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その後、雑貨など色々見ていたが特に買うものは何もなかった。
そして、ショッピングセンターを出ようと歩く。
『痛っ』
カチッという音がして石が転がる。
飛んできた方をみると、こちらを睨む男がいた。
『帰れ。』
冷たく、そう言われた。
琥珀さんは僕の背中に隠れた。
ここで面倒ごとに巻き込まれるのは御免だ。
『もう帰る予定です。』
そう言ったが、
『お前らに生きる価値はねぇよ。』
『・・・』
これが、人狼の宿命なのか。
分かっていた。
食事の時も、服を見たり買ったりしている時も、バスの中でも多くの人から睨まれたり、不自然に距離をとってきたり、態度が悪かったり。
僕も琥珀さんも、悪いことは何もしていないのに。
『死にてぇの?』
琥珀さんが裾を強く握っているのが、怖がっていることがわかる。
男はポケットから折りたたみ式ナイフを取り出した。
まただ。
周りの人々も気づき、逃げるものもいれば、見に近づく人もいる。
若い男がスマホのカメラをこちらにむける。
2人の女がこちらに迷惑そうな顔をして何か話している。
柄の悪そうな男が『人狼なんてやっちまえ!』
と叫ぶ。
それに合わせて周りの人まで合わせて騒ぐ。
『俺も混ぜろ』と僕の対面に立つ人まで現れた。
誰も止めようとしない。
正直、もううんざりだ。
『失せろ』
僕も睨みつけ返し、冷たく言った。
僕は腰ベルトに手を当てる。
上着で隠れているが、そこに銃がある。
と、乱入してきた男がこちらに走る。
銃口を乱入してきた男に向ける。
そして引き金に手を当てる。
僕は顔のぎりぎりを狙って引き金を引く。
バン!
大きな音がすると同時に、男の頬に軽く傷ができる。
血が出ている。
が、男は止まらない。
覚悟を決めるしかない。
僕は男の額に銃口をむける。
と、
ほんの隙間に別の男が割って入る。
走っていた男は止まり、割って入った男を退けようとする。が、
すぐに顔色が変わった。
そのまま男は後退り、どこかへ慌てて走って逃げる。
ナイフを持っている男も、舌打ちをし、睨みつけた後どこかへ去る。
割って入った男がこちらを向き、
『大丈夫?怪我はないか?』
と訊いてきた。
僕は銃を下ろし、
『僕は平気です。』
と、言った。
『それは良かった。』
男は笑う。
僕のことを悪く思っていないようだ。
『助かった、ありがとう。』
そう言った。
『気にすることはない。私は幸の鳥島防衛剣士隊第1団所属、隊長を務める鷹也.真[タカヤ.シン]だ。私はこの島の安全を守ることが仕事だ。』
何を言っているのか半分くらいわからなかった。
幸の鳥島のなんだって?
『一匹狼君、君も剣士にならないか?君が目を覚ますのをずっと待っていたよ。』
一匹狼君……それって僕のこと?
剣士にならないか?まず剣士って何?
『えっと、一匹狼って何のことですか?後…剣士とは何ですか?』
わからないことは訊こう。
『一匹狼は君のこと、君は昔、よく一匹狼と呼ばれていたからね。』
・・・。
『銅甘です。』
『そうだったか!で、剣士は…この島の人々の安全を守る仕事だ。』
急に言われてもなぁ。
『君はかなり若いし、危険な仕事だ。でも、君ほどの実力があれは、多くの命を救えるはずだ。』
『昔の自分がどうだったかわからない、その…記憶喪失で、今はそんなに実力なんてないですよ。』
危険な仕事、先ほどのように武器を持っていたり、暴力を振るってくるような人を止めなければならないとすれば、自分の命にも関わるのだ。
『そうだったのか、でもきっとすぐに良くなるさ。んー、なってくれるなら、敷地内にある広い家に住むことができる。あと食事も無料で出る。あとは……』
・・・。
それに釣られると思っているんだろうか。
『ええと、やめとき…』
『もちろん、君専用の剣も無料で渡そう。』
そ、そうですか…
しつこい。
卑怯だ。
琥珀さんが怖がって背中に隠れたままだし…
『か、考えときますから!』
鷹也さんは嬉しそうだった。
そうして、ポケットから何かを取り出して、僕に差し出す。
…これは、
名刺だった。
『場所はここに載っている。私は外で見回りをしていることが多いが、君の決断を楽しみに待っているよ。』
ならない、と言いにくくなるからやめて!
鷹也さんは『また会おう』とトドメを刺して去る。
僕は、名刺を見る。
すごく真面目そうな顔をした鷹也さんが写っている。
・・・。
面倒事に巻き込まれた。
どうしよう、
『さっきの人、知ってる人?』
琥珀さんがヒョコっと顔を見せる。
僕は全力で首を振る。
知らない知らない!
琥珀さんは不思議そうな顔をしていた。
『さ、さて帰ろう。』
僕は出入り口へ歩く。
琥珀さんも付いてきた。
バスに乗り、近くのバス停で降りる。
少し歩き、家に着く。
部屋に入り、手を洗ったり着替えたりした後、ソファーに横になる。
2人に殺されそうになったことを思い出す。
そして。銃を撃った感覚が今も残っている。
琥珀さんがくる。
僕は起き上がると、隣に座った。
『横になる?』
琥珀さんが自分の太ももをぽんぽんと叩く。
『あ、いや、大丈夫。』
と、言ったが、琥珀さんは僕の身体を引いて、倒そうとする。
僕は、そのまま倒れる。
琥珀さんの太ももの上に、頭が乗る。
『甘ちゃん、疲れてるでしょ?』
そう言われ、頭を優しく撫でられる。
正直、かなり疲れていた。
身体が重く感じる。
上を向くと、琥珀さんの笑顔が見える。
眠い。
徐々に視界が狭まる。
『おやすみ、甘ちゃん。』
それを最後に。
気づくと俺は、扉の前にいた。
この先立ち入り禁止、と載っている紙が貼られている。
でも、その扉のドアノブをひねる。
扉を押すと開いた。
光が差し込み、眩しい。
風が俺の髪を揺らす。
俺は扉のあった先へ歩くと、1人の女の子が立っていた。
その後ろ姿を俺は知っている。
綺麗な10円玉のような色の髪が、揺れている。
女の子の後ろ姿は寂しそうで、誰かが慰めに来てくれるのを待っていたかのように、そこに立っている。
『ごめんね………。』
少しだけこちらに顔を向ける。
でも、よく顔が見えない。
頬にキラリと輝く何かが落ちていく。
それだけが見えた。
でも、それだけ言って、前を向く。
女の子は制服を着ている。
ここは学校だ。
前には小さな子でも登れてしまうほどの段差があるだけで、柵はない。
天井もない。
ここは屋上だ。
学校の屋上…
俺は嫌な予感がして、女の子の方に歩く。
『こないで、』
女の子が小さな声で言った。
俺は咄嗟に歩みをとめる。
女の子は段差の上。
段差の奥に、何があるのだろう。
俺の予想が当たらないことを願う。
俺は気付かれないよう、ゆっくりと近づく。
女の子はいつ向こうへ行ってもおかしくない。
間に合ってくれ!
!?
すると、急に強い風が吹く。
女の子の身体が少しずつ斜めになっていく。
俺は走って、手を伸ばす。
間に合え!
俺の手が女の子の手をとらえるが、
『ぐっ‼︎』
強い衝撃が、腕にかかる。
『いたぃ、』
女の子も同じなのだろう。
片腕だけで女の子を支える。
持ち上げられない。
少し動くだけで俺も落ちそうになる。
もう片腕で、落ちないよう支えているため、どうすることもできない。
良い方法を考えている余裕もない。
-と、
『何してんのー?』
後ろから声が聞こえてくる。
『ははは、バカがバカなことしてるよ!』
男の子の笑い声。
『ほら、楽にしてやるよ。』
ドスッ!
頭にとてつもない衝撃と痛み。
俺は、支えている手を離して
しまった。
女の子の方へ引っ張られる。
女の子をなんとか抱きしめる。
けれど、どうすることもできない。
浮いている。
そんな感覚があった。
上に、鉄パイプを持った男の子たちが、笑いながら見下ろす。
あいつらが憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイニクイニクイニク………
ドスッ!
強い衝撃が襲う。
『ああぁっ!!!』
意識が戻り、目を開け、上半身を起こす。
心臓の鼓動が感じられるほど、バクバクと動いている。
息は切れている。
僕は頭を抑える。
落ちていく感覚、いや、夢の全てが妙にリアルで、実際に体験したように思える。
あれは何だったのだろう?
『甘ちゃん…』
琥珀さんが僕を抱きしめる。
『大丈夫だよ、』
琥珀さんが僕を落ち着かようとしてくれたけど、しばらく落ち着けなかった。
あれは実際に起きたことだったのだろうか。
あの夢に出てきた女の子はほぼ間違いなく、琥珀さんだった。
自ら命を断とうとしていた。
ふと、新田先生が言っていたことを思い出す。
“琥珀さんが…自ら命を断とうとした時も助けてくれたとおっしゃってました。”
あの後助かったのだろうか。
4階ほどのところから落ちた。
下はコンクリートだった気がする。
・・・
気分が悪い、
頭が痛い。
落ちていた時、笑っていた男の子の1人が、鉄パイプを持っていた。
落ちる前、頭に強い衝撃と痛みがあった原因はあれだろう。
その時の痛みが、まだする気がした。
はぁ、はぁ、
息を整える。
『琥珀さん…ありがとう………』
お礼を言う。
おかげで少し楽になった。
『甘ちゃん、うなされてたよ。』
『・・・』
何も言えなかった。
『甘ちゃんが辛そうにしているのを見ると、琥珀も悲しいよ。』
耳元で聞こえる。
琥珀さんが片腕は抱きしめたまま、もう片手で、僕の頭を撫でる。
琥珀さんが僕から離れたがらない理由がなんとなくだけどわかった気がする。
僕が思い出せない記憶、その中に何があるのだろう?
それは僕たちが人狼である以上、辛いことばかりだろう。
そのほとんどを、琥珀さんは覚えているとしたら…
『辛いよなぁ…』
僕は、記憶を取り戻す必要があるのだろうか?
忘れているからこそ、僕は今の僕でいられるのかもしれない。
このままでいたいと思ってしまう。
夕食を食べる。
メニューは白飯、サラダ、コロッケと唐揚げを琥珀さんと半分こ。
その後は風呂に入る。
琥珀さんと…
『ひぃ!』
誰かに、肌を触られるのは慣れないな。
まず、琥珀さんとお風呂に入ること自体が、慣れないけどね、
そして、あっという間に1日が終わろうとしている。
僕はベッドの上で横になっている。
・・・
嫌な夢を見ないことを願う。
琥珀さんが隣で見つめてくる。
『もう寝る?』
琥珀さんが訊いてくる。
『んー」
家に帰った後、眠ったこともあり、まだそれほど眠くなかった。
『まだ眠らないのなら、もうちょっと話そ?』
琥珀さんが誘ってくる。
僕は頷く。
ベッドの端に並んで座る。
『その…うなされてた時、何かあったの?』
琥珀さんは、気にしてくれていたみたいだ。
『昔のことをほんの少しだけ、思い出したのかもしれない。』
『ほんと?』
実際にあったことなのかわからない。
あの高さ…無事では済まないだろう。
『わからない…』
琥珀さんは心配してくれている。
『覚えているところだけでも話してみて、』
どんなことがあったのかは鮮明に覚えている。
『夢で、僕たちは小さくて、学校の屋上にいた。』
琥珀さんは静かに聞いてくれる。
『琥珀さんがいて…屋上から落ちそうになって……』
琥珀さんは少し俯く。
内容上仕方ない、
『僕は助けようとしてた、琥珀さんの手を掴んで…でも、』
少し詰まるが、続ける。
『男の子に鉄パイプで殴られて…僕たちは、そのまま落ちていった……』
琥珀さんがまた、優しく頭を撫でる。
『辛かったね、でもだいじょうぶだよ、』
琥珀さんが優しい声で言う。
『これは、本当にあったことなの?』
琥珀さんは俯いていた。
けれど、少しの間答えは返ってこない。
『ちょっと違うかな。甘ちゃんも琥珀も、本当は落ちなかったよ。』
やはり、落ちてはいなかったようだ。
『でも、琥珀が飛び降りようとしていたのは本当のこと……甘ちゃんが手をとって助けてくれなかったら、琥珀は…ここにいなかったと思う…。』
僕も俯く。
本人から聞くと特に辛い。
僕は、琥珀さんの頭を撫でる。
琥珀さんは嬉しそうに微笑む。
『甘ちゃんのおかげで幸せを知ることができたの、本当にありがとうね。』
僕は今、幸せだ。
優しい人と話せる。
それがとても嬉しい。
ーお前なんか必要ない。見ているだけでイライラする。邪魔なんだよ、うざったい。お前なんか人間じゃない。ー
『うっ!ぐぅっ!』
頭の中で誰かの声が聞こえた。
『っ!』
頭を抑える。
考えたわけでもないのに…
あの痛みがする。
『甘ちゃん!ねぇ!大丈夫?』
うまく聞き取れない。
頭を握り潰されているような針を刺されているような、強い痛み。
耳鳴りがする。
誰かが呼んでいる。
琥珀さんではない誰かが呼んでいる。
『ー “ロウム” ー』
そのまま、地面に倒れる。
『ちょっと。ねぇ、起きて!』
身体を揺さぶられる。
でも、意識はなかった。
『狼無、』
『狼無!』
俺の嫌いな名前。
昔は狼に夢と書いてロウムと言われていたのに。
『またやったのね、』
母が言う。
いや、母のフリをしているだけの知らない人。
『何回すれば気が済むの?』
またか、
嘘ばかり。
『あなたのことを信じていたのに!』
まただ、
また嘘をついた。
くだらない。
『ちょっとこっち来い。』
向こうの椅子に座っている男が、冷たく言った。
父、そう言いたくもない。
向こうに行けばどうなるかわかっている。
『早く来い。』
行くしかない。
父は酒を飲み、新聞を読んでいる。
こちらを見ようともしない。
新聞を見ながら父は、
片手に、空になった酒の瓶を持つ。
俺は抵抗しなかった。
パリーンーーーガッシャーン!
本当はもっと恐ろしい音がした。
父が持っていた瓶は割れている。
額から、何かが垂れてくる
下を向くと、赤い液体が落ちて床が赤くなっていく。
『いいか?これが人を傷つけるということだ。人が傷つくと言うことだ。』
父が冷たい声で言う。
視界がぼやける。
倒れそうだった。
必死に耐える。
『お前なんか必要ない。見ているだけでイライラする。邪魔なんだよ、うざったい。』
父が吐き捨てるように言う。
・・・
嫌いだ。
お前らは本当の親じゃないくせに。
言いたいことは沢山あった。
でも、それを言っても無駄だ。
余計に酷くなるだけ。
『出ていけ、』
俺は何も言わず、出ていく。
『お前なんか人間じゃない。』
声が聞こえた。
うるさい。
ドアを閉め、
真っ暗な中、街灯の光を頼りにある場所へ歩く。
月が細く光っている。
外は静かで誰もいない。
そしてすぐに、目的の場所に着く。
公園。
子供にとって、一番と言える場所。
でも、今は真っ暗だ。
キィ…キィ…
ブランコの揺れる音が聞こえる。
風はないのに、
なんだろう。
近づいてみる。
ブランコに人影がある。
『だ、だれ?』
女の子の声がする。
もっと近づいてみる。
『ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…』
女の子がずっと謝っている。
この声、聞いたことがある。
『俺だよ。』
俺は声をかける。
『え?甘ちゃん?』
やはり、琥珀だった。
『何やってんだ、こんなところで。こんな時間に。』
今は夜の21時くらい。
普通、子供なら家にいるはずの時間。
『追い出されちゃって』
琥珀もか。
『甘ちゃんは?』
逆に訊かれる。
『俺もだよ』
そう言って、隣のブランコに座る。
『甘ちゃん、頭、ケガしてる、』
琥珀がこっちに来て頭を優しく撫でる。
『痛い、』
瓶で殴られた後だ、まだまだ痛む。
『あ、ごめんなさい…』
『そういう琥珀も、ケガしてるだろ?』
琥珀の片方の頬が赤くなっているように見える。
殴られたのだろうか。
学校でも殴られたりしているが…
指も傷だらけ。
『んん…』
琥珀が今にも泣き出しそうな声で言う。
『今日の夜は一緒にいよ?』
琥珀が俺の手をとってねだるように言う。
まぁ、1人になっても何もすることはない。
『あぁ』
返事をする。
視界がさっきから酷くぼやけている。
耳鳴りがして、琥珀の声が聞こえなくなっていく。
『ーーー?』
だめだ、何も聞き取れない。
ぼやける視界、その目に1人の人影が見える。
琥珀ではない。
遠い、けど身長は高い。
『だれ、だ、?』
息も絶え絶えに言う。
『ザーーーー』
わからナい。
コイツは、誰ダ。
二重にモ三重ニも見えル人影。
グネグネと揺れテいるように見エる。
視界が斜メニなっていク。
『囘唹㐂个屮0弖叵舛啝、』
なにヲいッてイるノか、ワカらナい。
わラッてイるよウだ。
ッ!
きヅくト、
ムネにナイフがサさッテイる。
『ばケ…モ、ノ…ガ』
イタィ、
『丫乂灬仆匚勹?』