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幸せだった。
俺は、お前に会えて幸せだと思ってた。
でもそれは……
4番side
4「まろー!朝ー!!」
5「起きとるわ!」
4「あれ笑おはよ」
5「おはよ ちゃうわ!笑」
「寝坊したんないこやろ!」
4「えへ」
「ほら行こ、まろが行きたい場所リクエストするの珍しいよね」
5「あー、うん、そうやな」
一瞬、まろの表情が暗くなった気がする。
悲しい顔にも寂しそうな顔にも見えた。
4「まろ?」
5「あぁ、うん今日俺運転するわ」
4「え、いいの?ありがと」
車に揺られて1時間、着いたのは墓地だった。
4「お墓……?」
5「おん、今日、家族の命日やねん」
4「命日……」
まろと付き合い初めてから2年、そんな話聞いたことなかった。
“命日”という言葉にピクリと反応する。
まろと付き合い始めてから退職したが、元々殺し屋として裏社会で生きてきたないこにとって“命日”というものがどれだけの重さかはわかっていた。
5「そろそろ、話してもええかなと思って。」
「俺の家族のこと」
4「……うん」
5「お墓参り終わったら家でゆっくり話すな?」
4「うん、わかった」
~家~
コーヒーを2杯入れてテーブルに置く
4「はい」
5「ありがとう」
「で、話しても、ええ?」
4「うん」
5「俺の家族な、殺されたんよ」
「5年前、俺はもう一人暮らしやったから知ったのはもう亡くなってからやった」
「2時くらいに病院から電話があって、ご家族が息を引き取りましたって」
「死に際にもおれんかった」
「死んでから数時間経った家族の顔を見るために病院へ行った」
「みんな苦しそうな顔しとった」
「今でも忘れられん」
「でな、もう生きる意味わかるようになって、死んでやろうって思ったらないこに会ったんよ」
「橋の上、ないこに抱き抱えられて、何してんだ!!って怒られたんが初対面」
4「………」
何も言えなかった。
2年も付き合って知らない過去があった。
それが、とても重たかった。
これだけの過去をまろは1人で背負っていた。
同時に少し怖かった。
まろと付き合うまで自分は奪う側だったから。
心からの言葉をかける権利がないと自覚していたから。
励ますことも、労うことも、自分にはできなかった。
ただ、その恐怖を払拭したい一心で何とか口を開いた。
4「ご家族の、写真とかある……?」
5「ん?あるで」
まろがスマホをいじり出す。
差し出された画面に映ったのはまろを中心に映っている家族写真。
まろ以外の4人に見覚えがあった。
嫌な予感が、嫌な事実が、目の前に突きつけられてしまった。
5年前、自分が殺した家族。
4「……ッ……教えてくれて、ありがとう」
「辛かった……?」
5「もちろん辛かったよ」
「でもな、俺はその後に、それが原因でないこに出会えた」
「いつまでも恋に興味を示さなかった俺に呆れた家族が連れてきてくれたんやと思っとる」
そんな綺麗なものじゃない。
家族が連れてきたんじゃない。
そんなことあってたまるか。
俺が奪ったんだ。
俺が奪ったくせに、俺はそんなこと知らずにまろの隣に立っていた。
その事実がどうしても、どうしようもなく痛かった。
5「ごめんな、こんな話」
「でもないこ、俺の家族に会いたがっとったやろ?」
「そろそろちゃんと説明せなあかんなって思って」
4「……………そっか」
「うん、話してくれてありがとう」
その後どうなったのか全く覚えていない。
ご飯は食べたのか、お風呂には入ったのか、どうやってベッドに入ったのか。
何も覚えていなかった。
ただ翌朝、目が覚めたら目の前でまろが眠っていた。
その寝顔が、まろの家族の最期に重なった。
自分じゃだめだと気づいた。
奪う側が人の幸せに関わるなんて許されることじゃない。
静かに抜け出して、スマホを置いて家を出た。
もう、会わない。
俺はまろの幸せのために離れることを決めた。
俺が幸せにできなくてもいい。
ただまろが幸せになってくれるならそれでいい。
何も言わずに出て行ってごめん。
逃げてごめん。
俺が殺したんだって言えなくてごめん。
お願い。
お願いまろ。
俺のことは許してくれなくていい。
許してくれなくていいから。
どうか、どうか。
「僕なしで上手く幸せになってね。」
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