる。
h「…お腹、空いたね、」
なぜか涙が込み上げてきた。
その時、初めて元貴がこちらを向いてくれた。
m「やめてよ…そんな優しくしないでよッ…」
おでこ同士が触れ合い、頬には俺と元貴の涙が交じり合っていた。
r「ん?なんか歌詞変わった?」
m「うん。こっちの方がしっくりきたから」
r「そっか。んん″‼︎今年も頑張ろ!」
m「勿論」
end