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とと
#ラブコメ
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「健人ちゃん!」「健人くん!」
久方ぶりに学校に登校すると雄一郎と明菜さんが俺に駆け寄ってきた。
ガリガリに痩せた細腕で精一杯の声を上げる。
「よぉ、久しぶり」
「おう!どれだけ心配させるんだ、コノヤロー!」
雄一郎が右腕で俺を抱き寄せて、左腕で頭をグリグリと押し付ける。
ポタポタと頬に水滴が流れてきた。
雄一郎が泣いていたのだ。
そこまで心配してくれてたのか。
胸がキュッと締め付けられた。
「みんな心配してたんだよ?」
明菜さんの声でクラス中に目線を移す。
みんな、ホッとしたように微笑んでいた。
「みんな、心配かけてごめん」
頭を下げる。
「よく帰ってきたね」
「心配したぞー」
吉原さんと井上さんの言葉でクラスメイトたちが口々におかえりと温かく迎えてくれた。
自分の席に行く。
向かって右側と左側の机には白い花束が飾られていた。
そう、凜々と凍子はもう居ない。
その現実が未だに受け入れられず、焦燥感が俺を襲う。
けど、紅葉さんと約束したんだ。凜々の失われた空白の期間を解き明かすと。
俺は凜々が前世でどういう人生を歩んできたか知りたい。
そのためには—ピンポン。
不意にスマホのメッセージアプリの通知が鳴った。
『昼休み、あなたのクラスに行きます』
紅葉さんからだった。
『了解です』
それだけ返信する。
昼休み、宣言通り紅葉さんは俺のクラスへとやってきた。
雄一郎・明菜さん・吉原さん・井上さんは4人で机をくっつけてそれぞれ弁当を箸でつついていた。
紅葉さんは俺の前の席をお借りして、俺と向かい合わせて机をくっつけた。
俺は朝コンビニで買ってきた菓子パンを開けようとしたのだが、向かい合ってる少女が制しした。
「健人さん、あなたはこれを」
「まさか手作り弁当!?」
ガタッと椅子を鳴らして立ち上がる。
「いいえ、コンビニ弁当です」
ガタ……。肩を落とす。
そこは手作り弁当であって欲しかった。
弁当のラベルには『スタミナ爆上げ!ニンニク生姜豚丼!』
「しばらく飯抜いてた俺にこれを食えと?」
「パンよりは体力つくと思いますよ」
「まぁ、せっかく用意してくださったならいただきますが」
パカッ。
ウッ……!モワーンとニンニクと生姜の匂いが鼻に襲いかかる。
ただ、しばらく飯をまともに食べてなかったせいか、食欲が湧き上がってきた。
「いただきまーす!」
ガツガツ!
勢いよく豚丼を胃の中へと放り込む。
「ふぅーご馳走様でした」
唖然とする紅葉さん。
「どうしました?」
「いえ、そんなにお腹が減っていたのかと思いまして」
「凜々のこと考えたらやる気がもりもり出てきて」
「そのことですが、わたくしの食事が済んだらお話よろしいでしょうか?」
「はい!」
数分後、紅葉さんが昼食を摂り終えたので、本題へ。
「凜々の足跡を辿るにはどうすればいいんですか?前世で縁のあるところを周るとかですか?」
「そんなものありませんよ」
「え?」
「あなた方が前世で過ごした次元と、今わたくし達がいる次元は別なのです」
「つまりパラレルワールドということですか?」
「そう捉えてもらって構いません」
「それじゃあ、前世の凜々を知るにはどうすれば?」
「答えは簡単です」
ピラっと1枚の便箋を取り出す。
「ここへ向かいましょう」
ええと、地方の聞いた事のない地名が記されていた。よく分からないが神社らしい。
「ここの神主さんが詳しいので」
「もしかして死んだ凜々の魂を呼び寄せるとか?」
「当たらずとも遠からずです」
「つまり?」
「凜々さん本人の魂は呼べません。ですが、その記憶を持つ者と意識を共有するのです」
「凜々の記憶を持つ人なんているんですか?」
凍子ももういないし、他に誰が?
「忘れましたか?夏休みにお話したことを」
「あっ!」
あのいじめっ子2人だ!
「多分察したと思うので話を続けます。井ノ原優太と柿原勝利を連れていきます。」
「どうやってですか?」
「ふふふ、おまかせを」
そう言って不敵に笑う紅葉さんだった。
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