アクアside
朝食を作ろうと、キッチンに向かったまでは良かった。リビングのテーブルに置かれた1冊の本を見つけてしまったのが運の尽き。
ルビー)お兄ちゃん、どうしたの?
いつの間にか起きていたルビーに声を掛けられ、バッと振り返る。勢いが強かったのか、少しだけふらついた。
アクア)こ、これ……
ルビー)っ!
ルビーが後ずさるのを見て、これがルビーの私物だと気がつき、流石に目眩がした。
アクア)姫、アク…?
混乱したまま、取り敢えず中身を見ることにした。パラパラと流し読みするが、どれも表現が過激で、17歳が読むものじゃないと思った。R規制はないか。
など思っていると、ルビーに取り上げられた。いや、ルビーの私物だから『取り返された』が正しいのか。
ルビー)お、お兄ちゃんのエッチ!
アクア)お前の方がエッチだろ!
あ、妹にエッチって言っちゃった。もうムリ、刑務所行く…。
ルビー)そ、それより、今日はララライの方で稽古するんでしょ!?早く行かないと遅刻するよ!
アクア)まだ遅刻する時間じゃねぇし、これから姫川さんにどんな顔して会えば良いんだよ!
ルビー)ちょっと待って、今のセリフ使えるじゃん!メモしなきゃ!
アクア)なんなのコイツ…怖いんだけど……
なんで朝っぱらから喧嘩しなきゃいけないんだと思っていると、誰かからメールが届いた。
アクア)あ、ミヤコさんからだ
スマホにパスワードを入力し、メールの内容を確認する。
『車で送れそうだから、乗っていかない?』
タイミングが良いのか悪いのか、スタジオに向かう 時間が早まった。
『乗る。準備するから待ってて』
スマホを電源を落とし、早速準備を始める。ルビーは不思議そうな顔をしているのを見て、あの本の話はなかった事にして話しかける。
アクア)ミヤコさんに送ってもらう事になったから、行ってくるから、朝食は自分で作っとけ
ルビー)うん、分かっ……
何故か途中で言葉を止めるルビーに、何故か嫌な予感がした。
ルビー)待ってアクア、私も行く!
アクア)は?
ルビー)姫アクの神様がそう言ってる!だから私も連れてって!
アクア)…分かった。ミヤコさんにも伝えとくから準備しろ
言いたいことは色々あるが、もう諦めた。
案の定、ミヤコさんは呆れた顔をしていた。
ミヤコ)全く、いきなりルビーも行くなんて……
ルビー)えへっ☆
ルビーはターンしてからピースをした。しかもウィンク付きで。無駄な動きが多いな……。
そのポーズやめろ。可愛いから。
ミヤコ)はぁ…連れていかない理由もないし、良いわ
ルビー)やったー!ありがとうミヤコさん!
そう言いながら、ルビーはミヤコさんに抱きついた。女性の距離感ってアレが普通なの?近すぎないか?
ミヤコ)調子に乗らないで、早く行くわよ
ルビー)はーい!
後部座席に座り、シートベルトを締めながらミヤコ さんに話しかける。
アクア)ミヤコさん、ルビーに甘いんだから……
ミヤコ)アクアも人の事言えないでしょ
アクア)……
ミヤコ)分かりやすく視線を逸らさないで頂戴
どっちもどっち、ってヤツだな。
ルビー)お兄ちゃん、ララライではどんな感じ?
台本をチェックしていると、さっきまで窓の外の景色を見ていたルビーが話しかけてした。なんだ、景色 見るの飽きたのか。
アクア)いきなりなんだ。姫川さんとは何もないぞ
ルビー)そうじゃないもん!妹としてお兄ちゃんの事は色々知りたいって思うわけ!だからどんな様子かを聞きたいだけであって決して良いネタがないかを模索してるとかないから!分かる!?
アクア)そんな饒舌に喋られると、逆に怪しいけど
ルビー)もう!お兄ちゃんのバカー!
アクア)いてっ…人の頭をいきなり叩くな!
ルビー)お兄ちゃんのせいじゃん!
しかとコイツ、グーで殴りやがった。お前が思ってるより痛いんだから気をつけろよ…若干涙目になってるのは気のせいだと思いたい。
ミヤコ)2人とも、車内で喧嘩しないの!
アクア)はい…… ルビー)はーい……
ミヤコ)ほら、着いたわよ
アクア)ありがとう、ミヤコさん
ミヤコ)頑張ってね
優しく頭を撫でられ、少し恥ずかしくなる。もう高校生なんだから、そんな子供扱いしなくて良いってば。
アクア)うん
ルビー)お兄ちゃん、行ってらっしゃい!
アクア)はいはい。行ってきます
アクア)あれ、姫川さん?
何故か姫川さんがいた。誰かを待ってるのかと思ってたら、俺に向かって歩いてきた。
姫川)おはよう
アクア)お、おはようございます
どうやら、誰かと待ち合わせをしている訳ではない らしい。じゃあ、なんでここにいるんだ?最近は気温が高くなってるから、エアコンが効いてるスタジオにいれば良いのに。
アクア)姫川さんはどうしてここに?
姫川)稽古場が変更になったんだよ。って言っても少し場所がズレたくらいだけど
アクア)そうだったんですか
そこでふと違和感に気付く。姫川さん、さっきから 後ろを見てないか?
姫川)そっちにいるのは、妹さん?
ルビー)はい!初めまして、アクアの妹のルビーです!
姫川)元気で可愛い子だな
ルビー)えへへ、ありがとうございます!
ダメだ。女好きがここでも現れてる。ていうか、なんでルビーは俺に着いてきてるんだ。ミヤコさんはどうした。
アクア)姫川さん、人の妹にナンパしないで下さい
姫川)ナンパじゃない。本当に可愛かったから褒めただけだ
アクア)……
納得いかないと思いつつ、それ以上口出しはしなかった。姫川さんの女好きは今に始まったことじゃないし、ルビーの前で愚痴を言うのもな。
姫川)なに、何かファンサして欲しそうじゃん
ルビー)ファンサ……してもらっても良いですか!!!!!
姫川)良いよ。要望はある?
ルビー)あります!姫アク下さい!
アクア)……
何言ってんのコイツ!?
姫川)姫アク…あぁ、あれか
ルビー)あれです!
『あれ』で通じるのか?最近の流行なのか?今度メム辺りに聞いてみるか。
姫川)初めて要望されたから分からないけど、やってみる
ルビー)やったー!
アクア)姫川さん、正気ですか…?
姫川)役者でも、ファンの要望に応えるのは当然だろ。ほら、来いよ
姫川さんはそう言い、俺の腰に手を当てながら、腕を引っ張った。
アクア)うわっ
バランスを崩したが、姫川さんに支えられ、首元に 口付けられる。
アクア)んっ……
姫川)俺から離れるなよ
ヤバい。変な声出た。目の前でルビーが見てると思うと、急に恥ずかしくなる。良く考えてみれば、こうなったのはルビーのせいだけど。
姫川)はい。セリフ勝手に考えちゃったけど、大丈夫だった?
ルビー)ふぇぇぇ…ありがとうございます!
満面の笑み。お前だね幸せそうにしやがって…。なんで今日は不幸続きなんだ。
姫川)ん。それじゃ、そろそろ行くぞ
アクア)……はい
姫川side
星野の妹と別れ、スタジオに向かって歩く。それにしても、姫アクか。最初聞いた時は何か分からなかったが、なるほどな。異母兄弟である星野に対して思うのはアレだが、中々に可愛い反応をしてくれた。たまにはああいうのも……
姫川)悪くないな
アクア)姫川さん、何か言いました?
姫川)いや、何も。早く行くぞ、アクア
下の名前で呼ぶと、アクアは驚いた顔をしていた。妹がいるなら、苗字で呼ばなくても良いだろ。
終わり
コメント
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いいぞ、姫川もっとやれ、!
ご飯八杯食べた、良いおかずになりました
面白いし、かわいいし、最高