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おんりーの心臓が、耳の奥で暴れていた。
ドクン
ドクン
ヘッドホン越しに聞こえる自分の呼吸がうるさい。
「……え?」
やっと出た声は、情けないくらい小さかった。
通話の向こうで、ぼんさんが少し笑う。
「そんな驚く?」
「いや、だって……」
言葉が続かない。
配信じゃなくて。
二人で。
頭の中でその言葉が何回も反響する。
ぼんさんは少し間を置いてから、軽い声で言った。
「なにぃ?
、嫌?」
その一言に、おんりーの背筋がびくっと跳ねた。
「ち、違います!!」
反射的に声が大きくなる。
「嫌とかじゃなくて!その…!」
言葉がまとまらない。
焦れば焦るほど、口が回らない。
ぼんさんがくすっと笑った。
「落ち着けって」
その低い声が、妙に近く感じる。
おんりーは思わずヘッドホンを少し押さえた。
耳が熱い。
「……じゃあ来週あたりどう?」
「来週?」
「オフの日あるだろ」
当然みたいに言う。
おんりーは必死にカレンダーを思い出す。
配信予定。収録。編集。
「あ……あります」
「じゃあ決まりな」
「え、そんなすぐ!?」
また笑われた。
「なんでそんな焦ってんの」
「焦ってないです!」
「めっちゃ焦ってる」
完全にからかわれている。
けど――
おんりーは机の端をぎゅっと握った。
嬉しい。
嬉しすぎて、逆に怖い。
ぼんさんはしばらく何も言わなかった。
通話の向こうで、キーボードを叩く音が少し聞こえる。
そして、ぽつりと。
「さ」
「はい?」
「さっきさ」
声が少し低くなる。
「配信中言ってたじゃん」
「……?」
「俺とやると楽しいって」
おんりーの心臓が止まりそうになる。
「あ……」
しまった。
忘れてた。
いや、忘れようとしてた。
「……あれ、本音?」
低い声。
冗談っぽく聞こえるのに、
どこか真面目な響きが混じっている。
おんりーは何も言えなかった。
本音だ。
むしろ本音どころじゃない。
好きだから。
一緒にいると、楽しくて仕方ない。
でもそれを言ったら――
終わる。
おんりーは唇を噛んだ。
「……本音です」
小さな声。
数秒、沈黙。
そして。
ぼんさんが、静かに笑った。
「よかった」
「……え?」
「俺だけだったらどうしようかと思った」
おんりーの思考が止まる。
「……なにがですか」
ぼんさんは少しだけ息を吐いた。
「いや」
少し照れたみたいな声で。
「おんりーと遊ぶの、俺めっちゃ楽しみなんだよ」
ドクン。
「配信じゃなくても」
ドクン。
「普通に会いたいなって」
ドクン。
おんりーの胸が痛いくらい鳴る。
「……ぼんさん」
声が震える。
そのとき。
ヘッドホンの向こうで、ぼんさんがふっと笑った。
そして、少しだけ意地悪な声で言った。
「なあ、おんりー」
「はい…」
「お前さ」
一瞬の沈黙。
「俺のこと好きだろ」
――――時間が止まった。
おんりーの脳が完全にフリーズする。
「……え」
呼吸が止まる。
「ちがう?」
ぼんさんの声は、やけに落ち着いていた。
おんりーの手が震える。
キーボードの上で、指先がかたかた揺れる。
言い訳しなきゃ。
誤魔化さなきゃ。
でも。
声が出ない。
沈黙。
数秒。
十秒。
そして――
おんりーの目から、ぽろっと涙が落ちた。
「……言うつもりなかったのに」
かすれた声。
ぼんさんが黙る。
おんりーは笑おうとした。
でもうまく笑えない。
「……バレたら終わると思ってた」
静かな通話の中で、
ぼんさんが、優しく言った。
「なんで終わるんだよ」
おんりーは震える声で答える。
「だって」
一度息を吸って。
「ぼんさん、優しいから」
「……?」
「断るの困るじゃないですか」
少し沈黙。
そして。
ぼんさんが、小さく笑った。
「おんりー」
「はい…」
「俺さ」
低い声。
でもどこか真剣で。
「優しいから誘ったと思ってる?」
その言葉に、
おんりーの心臓がまた跳ねた。
ぼんさんが続ける。
「残念」
一瞬の間。
「普通に好きだから誘った」
――――完全に思考停止。
おんりーの頭が真っ白になる。
通話の向こうで、ぼんさんが笑う。
「だからさ」
少し優しい声で。
「来週、デートな」
おんりーの呼吸が止まった。
「……デート?」
「うん」
軽く言う。
「嫌ならやめるけど」
おんりーは即答した。
「嫌じゃないです!!!!」
声が大きすぎて、自分でびっくりする。
通話の向こうで、ぼんさんが爆笑した。
「声でか」
「だ、だって!!」
顔が真っ赤だ。
ぼんさんはしばらく笑ってから、
優しい声で言った。
「ほんとかわいいな」
その一言で、
おんりーのHPは完全にゼロになった。
「……ぼんさん」
「ん?」
「今日、寝れないです」
ぼんさんがまた笑う。
「俺も」
静かな深夜1時半。
二人の通話は、まだ終わりそうになかった。
はい、早いですね、すいません
終わりまーす