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いんくるーでぃんぐ
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※死ネタ、モブ有。npさまが可哀想
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山本と久々に予定が合って、デートに行くことになった。
お互いYouTuberで、通話はもちろん、コラボや複数人でのオフ会をすることはあれど二人きりとなるとなかなかタイミングが合わない。だが、今日は都合がよかった。
機嫌よく身支度をして家を出る。せっかくのデートだと言うのに、生憎の曇り空だった。空を覆う雲はひどく分厚くて、デート中どころか今日中には到底晴れそうもない。最高潮だった気分が少し下がるのを感じた。
そこからは特に問題もなく待ち合わせ場所につき、俺にしては珍しく遅刻せずに到着することが出来た事実に我ながら驚いた。山本はまだ来ておらず、暇だったので適当にTwitterを開いて時間を潰す。
「ねっぴー!」
TLを目で追っていると、聞き慣れた声が聞こえた。顔を上げ、声のした方を見れば、そこには駆け寄ってくる俺の恋人がいた。
マスクの下の頬が自然と緩む。スマホをポケットの中にしまって、俺自身も山本へと近付いた。
「山本ー!なんか久しぶりだな、こうやって二人で会うの」
「そうだね〜、リオラとかスキマとか入れて会うのは何回かあったけど」
「いや〜、マジ楽しみだわ今日」
「山本も超楽しみ!あと「二人で会う」じゃなくて、デートね」
「……るっせえ!」
敢えて言わないでおいたのに。他所を向いてキレ気味に答えてしまったのに、分かったようににやにやと笑う山本がうざったくて、恥ずかしくて。けれど、確かに嬉しかった。
取り留めのない話をしながら街中をだらだらと歩く。
デートと言ってはいるが、やることはあまり変わらない。恋人らしく予定を詰めて、とかするよりも、普段通りに過ごす方が俺たちの性に合っていた。
「次はどこに行きますか〜?ねっぴーさん」
「え〜……あ、そこのラーメン屋美味そうじゃね?」
「ねっぴーほんとラーメン好きだよね〜」
そう言って山本は笑った。こんなたわいのない話で笑ってくれる山本が俺は好きだ。
また雑談をしながら向かっていると、前から人が歩いてきた。具合が悪いのか、足元がおぼつかずふらふらとしている。
そいつは山本の前から歩いてきている。俺は別に気にもならなかったが、山本は優しいから、歩行者を受け止めて心配そうに声をかけていた。
しかし、何かおかしい。嫌な予感がする。だって、何も反応がない。どれだけ具合が悪くとも、頷くくらいのことは出来るはずだ。そいつから離れた方がいい。そう言いたいが、言ったところで山本が素直に離れるわけがない。山本は、そういう奴だ。
「ねっぴー、この人すごい体調悪いっぽい!山本ちょっと病院連れていこうかなって思うんだけど……」
山本がそう言って、俺に顔を向けた瞬間。そいつの手元で、何かが光るのが見えた。そこには、さっきまで何もなかったはずだ。いや、でも、見覚えがある。どこの家にでもある、誰でも使える、凶器となり得る金属製のもの。
「っもとくん!!!!」
慌てて手を伸ばしたが、遅かった。
俺の、目の前で。山本は、もとくんは、鮮やかな赤色を噴き出した。
「………え?」
目の前で崩れ落ちていく、身体。あまりの情報過多に、視界が真っ暗になった。
「あーあ、こんなに簡単に引っかかってくれちゃって。このお兄さんも警戒心ないねー」
けらけらと笑う声が聞こえる。
「まあ、でも今日はこの紫髪のお兄さんだけでいいかなー。そこの君は介抱でもしてあげてよ♪」
なにを言っているのかわからない。今、俺の目の前には、血の中で、苦しそうに息を荒らげる山本がいて。わかるのは、それだけ。こいつがなにを言っているのか、今の俺には、なにも。
近寄った途端、身体中の力が抜けて、俺は山本の血の中に座り込んだ。無意識に手が伸び、出血の止まらない身体に添えるように置かれた。いつの間にか、あたりが騒がしい気がする。サイレンの音もきこえるような。怖いはずで、見たくないはずなのに。頭を固定されたように目を逸らすことができない。
山本。山本が、なにか言っている。でも、聞こえない。聞きたい。聞けない。おれの脳が、拒絶してしまっている。
あまりにも現実味のない光景を前に俺は、その場で呆然と見つめることしかできなかった。
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はじめまして。作者の幽と申します。
物語自体を書き上げてはおりますが、長さを考慮して分割して投稿させていただきます。
よろしくお願いいたします。
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