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サァァァー•••と草木が風に揺れて音を奏でる
まだ暖かい木漏れ日の中で涼しい風に当たって眠る1人の男の子
「莉犬、みーつけた」
僕はひょこっと顔を出し、木に体重を預けて瞼を閉じている莉犬に話しかけた
ゆっくりと開かれた2色の瞳が僕を捉える
「……るぅとくん」
莉犬は僕の名前を口にすると微かに口角を上げて笑った
「おはよ」
「おはよう、莉犬。そろそろお昼終わっちゃうよ」
僕も笑い返し、莉犬の隣に置かれた今日はまだ1度も開かれてないであろう鞄を持ち、手を差し伸べる
莉犬は少し黙った後、僕の手を取って立ち上がった
「そう、だね。うん、そうだそうだ」
「…行かなくちゃ」
そう言った莉犬の表情が、凄く、胸を苦しませたのと同時に怒りが湧いてくる
「無理しなくて良いんだよ。生徒会室に居たって良いし、このまま帰ったって良い」
「……………………」
「………大丈夫」
と、莉犬は微笑んだ
あぁ____
____ぶっ殺してしまいたい
「文化祭の出し物、どうする?」
前の席に座っていたるぅとくんが振り向き、俺を見た
「今年はハロウィンと被るから楽しくなりそうだね」
「うーん…別に、何でも良いかな」
「もー、冷たいなぁ」
「るぅとくんは、何が良いの?」
「そうだなぁ……」
顎に手を当て、下を向く
金色の髪が陽に照らされ、サラッと揺れた
俺の言葉にうーんと眉を寄せて考える姿は昔から何も変わらず、可愛らしい
「んー……んー…っ」
「無理に出さなくても良いよ…(笑)」
「やだ、出すもんっ」
そう意地を張った様に、顔が見えなくなるまで下を向いたるぅとくんは不意にとんでもないことを言って来た
「んー…あ、コスプレ喫茶とか?ハロウィンだし」
「____…へ、?」
一瞬でクラス中の視線が此方へと集まった
るぅとくんのキラキラとした瞳を見つめる
曇りないその瞳に、あぁ本気なんだ、と悟る
このキラキラとした瞳を見せてやりたい
「……たの、し、そうだね」
うんっ、と華を咲かせるるぅとくんに俺は後に起こる惨劇を想像しながら、チャイムが鳴るのを待った
「散々だったね、2人とも」
ぼぅっと、るぅとくんと共に夕日に照らされながら黄昏ていると、カラカラとドアを開けて入って来たころちゃん
ころちゃんとは違うクラスなのだが、どうやらそこまで騒ぎ声が聞こえていたらしい
「…あはは。まぁでも、るぅとくんのやりたがってたやつに決まって良かったよ…」
皮肉混じりにるぅとくんを見るとむぅっと頬を膨らまし、後悔の色が混じった瞳に苦笑する
「コスプレ喫茶すんの!?」
「これまたなんで(笑)」
「もー!これ以上僕を虐めないでください」
「でも楽しくなりそうじゃない?」
「僕たち最後の学園祭なんだし」
「そうですね……苦労するのも、良いかも」
「文化祭の後は体育祭もありますしね」
この学校は他とは少し違くて、他より少し遅く文化祭をやり、その後に体育祭をやるというシステム
「まぁでも、莉犬くんは楽しめるか分かんないね」
そう言って頬杖をついて笑うころちゃんを1度睨み、視線を落とす
「………別に、たのしむし」
ズルズルと椅子に凭れ、窓の外を見つめた
るぅとくんに睨まれたころちゃんは俺に謝ってくるが、少しは怒られろと無視をして
「楽しもうね、莉犬」
ころちゃんに絞め技をかましているるぅとくんはこちらを見てにっこりと笑った
「……うん」
俺も笑い返し、再び、外へと目を向けた
「…………………マジでぶっ殺しますよ」
それは、聞こえなかったことにした
「____…で?何であんなことを言ったわけ」
家から数分のファミレス
目の前にいるるぅとくんの笑顔にガタガタと身体を震わせた
「………あんな、落ち込むとは思わなかった」
「…………」
「…だって、さぁ…楽しんでもらいたいじゃん」
「見たでしょさっきの。ずっとさとみくんの事見てたんだし」
「…………その気持ちは分かりますけどね、だからと言って莉犬が傷つくような事しないで下さい」
思わず、下を向いてしまった
傷……を、つけてしまったのか
「…まぁ、当日はどうにかして僕たちが楽しませれば良いはな………し……」
ピタッと会話を止めたるぅとくんを不思議に思って見つめていると急に立ち上がった
「あ”———っ!!!」
「———っ!」
その瞬間、瞳を見開いたるぅとくんと目を合わせた
「出来ないじゃん…!僕は文化祭関連のと生徒会の仕事もしなきゃだし、ころちゃん確か合同で巨大迷路でしたよね」
「う、うん、そうだよ。それがな…………あ」
「なんでこうゆう時に限ってそんな面倒臭い大規模な事をするんですか?!」
「莉犬と一緒に居てあげられないじゃん!」
「莉犬は莉犬で全学年の指揮も取んないとでしょ?!」
グラグラとるぅとくんは僕の両肩を掴み、揺らす
「い、いや、僕そ、もそ、も、クラっス、違う…っ」
「しか、も…ぼく……がした、いなんて、い、って……な……」
「あ”———どうしよーっ!!」と叫ぶるぅとくんの耳には僕の声なんて入ってこず、永遠と僕を揺らし続け、気がつけば笑ったまま目をグルグルに回していた
『———•••なんで』
『なんで嫉妬なんてしたの…?』
どうして、嫉妬なんてするの———•••?
ふと、目が覚めた
解きかけていた問題に、あぁ寝落ちてしまったと一度伸びをする
「…………………」
あの日の光景が蘇ってくる
小さく舌打ちをし、気を紛らわそうとスマホを手に取ると、一件の通知に気がついた
通知を開き、トーク画面から通話ボタンを押す
数コールかかった後、優しい声が聞こえた
《もしもし、莉犬くん?》
「うん、ごめんね。寝てて気が付かなかった」
《莉犬くんらしいね(笑)そんな急ぎの用でもないし大丈夫だよ》
クスクスと笑うなーくんの声はとても暖かく、俺の心を溶かした
「なーくんなんだかご機嫌だね。さてはジェルくんとなんかあった?」
《あ〜分かっちゃった?実はね、文化祭一緒に回ることになったんだ》
まるで恋愛系に出てくる乙女系主人公の様だ
電話越しでも今どんな表情しているのかが手に取るようにわかった
「………楽しい学園祭になるといいね」
《…俺的には、莉犬くんにも楽しんでもらいたいよ》
なーくんは微かに笑った後、そう言った
「…俺は生徒会の仕事があるから」
《あぁそう!その事なんだけど、先生にお願いしといたから》
「………え?」
「「えぇ〜?!」」
「莉犬、それは本当の事なんですか?」
「本当の本当の本当???」
ものすごい勢いで俺に近づき問うるぅとくんに顔を引き攣らせながら頷いた
「ほ、本当だよ。なーくんが先生にお願いしてくれて、この期間中と当日は生徒会の仕事はしなくていいって」
「それはいつまで有効なの?」
「体育祭が終わるまで」
そう言うと2人はガッツポーズをした
それぞれ違う意味で
「莉犬!楽しい文化祭にしましょうね!」
キラキラと目を輝かせてこっちを見つめるるぅとくんには、本当のことは黙っておこう
生徒会の仕事がなくなったとしても、文化祭関連の仕事は無くなっていないと言う事を