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リオは驚きベッドから飛び降りる。 足が床に着いた途端、ジンっと傷が痛んで思わず膝を折り両手をついた。しかしすぐに顔を上げ、飛びついてきたアンを抱きとめて後ろに転がる。
「アン!会いたかったぁ」
「リオ!大丈夫?」
アトラスが慌てて傍に来て、リオの顔を覗き込んだ。
リオはアンに頬ずりしながら、アトラスに笑う。
「大丈夫大丈夫。アトラス、アンを見ててくれてありがとう」
「ふふっ、アンは本当にかわいいよな。ようやく俺にも懐いてくれたんだぜ」
「そうみたいだな。アトラスが良い人だからだよ」
「ん?なにそれ?」
「アンは人を見る目がある。だってさ、ケリーのこと嫌ってたし」
「あー…」
アンを抱いたまま、リオは上半身を起こす。立ち上がろうとすると、アトラスが手を貸してくれた。
「足、大丈夫か?」
「うん。痛いけど」
「無理すんなよ?|捻挫《ねんざ》してるって聞いたよ」
「そうなんだ。まあ折れてなくてよかったよ」
「まあな。あの高さから落ちてそれくらいで済んだのは奇跡だってさ」
「へぇ、すごいな俺。なんかアンと出会ってから運がいいような気がする」
「そういうことってあるかもな。そういえばアンって犬?狼?」
「よくわからない」
「かっこいい顔をしてるから狼かな?でもよく見ると少し違う気もするし…」
「それは俺も思ってた。でもさ、たとえ魔獣だったとしても、アンは俺の家族だから、絶対に離れねぇ」
「そうだね。俺もアンが好きだよ。もちろんリオも」
「ありがとう」
二人並んでベッドに腰かけ、アンの頭を交互に撫でる。
アンはリオの膝の上で、目を細めて気持ちよさそうにしている。
そうだ。アンが何者であっても絶対に離さない。ずっと一緒だ。ケリーにアンを殺されそうになったことで、より想いが強くなった。
「しかしアンはなかなか大きくならないな。今の姿はすごくかわいいけど、心配でたまらないよ。アン、早く大きく強くなってくれよ」
アトラスの言葉にリオはドキリとする。
そのことは常々思っていた。犬や狼ならば、もっと成長が早いはずだ。だけどアンは、出会ってから一月以上経つのに、あまり大きくなっていない。アトラスの言うように、今の姿はとても愛らしい。抱くのにもちょうどいいし、移動の時は鞄にすっぽりと収まってかわいい。隣で眠る時も邪魔にならない。だけど大きく強くなり、自分の身は自分で守れるようになって欲しい。何があってもリオが守るけど、アンが傷つかないよう強くなって欲しい。
リオは「そうだな」と、アトラスの言葉に深く頷いた。