テラーノベル
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夜。
駅前、
いつもの待ち合わせ。
遠くから見えた瞬間、
一瞬で分かる。
狛。
いつん間にか呼び捨てになってた。
あんなに恥ずかしかったのに、
海龍、
無意識に背筋伸びる。
(……彼女、や)
近づいてきて、
目合った瞬間。
「あ……」
「……おつかれ」
どっちも、
ちょっとぎこちない。
でも笑ってもうて、
同時に視線逸らす。
「……歩こか」
並んで歩く。
距離、
昨日より少し近い。
でもまだ、
手は繋がへん。
沈黙が心地いい場所まで来て、
海龍、足止める。
「なぁ……」
狛、
すぐ顔向ける。それで首も傾ける。
「今日さ、
言わなあかんことあって」
声、
少し低なる。
「実は俺さ……」
一回、
息吸う。
「MAZZELっていうグループで、
アーティストやってる」
狛、
きょとん。
「……え?まーぜる??」
焦る海龍。
「いや、その、
騙すつもりとかやなくてな?
言うタイミング逃してもうて……」
一気に言い切る。
「え、あの…OnlyYouの…??オーディションの?!!」
目を見開く狛。
「うん、そー。」
「本名も海龍やし、
昨日までの俺も全部ほんまっていうか」
間。
狛、
ゆっくり瞬きして。
それから、
ふっと笑う。
「……びっくりはしましたけど」
一歩近づいて。
「でも、
海龍さんが海龍さんなのは
変わらないですよねっ!」
胸、
一気にほどける。
「……ありがとう」
その直後。
狛、
少しだけ視線落として。
「……じゃあ、
私も…言いますね」
声、
いつもより小さい。
「……え、?」
海龍から声が出る
(…狛にも隠し事あったんか??)
ゆっくり口を開く、
「私、
左耳……聞こえないんです」
一瞬、
音が消えた気する。
「生まれつきちょっと弱くて、
今はもう……」
言葉、
途中で止まる。
海龍、
反射で一歩寄る。
「……それでか」
今までの記憶、
一気に繋がる。
時々反応遅い理由。
立つ位置。
左側に自然と寄ってきたこと。
「ごめん……
今まで気づかんで」
狛は 首振る。
「気づかれたくなかったんです。
言わなくても遊んでくれるし…」
狛はなんだか申し訳なさそうに俯いて言う
「あの、…離れ、…嫌になったなら離れてください。」
「今までのこと無かったことにしてください、慣れてるので」
って笑いながら本当に慣れたように離れようとする。
海龍、
そっと狛の右側に回って腕を掴む。
自然に。
当たり前みたいに。
「……これからは、
俺がここおるから」
狛、
はっとして顔上げる。
「なにあっても、… ずっと」
間。
目、潤む。
「……それ、 ずる…っ」
海龍、
小さく笑って。
「彼氏の特権やろ」
そのまま、
初めてちゃんと手繋ぐ。
指、
しっかり絡めて。
「……言えてよかったな」
「うん、………海龍」
「え、呼び捨てやん…!!」
「…家で……れんしゅーしてた」
「かわいっ笑」
「うるさーいっ〜笑!」
夜風、
少し冷たい。
でも二人の間だけ、
あったかい。
秘密も、
弱さも。
全部知った上で、
一緒に歩き出す夜。
ほんまの意味での、
“始まり”。
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