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昼休みの終わり、教室の窓際の席に座りながら、僕はぼんやりと空を眺めていた。青い空に薄い雲が流れていて、いつもと同じ平和な風景だ。
でも、視線を少しずらした先にいるちぐは、なんだか最近いつもと違う。
前はもっとくだらないこと話して笑ったりしてたのに、最近のちぐは休み時間も静かで、スマホを眺めてる時間が増えた気がする。笑ってるけど、それが本物かどうか、少しわからないときがある。
「ちぐ、どうしたんだろう」
心の中でそう呟く。別に、僕が病んでるわけじゃないし、暗い気持ちでもない。むしろ最近は落ち着いてて、穏やかな気分で過ごしてる。だからこそ、余計にちぐの変化に気づいてしまうのかもしれない。
ノートを広げながら、僕はちらっとちぐを見る。あいつは──いや、ちぐは──今日も窓の外を見ていた。目はどこか遠くに焦点を合わせているようで、教室のざわめきの中に一人だけ取り残されてるみたいに見える。
声をかけようか迷った。
そして、見てしまった。
ちぐ、腕怪我してるの…??
「元気?」って軽く言えばいいだけかもしれない。でも、それを言うことで逆にちぐを追い詰めちゃうんじゃないか、なんて考えてしまう。僕は昔から、そういう一歩がなかなか踏み出せない。
ペン先をカチカチいじりながら、心の中で決める。
今はまだ何も言わなくて。無理に踏み込むより、ちゃんと見ていよう。ちぐが少しでも笑えたとき、そのタイミングで自然に話せたらいい。
「ちぐ、無理してないといいけどな」
小さく息を吐いて、ノートに視線を戻した。教室の時計の針が進む音だけが、やけに耳に残る。
そんな他愛もない日常の中で、僕はちぐの小さな変化に気づいてしまった。たぶん、このまま気づかないふりをすることもできる。でも、僕はそれを選びたくなかった。
明日はもう少しだけ、ちぐの隣で笑ってみよう。もしかしたら、それがちぐにとっての支えになるかもしれないから。