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【⚠︎】
-rbru(🐙🌟×👻🔪)
若干vta要素(🐙🌟)有
-上記の単語が分からない方は読むのをお控えください。
-御本人様とは一切関係ありません。
-ボイス・動画を全て追えているわけではないので、口調や呼び方に誤りがあります。
-見やすくするために名前は伏せていません。
『』🐙🌟
《》🌟(晶)
「」👻🔪
訂正8/19 昌→晶
「くそ、なんでこんなとこ来なきゃなんねぇんだよ…」
足元に散らばるガラス片をパキパキと鳴らしながら小言を漏らす。
ここは西の市街地から遠く離れた廃ビル。
元々は商業施設として賑わっていたらしいが、管理元の社長が業務に関して不正行為をしていた上に、東から人を拉致して働かせていたことが表沙汰となり逮捕された。
その影響を受けテナントが次々と退散し、建設会社も関わりたくないという理由で解体工事を拒否した結果廃ビルと化したそうだ。
だが最近、この廃ビルに何者かが出入りしているという通報が頻繁にくるようになり、一度立ち入り調査をしようという話になった
…のだが
【ごめん俺その日本部の会議あるから行けないわ!】
【僕も報告書書くから無理。】
【店の水漏れが酷くて修理しないと いけないので行けないです。】
「ライとカゲツは分かるけどなんだよ水漏れって…!来たくねぇだけだろ!」
小柳の怒りが無機質な壁にぶつかりこだまする。
まだ正午だと言うのにビル内は薄暗く湿った空気が漂っていて、懐中電灯を握る手が少しずつ湿り気を帯びていく。
なんとも言えない気持ち悪さに、早く終えて出てしまおうと足早にフロアを駆け巡る。
しかし最上階のホール に着いても人の気配はせず、物音の一つすら聞こえない。
「はぁ…んだよ、なんもねぇーじゃん…」
五階建てのビルを走り回った疲労と、片道二時間かけてきた疲労が重なり、深く溜息を吐く。
まぁ、無いなら無いで安全ってことでいいか…と思いながら耳に装着したイヤホン型の通信機に指を添える。
《あー、こちら小柳。
現場に異常は見られなかっ》
背後からパキッと静かに小枝を踏むような音が聞こえた。
小柳が瞬時に振り向く瞬間…
《…ぴょん?》
もう二度と聞くことは叶わないと思っていた声が
もう二度と会えないと思っていた人物が、
そこに立っていた
「…ほし、る、べ……?」
耳元の通信機から手を離す。
心臓が締め付けられる感覚がした。
何も、考えられなかった。
《やっぱり!後ろ姿がそれっぽいから、そうだと思ってたんですよね〜》
ショートでミルクティーのような髪色、深い翡翠みたく丸い目、どこか浮いた雰囲気の声、見慣れた制服…
間違いなく、彼だった。
何故?
どうして?
頭の中がぐちゃぐちゃになった。
だって本当の彼は記憶を失っていて、ヒーローになる前のことは何一つ覚えていない。
“ぴょん”と呼んでいたことも。
学校であったことも。
本当に全部、何もかも覚えていなくて…
《え、大丈夫?顔色悪いよ?》
彼がちらりと顔を覗いてきた。
顔がレースに隠れていても分かるくらい青ざめて冷や汗をかいていたらしく、頬を汗が伝うのを感じたり
それを手の甲で軽く拭う。
「だ、大丈夫だ。ほんとに。」
まだ状況が理解できない。
何故彼がここにいるのか。
本当に実在するのか、何か悪い夢を見ているのか。
《ぴょん、ゲームしてばっかで頭おかしくなったんじゃないですか?》
《たまには外出ないとー》
そう言って彼は窓の方へと歩いていく。
窓の取っ手に手をかけたその時、
あの日のことが脳裏に浮かんだ。
【ほしるべー、帰り飯食ってかね?学生最後ってことで。】
【ごめんぴょん、俺寄らなきゃいけないとこあるので先に帰ります】
【おーそうか…んじゃ、まあ、気をつけろよ】
【はい。またね、ぴょん。】
ほしるべは、その日を境に消えてしまった。
「は、っ待_」
嫌な記憶を思い出した俺は彼の元へ駆け出していた。
取っ手にかけられた手を引き離したその瞬間…
彼が、薄気味悪い笑みを浮かべた。
それを視界に捉えたと同時に、俺の身体は廃ビルの外に投げ出されていた。
何が起こったのか、状況が把握できなかった。
ただふわりと身体が浮く感覚と、落ちる感覚、それだけ感じた。
ヒュッと喉が鳴る。
地上五階から落ちる気圧で上手く呼吸ができず体制が直せないため、地面との衝突を避ける術がない。
どうにかできないかと必死に踠いていると、突然後ろ髪を掴まれる感覚がし、紫の何かが身体に巻きつき、勢いよく横に引っ張られた。
そのままドスンと鈍い音を立てて落下したが、 紫の吸盤が衝撃を吸収し、地面との衝撃を受けずに済んだ。
荒れた呼吸を整えていると、耳に届いたのは聞き慣れた声。
『小柳くん!』
視線を上げると、そこにいるのは星導ショウだった。
「星導…」
『あ、なんでって聞きたいんでしょ?ビビりな小柳くん一人じゃ心細いだろうと思って来てあげたんですよ。 』
『そしたらなんか窓の外から飛び出してるし!まじなにやってんの ?』
『てか俺来てなかったら死んでましたからね。』
一人わーわー小言を言う星導を見ながら、小柳は先ほど会った彼を重ねた。
今の星導ショウには記憶がない。
思い出してほしい記憶も、話したいことも沢山ある。
だけど、それを言って彼を困らせてしまうのは何か違う。
彼と星導ショウは別人か。
正直、どう答えたらいいのかわからない。
どちらも欠かせない存在。
今は、それだけでいい。
「…なあ、星導。」
汚れたヒーロースーツを手ではたきながら名前を呼ぶ。
『はい?』
「…ありがとな。」
『…え、どういたしまして。』
人が感謝してやったのにこの返事だ。
なんとなく癪に触ってゲシッと星導の尻を蹴った。
なんでですかーとか騒ぎながら歩く星導を横目に、背後に佇む廃ビルを見る。
_先程までいたはずの部屋に、彼の姿はなかった。
あれは一体何だったのか。
幽霊か。俺が生んだ何かか。
もしかして……
『小柳くん?帰らないんですか?』
星導が不思議そうに見つめる。
「行くよ。」
一呼吸おいて返事をした。
『ライとカゲツはもう拠点戻って来てますよ。』
「そうなん?昼飯なんかあっかな」
『インスタントならあった気が…』
他愛ない話を
ただするだけでいい。