テラーノベル
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エレベーターを降りて右に曲がる。
真っ直ぐな通路の先、うちの部屋の前に…いや、隣の部屋の前に体育座りをしている男の子がいる。
「こんにちは、修一くん…だったよね?」
「あっ…こんにちは」
「どうしたの?鍵、無いの?」
「うん。持ってると思ったんだけど…」
「そっか。おうちの人はいつ帰ってくるの?」
「お母さん、お仕事でいつも6時くらいに帰ってくる…」
まだ2時間以上もあるんだ。
「…うちで待つ?」
「え?ううん、いいです」
9月とはいえまだ暑い。
「ここじゃ暑いでしょ?お隣だし遠慮しないで?お母さん帰ってくるまでうちにいなよ」
「でも…」
「修一くんが外で待ってるのを知りながら私、のんびりできないからさ。私のためにもお願い、ね?」
私のため、そういうことにすれば少しは気も楽になるかな。
「うん…じゃあ…」
修一くんは立ち上がる。
鍵を開けて入る。
うちもまだ誰も帰ってこないしね。
リビングに通し、
「今、麦茶入れるから座ってて」
「うん」
ソファにちょこんと座る。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
修一くんは一気に飲み干す。
「喉、乾いてたんだ」
「水筒、もう空っぽだったから」
恥ずかしそうにうつむく。
よかった。それであの暑い中、2時間は辛かったと思う。
隣に座るのも変かなとL字の斜めに座る。
「どうしようか?何か遊ぶもの…」
「だ、大丈夫です。別に…あっ、宿題してもいいですか?」
「偉いね!うん、どうぞどうぞ」
修一くんはランドセルを開けてプリントと筆箱を取り出した。
「ふーん。算数と漢字?宿題は毎日あるの?」
「はい」
漢字から取り掛かるみたい。
弟がいたらこんな感じなのかな?
「あの、なにか?」
「え?」
「笑ってたから…なにか変でしたか?」
「あっ!ううん、ごめんね。私に弟がいたらこんな感じなのかなって思って」
「お姉さんは妹なの?」
ん?あ、上にいるかってことかな?
「ううん。私は一人っ子だから。お兄ちゃんもお姉ちゃんもいないよ」
「そうなんだ。僕も」
また漢字を書き始める。
「そっか。じゃあ今から私のことをお姉ちゃんって呼んで?姉弟ごっこしようよ」
「え?…お姉さん…?」
「だめだめ、私はお姉ちゃん、て呼ばれたいの。はい、もう一回言ってみて?」
「…お姉ちゃん」
なんかいい!かわいい弟が出来た気分!
「うん!なぁに!?」
「あっ、ううん、呼んだだけ」
私が呼ばせたんだもんね。
「うん。なんでも言ってね!あっ、麦茶、おかわりいる?」
「あっ、はい。お願いします」
「ん〜話し方も変えようよ。もっと姉弟みたいにして?」
「む、麦茶ちょうだい、…お姉ちゃん」
「!うん!すぐ持ってくるね」
嬉しい!私は立ち上がり麦茶を注ぎにいく。
姉弟ごっこ、いいな。
それから漢字の書き取り、算数のプリントと宿題をする修一くんを見ていると、 それほど時間もかからず片付け始める。
「もう終わったの?」
「はい」
「早かったね。…あ、はい、じゃなくて、うん、ね。もっと慣れてくれなきゃ」
「!…うん」
18時は…まだ大分あるな。
「どうする?何かして遊ぶ?」といっても遊ぶ…か。何があるかな?
「…ゲームとか…ありま…ある?」
「ゲーム?うーん、古いのならあるけど…見に行く?」
「は…うん」
「じゃあ着いてきて」
コメント
2件
天才ですか✨️
うわ、めっちゃいい話やん…!最初から姉ちゃんスイッチ入りまくりの「私」が可愛すぎるわ。修一くんの「麦茶ちょうだい、お姉ちゃん」でこっちまでにやけたわ。隣の子を外で待たせられないって理由で家に入れて、しかも「私のためにお願い」って相手を気遣わせない言い回しが絶妙。一人っ子同士の姉弟ごっこ、この先どうなるんやろ。普通の日常がめっちゃ優しくて、心ほっこりしたわ🔥 続き気になる!