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Ⅻ
!
目を覚まし、上半身を勢いよく起こした。
そして、頬をさする。
はぁっ!はぁっ!
息が苦しく感じた。
夢か…
最近、見るようになった夢。
ましろさんが見せた夢から、少し飛ばされることはあるが、続いている。
今日見たところの最後の方は、前に見たことがあった。
10円玉と、テレビ。
銅色と琥珀石。
僕は、それからあの子に、
アカガネ コハクと名付けることにしたんだ。
このままでいたら、全てを思い出せるかもしれない。
でも、
苦しい。
『・・・』
琥珀さん…
あれ?
いない。
あたりを見回す。
茜さんはいる。
なのに、琥珀さんの姿が見当たらない。
『琥珀さん?』
1人で、どこかに行ったのか?
探しに行こう。
と、
『あ…』
ベッドの下に、琥珀さんがいた。
まだ寝てるのか…
多分、落ちたんだろう。
だから言ったのに…
起きる時間まで、残り10分を切っている。
もう起きよう。
床に転がっている琥珀さんを、ベッドの上に乗せていると。
『落ちちゃったの?』
茜さんが起きていた。
『みたいですね。』
茜さんは、くすくすと笑っていた。
『ん、んんー』
琥珀さんも、目が覚めたようだ。
『甘ちゃん?』
『琥珀、ベッドから落ちてたよ?』
『ふぇ!』
琥珀さんが、恥ずかしそうにした。
それで恥ずかしくなるのか?
もっと他にあるじゃん…
服がはだけてるし…
『おはよう。』
とりあえず朝の挨拶を。
さて、今日は仕事だ。
気を入れ替えて、
頑張ろう。
朝食を食べて、剣士署へ行く。
46
準備をして、朝礼に。
と、
?
鬼塚さんと、
知らない人が、入ってくる
その人は、
銀色の髪に、青い目をした女性だ。
『ーーー?』
琥珀さんが、何かを言った気がする。
『今日からまた、新しい仲間が増える。自己紹介を。』
その子が、一歩前に出て、
『私は奏[カナデ]、よろしく。』
それだけを言った。
『・・・』
冷めた目。
少し怖い雰囲気がある。
でも、どこかで…
いや、違うか。
あの子は…
どうなったのかはわからないけど、多分、
ここには…
奏。
名前は違う。
苗字は、なんだろうか。
そんなことを考えていると、
目があった。
表情は変えない。
『何?』
『いえ、なんでもないです…』
こわっ!
違うな、間違いない。
奏さんは、別の隊に配属された。
朝礼が終わった。
さて、見回りに行こう。
『奏って人、なんか怖かったな。』
如月さんが言った。
『うんうん!めちゃ怖かった!』
桜乃さんも言う。
やっぱり怖いよね。
そんな話で盛り上がる。
今日も、特に何かが起きることなく終わる。
『最近は問題、起きてないなぁ。皆のおかげだろうか。』
『そうだな。これじゃただの散歩だぜ。』
『でも、平和になったならいいと思いますよ。』
平和になったなら、いいことだ。
『桜乃さんが入ったくらいから、かな。』
『もしかして、私のおかげ⁉︎』
『かもしれないですね。』
だけど、
なんか、嫌な予感がする。
多分、レインたちが原因だろう。
昨日も、一昨日もあの男が現れて、
捕まえられずにいる。
アイツがいつ、大きな事件を起こしてもおかしくない。
だけど、今の僕に止められるだけの力がない。
絶対に、止めないと。
そのために、強くならないと。
そんな僕を、あいつは今も見ているんだろう。
皆と別れて、
寮に帰る。
そして、寝る準備をする。
あっという間に、1日が過ぎていく。
もう、10時を過ぎた。
昨日はあまり寝れなかったし、
今日は、早く寝よう。
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眠ろうとした。
と、
ビービービー!
なんだ?
何かが大きな音を立てている。
〔緊急!緊急!幸鳥町4丁目にて、銃を持った男たちがいると通報あり!援護要請あり!第1隊は直ちに、向かってください!〕
!
何かが、起きた。
銃を持った男たち…
レインと、何か関係があるかもしれない。
第1隊は向かえと放送されたのなら、僕も行かないといけないだろう。
『2人はどうする?』
僕は訊いてみる。
2人は目を合わせたあと、
『…待っててもいい?』
そう言った。
2人とも不安そうだった。
その方がいいだろう。
『わかった、行ってくる。』
僕は1人で、寮を出る。
剣を持って、
『銅、行こう。』
皆も揃って、
その場所まで走る。
すでに、遠くから銃声が聞こえる。
そして、
暗闇で、誰かが戦っているようだ。
『うぐっ!』
数名の剣士が、怪我をしている。
相手は、
銃を持った男と、剣を持った男、ナイフを持った女がいる。
いや、もっといるのか?
よく見えない。
でも、行かないと!
『いくぞ!』
島田さんの声で、皆が走り出す。
と、
ドォン!
すごい銃声が聞こえたとともに、
『うああっ!』
また、剣士の1人が倒れた。
それでも、近づく。
!
剣を持った男が、こちらにくる。
『うっ!』
剣同士がぶつかる。
力が強い。
よく見えないが、
片目に包帯が巻かれている。
そして、
僕と同じくらいの年の子だ。
だけど、
強い。
一つ一つの攻撃が強くて、バランスを崩される。
少し離れても、
一瞬で差を詰めては攻撃をしてくる。
そして、
『っ!』
頬を、少し斬られた。
こちらも、攻撃を始めよう。
相手の攻撃を避けて、剣を振るう。
だが、
剣で防がれて、また攻撃をしてくる。
隙を見せないようにしないと。
剣を構えて、
背を低くして走る。
『はああっ!』
剣を振る。
避けられても追いかける。
『ちっ!』
相手の顔が、月の光に照らされた。
相手が、こちらを睨んだ。
!
相手が、フェイントをかけてきた。
間一髪、避ける。
けど、
またくる!
僕は地面を転がり、
足を狙って、剣を振る。
少し当たったが、避けられる。
もう一回!
振るった剣を反対に、もう一度振る。
剣同士がぶつかって、どちらも跳ね返される。
一度、後ろに下がって、
横に一回転して、勢いをつけて、
思いっきり剣を振る。
『やっ!』
キィーン‼︎
相手が、バランスを崩した。
チャンスだ!
と、
!
何か、嫌な予感が!
ドォン‼︎
その場にしゃがむが、
当たった!
『いっ!』
痛い。
これは…
銃を持った男が、こちらに銃口を向けていた。
ショットガンか…
あの男が弾丸を一瞬で入れたあと、
またくる‼︎
僕は走る。
『お前の敵は、俺だ‼︎』
如月さんが、あの男に斬りかかった。
あっちも、気にしておかないと。
剣を持った男は、こちらに走ってきていた。
もう、立て直したのか。
『せあっ!』
剣を振るう。
何度も何度も、剣を振るう。
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終わらない。
何度も振っては防がれて、振られては防いで避けて、銃で邪魔をされて、少し斬っては少し斬られた。
はぁ、はぁ、
体力的にも、かなりきつい。
一体、どれくらいこうしていたんだろうか。
向こうも、あっちでも、苦戦しているようだ。
けど、まだ終わらない。
『っ、りゃあ‼︎』
剣を振るう。
相手も少しずつ、動きが鈍くなる。
が、
『みんな、終わっちゃえばいいのに!』
剣を持った青年が言った。
殺気は消えない。
また剣を振るわれて、
剣で防ぐ。
腕が、痛い。
何度も、攻撃を防いだ。
少しでも力を抜いたら、剣を落としてしまいそうだ。
でも、避けられるほどの体力も少ない。
でも、攻撃がくる。
避ける。
そして、僕が剣を振る。
と、
『日本人ハ、ザコばかりダナ!』
バン!
銃を持っていた男が、こちらに撃ってきた。
さっきの銃じゃない。
あと、
どこに銃があるんだ?
男が、ハンドガンらしきものを指で回し、
バン!
バン!
バン!
ありえないところから撃ってきた。
『うぐっ!』
いつ撃ってくるのかが予想できない。
避ける暇もない、
!
気づけば、
あの男の相手をしていた如月さんたちが、倒れていた。
『クソッ!』
如月さんが這いつくばりながら、男に近づいていく。
如月さんが、倒された?
嘘、だろ…
だけど、
気を抜いていられない。
バン!
腰ベルトに戻された状態から、こちらに撃ってきた。
足に当たる。
やられたっ!
そして、
青年が、空中にいた。
キラリと剣が輝いて、こちらに迫ってくる。
僕は、剣を投げ捨てて、
銃を持った。
そして、撃つ!
バン!
腕に当たる。
青年は、剣を落とした。
が、
バン!
あっちの男が、
僕のもう片足に向けて撃ってきた。
避けたはずだった、
でも、避けた先で当たった。
予測されたのか?
立っていられず、その場に倒れた。
そして、
銃を持った男が、こちらに歩いてきた。
『残念だったナ。ま、少しはマシだったガナ!』
コイツは、
外国人か、
特に強かった。
また、銃をくるくると回して、
っ!
僕の頭に、銃口を突きつけた。
『あっ、ああ…っ』
殺される、
死ぬのって、こんなに怖かったんだ。
『ぁ…ぁぁっ………』
怖い。
でも、
あの2人が、ここにいなくてよかった…
僕は、目を閉じた。
死にたくない…
怖いよ…
・・・
バン!
『はははっ!』
俺は、身体をそらせている。
そして、
笑った。
『どっちが先に死ぬかな?殺せるのなら、俺を殺してみろよ。ただ、俺もそう簡単に死ぬつもりはないけどな!』
俺は外人に、銃口を向けた。
『ふっ、面白い奴ダナ!そうこなくっちゃナ。』
俺も外人も、それぞれに銃口を向けている。
『いい銃を持っているナ。コイツは、素人には扱えないものダ。ま、俺様のもそれなりのだガナ。』
リボルバーか。
バン‼︎
2つの銃声が重なった。
そして、
2つの弾丸がぶつかりあった。
『なるほどナ。オマエが、一匹狼カ。日本人のくせに、なかなかやるじゃないカ。』
『お前も、かなりいい腕だ。久しぶりに、死ぬかと思ったぜ。』
外人が、銃を下ろした。
『気に入っタ!俺様に取っテモ、お前はかなりの腕ダ。ここで殺るのはもったいナイナ。』
外人が、去っていく。
剣を持っていた青年は、こちらを見下ろしたあと、去っていった。
俺は笑っていた。
ザーッ
『っ!』
痛い。
けど、
さっきの人たちは去ったようだ。
『おい!大丈夫か!』
誰かが来た。
けれど、
もう、何も見えない。
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目が覚める。
『・・・』
『・・・』
花咲さんがいた。
そして、
『うぅっ…』
琥珀さんと茜さんが泣いている。
『可哀想に、泣いてんぞ〜』
『ごめんなさい…』
花咲さんが、ジト目で見てくる。
『アタシにじゃなくて、2人に言った方がいいよ?』
『……ごめんなさい、』
2人に、心配かけちゃったかな。
『んで、結構ヤバかったんだって?めちゃつよだったって聞いたけど、』
本当に、強かったな…
『はい…』
なぜ、去っていったのかがわからない。
確実に殺されるはずだった。
なのに、その間の記憶がない。
『他を見てくるから、怪我、治るまで大人しくしててね〜』
『はい…』
花咲さんが行ってしまった。
『ごめんな…』
琥珀さんと、茜さんの頭を撫でる。
『甘ちゃんが無事なら大丈夫だよ…』
大丈夫ではなさそうだ。
ほとんどの傷は、それほど酷くはない。
でも、両足はかなり痛む。
治るのに、歩けるようになるのにどれくらいかかるだろうか。
移動は松葉杖を使って何とか歩いて、
1日、ベッドの上で寝転がっていた。
dream of memory.6
ー『私の名前、決めてくれた?』
学校に着くと、あの子がすぐに訊いてきた。
名前は、決めている。
だけど、どうなんだろう。
銅色のことも琥珀という石も、詳しくは知らない。
そして、この子も、
人狼。
だから、この名前は…
あまりにも酷すぎる。
そう気づいたのは、朝だった。
学校に着くまで、他の名前を考えていた。
けど、何がいいのかなんてわからない。
だから、
『人間。それがお前の名前だ。』
この子も、普通の人間なんだ。
だから、それでいい。
『にんげん?………やだ、』
やだ、か。
え?
『おい!ふざけんなよ!一生懸命考えたんだぞ!』
まぁ、俺も人間という名前をつけられるのは嫌だけど…
『他のがいいな…』
他って言われても…
それこそ‘わから.ない子‘だぞ?
あ、
あの時見た花の名前、
たしか、
『桜。』
思い出した。
これなら、いいだろう。
『甘ちゃん、何か隠してるよね?』
『え?』
ば、バレてたのか⁉︎
って、
『おいおいおいおい!なんだよ甘ちゃんって!俺のことを言ってるのか?甘もちゃんも似合ってないだろ!』
『似合ってるよ?そう呼んじゃ、だめ?』
『ダメだ。』
明らかにおかしいだろ!
『それより名前。何かあるんでしょ?教えてよ。』
勘のいい奴め。
絶対嫌がるだろうに…
『銅.琥珀[アカガネ.コハク]。銅色の銅でアカガネ、琥珀という石から取ってコハク。でも嫌だろ?だから、もう少し考えさせてくれ。』
『どう?あかがね?こはく?』
あの子の頭の上に、クエスチョンマークが見える…
気がする。
『銅はお前の髪みたいな色で、漢字だとアカガネとも言うらしい。琥珀はお前の目みたいな色の石のこと。…お前のこと、考えてなかった。嫌だよな、そんな名前。』
俺も、自分の髪と目が嫌いだ。
それなのに、しばらく気づけなかった。
他人のことになると、どうでもよくなってしまう。
それが、
最低な、俺だ。
『カッコいい、その名前がいいな。』
『え?』
『あかがね、こはく?がいいな。』
あの子は、目を輝かせていた。
『本当に、いいのか?』
『うん!』
あの子が、嬉しそうにしていた。
『そうか。』
本当に、それでいいのかな。
わからない。
『私のために、素敵な名前を考えてくれてありがとう、甘ちゃん!』
甘ちゃんって呼ぶなと言ったのに…
なぜか、嫌な気持ちにはならなかった。
俺は呆然としていた。
あの子が見せた笑顔。
心が暖かくなる。
この子の笑顔を見ていたいと、
思うようになった。ー
第二章.END