テラーノベル
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組員たちは箸を持つ手が止まり、皆呆然と固まっている。口を開けたままの者、目を擦る者、まるで白昼夢でも見ているかのような光景だ。
そして次の瞬間、まるで爆発したかのように、更に大きな騒ぎが巻き起こった。
組員たちは、信じられないものを見たかのように、互いの顔を見合わせ、ざわめき出した。
「お、お気に入り…!?し、しかもキスまで…!」
「若頭の…!? ま、まさか…まさかそういう関係に…!」
「そんな、一体いつから!? 私たちは何も聞いておりませんぞ!」
「若頭、冗談にしては悪質すぎます…!」
彼らの顔には、驚愕と困惑と、そして好奇心と困惑が入り混じった、複雑な表情が浮かんでいる。
滉斗は元貴の言葉と、頬に残るキスされた感触に、全身の血が逆流するような感覚に襲われた。顔が熱くなり、耳まで真っ赤になるのが自分でもわかった。
(お、お気に入りって何…!! しかもキス……!?何言ってんだ、この人…! 冗談だとしても、これは…!)
滉斗はあまりの衝撃に、目の前の豪華な料理が喉を通らなくなりそうだった。
ざわめきが最高潮に達したその時、元貴は静かに、しかしはっきりとため息を一つ吐いた。
「はぁ…」
その微かな息遣いが響いた途端、あれほど騒がしかった居間は、まるで魔法にかけられたかのように、ピタリと静まり返った。組員たちは、皆、恐る恐る元貴の方へと視線を向ける。
元貴は湯呑みをテーブルに置き、その涼やかな瞳で、ゆっくりと組員たちを見渡した。そして、口元に微かな笑みを浮かべ、優しく問いかけた。
「…なに、みんな。僕が誰を傍に置こうと、文句あるの?」
その声は、囁くように穏やかで、一見すると何の感情も篭っていないように聞こえる。しかし、その言葉の裏には、逆らえばどうなるか、という明確な威圧感が隠されていた。
組員たちは、冷や汗をかく者、顔を青くする者、皆震える声で答える。
「い、いえ…ございません…」
「滅相もございません、若頭…!」
元貴は、そんな彼らの反応に満足したように、ふっと口角を上げた。そして、子供のように、少しだけいじけたような顔を作る。
「もー、食事ぐらい静かに食べようよ。せっかくの美味しい朝ごはんなのに、台無しになっちゃうじゃない」
そう言って、元貴はひょいと箸を持ち、目の前の焼き魚を綺麗に身をほぐし始めた。何事もなかったかのように、優雅な手つきで食事を進める。
滉斗は、自分の身に起こったことが、いまだに現実のこととして理解しきれていなかった。
頬に残る、元貴の唇の生々しい感触。指先でそっと触れてみるが、熱を持つ頬は、現実だと告げている。
呆然と固まる滉斗に気づいた元貴が、白米を口に運びながら、ちらりと隣の滉斗を見た。
「食べないの?」
まるで、自分が引き起こした騒動など、全く関係ないかのような、とぼけた声で元貴は言った。
(誰のせいだよ…!)
滉斗は、心の中で叫んだ。目の前の豪華な食事が、突然のキスと「お気に入り」宣言によって、味も何も感じられなくなりそうだった。
恥ずかしさと、困惑と、そして元貴という男への、どうしようもない感情が入り混じる。しかし、組員たちの冷たい視線を感じながら、ここで食べないと何をされるか分からない、という動物的な本能が働いた。
滉斗は顔を真っ赤にしたまま、震える手で箸を取り、黙々と白米を口に運び始めた。その背中には、組員たちの好奇と警戒が入り混じった視線がまるで釘のように突き刺さる。
その時、元貴が「あ!」と、まるで何かを閃いたかのように声を漏らした。
居間の視線が一斉に元貴に集まる。昨日、玄関で滉斗の存在を尋ねた、眉間に深い皺を刻んだ側近の男が、居住まいを正して問いかけた。
「若頭、どうされました?」
元貴は、その問いかけには答えず、にこやかに滉斗へと微笑みかけた。その笑顔は、どこか悪戯っぽい光を宿している。
「ねぇ、君さ。別に急いで帰る用事も無いんでしょ? 僕、君がここにいてくれると、嬉しいんだけどな。ここに、住まない?」
元貴の言葉に、滉斗は「え…!?」と、間抜けな声を上げて目を見開いた。驚きのあまり、箸を持つ手が止まる。
組の屋敷に住む? 一般人の自分が? そんなこと、有り得るのか。
組員たちは再びざわめき始めた。今度は、先ほど以上の衝撃が走ったようだ。
「な、何を仰せですか、若頭!?」
「一般人を屋敷に住まわせるなど、前例がございません!」
「こんな得体の知れない奴の、一体何がいいんですか!」
「若頭のお気持ちは分かりますが、それは…!」
口々に意見が飛び交う中、側近の男が、冷静な声で、しかしはっきりと口を開いた。彼の声には、深い配慮と、若頭への尊敬が滲んでいる。
「若頭、お言葉ですが…彼にも、彼の人生があります。若頭のお気持ちも、私共にも痛いほどよく分かりますが…一般の方を、この組の世界に巻き込むべきではありません」
側近の男の言葉は、正論だった。元貴は、その言葉にスッと目を伏せた。その表情は、たちまち切なげな色に染まる。
「…分かってる…」
元貴は、悲しそうに、まるで諦めるように、小さな声でそう零した。その姿は、先ほどの覇気ある若頭とはまるで別人のようだ。
側近の男は、元貴のその表情を見て、何か深いものを感じ取ったのか、複雑な面持ちで元貴を見つめている。
しかし、組員たちは違った。彼らは常に若頭が大好きで、心から尊敬し、彼が最優先だった。元貴の悲しそうな表情を見た途端、彼らの態度はコロリと変わった。
「おい、お前! 若頭を悲しませるなよ!」
「そうだ! 若頭がそうおっしゃるなら、ここに住めばいいだろう!」
「若頭がお気に入りだと言ってるんだ! お前ごときが断るのか!」
「若頭を悲しませる奴は、許さんぞ!」
彼らは、掌を返したかのように、滉斗に怒鳴り散らし始めた。滉斗は、あまりの急展開に、ほぼ放心状態だった。組員たちの言葉は、耳に入ってくるものの、その意味を咀嚼する余裕がない。
「こら、みんな! いい加減にしなさい!」
元貴が、ぴしゃりと声を上げた。その声には、少しばかりの怒りが混じっている。組員たちは、すぐに口を噤み、再び静まり返った。
その場でそれ以上の議論は続かなかった。元貴は、再び箸を取り、食事を再開した。
滉斗は、目の前の豪華な朝食に手をつけながらも、元貴の横顔をそっと見つめた。その涼やかな瞳は、先ほどの騒動の余韻か、あるいはもっと深い感情からなのか。
ほんの少しだけ、寂しそうに見えた。
突然ですが
作者です
今作を読んでくださっている皆さん、ありがとうございます!
さて、1話でやんわりお伝えした通り、
今作の受け攻め問題についてです😺
mtpかwkmr、好きなほうを皆さんに選んで頂きたいです。
ここのコメントで
「〇〇受けがいいです!」
とか
「❤️攻」
とか
言い方は何でも大丈夫なので!!!
誰でもコメントしてくださいー!
ちゃんと一人一人数えて集計いたしますので
つまり今皆さんには投票権があるということです
だからコメントしない選択肢はないよ
絶対どっちかをコメントしてくださ
受け攻め決まらないと続き書けないので
頼みます
期限は8月5日まで🥱
1人につき1コメントまででお願いします🙇🏻♀️
じゃあまた
コメント
82件
ギリセーフですか!? ❤受けおねがいしす!!!
初コメ失礼します! ❤受け〜!❤受けを読みたいです!!!
❤受けの💙攻めでおねがいしまっす!!