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ある人間の昔の話

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ある人間の昔の話

1 - ある人間の昔の話

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2023年06月21日

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名無しのカルトは、孤児と言われ嫌われていた。産まれは北の海、両親は幼い身体に沢山の傷痕をつけてくれました。

煙草の火傷跡、打撲痕、切り傷、擦り傷、鞭で叩かれた時の蚯蚓脹れ、そして、一生癒えない心の傷。沢山の痛みを、傷痕を貰ったカルトは壊れても仕方ないような状態だった。

だがこのままではダメだと本能が叫んだ。死にものぐるいで家を抜け出した。靴も履かずに逃げ出して、走って、走って、走り続けた。足の痛みさえ分からない、けれど遠くへ逃げなければならないことだけは分かっていた。

それが二十七のことでした。

それから行くあてもなく彷徨い歩き、迷い込んだは海賊船。生憎気付かれなかった訳だが。その海賊船に揺られ島に着いた時、両親から自由になれたと思った。それからは色んな船に乗り込んで色々な島を見た。

未だに北の海からは出られなかったが、それでも良かった。自分がいた所とは違う景色を見られるだけで、それだけで良かったはずなのに。

また、”家族”を望んでしまった。

そんなオレはあれよあれよと流される間にドンキホーテファミリーに目を付けられた。

とは言っても高待遇でそこまで不穏な印象は受けなかった……のはその時だけで、オレをどうにか手中に収めようとしてくるドンキホーテ・ドフラミンゴは、狂気とも愛とも違う恐ろしさを感じた。

オレはその勧誘を毎日のように蹴り続けた。

それから二年後。

燃え盛る白い町、泣き叫ぶ人、殺された子供たちの死体、珀鉛病の子供、悲鳴、罵声、色々なものが混じり混ざってオレの目には、写っている。

これが二十九の時だった。そしてその時期に、オレはある少女を買った。この世界でオレが最も許せないことの一つである人身売買。

そのオークションに売り出された少女は、酷く脅えた目で、天竜人の卑劣な笑い声や上がっていく値段を考えないように耳を塞いでいた。

そんな姿にどうしても同情した。

『さあ1000万!!これ以上出す人はいませんか!!』

オークショニアの声が会場内に響き渡る。

『……1億』オレは気付いたら声を上げていた。

『なんと!1億ベリーでこの少女を買うと!!今度こそ、これ以上出す方はいませんね!!!では、1億ベリーで落札!!』

まあ今のオレにそんな大金払えるほど持っているわけなくて。かと言ってドフィから借りればきっとそれを言い訳にファミリーに手篭めにされてしまうことは明白だった。

だから、1億のルーキーの首を渡してやった。

『別に現金で払えとは言ってないだろ?』そう言うと奴隷商人は顔を引き攣らせながら『わ、分かりましたよ……っ』と言ってそそくさと立ち去った。

それから一ヶ月後、奴隷契約をした彼女を連れて旅に出た。というのは建前で、本当は奴隷として扱うつもりなんてサラサラなかったしすぐに本当の親元にでも返してやろうと思っていた。

『お前、名前は?』

『……百華』

『モモカねぇ……出身は?』

『えと、あの……ワノ国……』

『……は?ワノ国!?』

ワノ国は政府非加盟国で四皇の一人カイドウと光月おでんが亡き後黒炭オロチが悪政を働いており、尚且つ鎖国をしているため外から国内に入ることは難しく、国内から外海に出ようとした者は罰せられるはずだ。それをこいつも知っているのか、怯えているようだった。

『怖がらないで大丈夫だから、まずはゆっくり話してくれないか?』

『……気付いたら、ここにいたの』

『気付いたら?お父さんやお母さんに何か言われたりは?』

『んーん。……知らない男の人に、連れてかれて、はぐれたの…………』

なるほど人攫いか。確かに理にかなってはいる。年端もいかない子供を誘拐して売れば金になる。更にそれをオークションにかければオークショニアも儲かって、それを買った貴族やら天竜人はそいつらを奴隷やオモチャにして弄ぶことができる。クソみたいな循環。だから天竜人や貴族が大っ嫌いなんだ。

それよりこの先どうしようか。ワノ国の出身だと分かった今、簡単に返すことは出来ない。かといってこのまま二人旅してもいいものなのだろうか。

『……仕方ねぇ。アイツに、頼る……しかねぇよなぁ……』

正直借りを作りたくないオレとしては不本意なのだが、この幼い子を置いていく訳にも、オレと二人きりで旅に着いてこさせる訳にもいかなかった。オレみたいに、親を恨んで欲しくないから。━━━━━━━━━━━━━━━

『おい、ドフィ。居るか』

少しイラつきながら呼びかけると怒っているのが分かっているのかモモカの身体が少し震える。ああ、まさかあのクソ野郎と同じことをオレは……?

いや、まだ大丈夫。大丈夫だ。

『あ、あー……す、すまねぇなモモカ』

『私に怒ってるんじゃない……?』

『怒ってねぇ、怒ってねぇからな』

優しく頭を撫で、落ち着かせてやる。しばらくそうしていると頭上から声がかかる。オレの苦手なあの不安になる声が。

『フッフッフッ……お呼び出しかぁ?カルト』

『当たり前だろ。変な事言うな』

ドフィは遠征帰りなのか、血の付いた手袋を取替えながらオレに話しかけてくる。

本当にこの男の仕草の一つ一つが癪に障る。

『おい、子供の目の前で血なんて見せんじゃねぇよ』『あ?どうせ返り血なんだ。別にいいだろう?』

そんなことあるか。と反論したかったが流石にそんなこと言えばまた気持ち悪い甘い声で可愛いと言われるのが目に見えていた。

『……それで?おれを死ぬ程嫌ってるはずのお前が呼び出すぐらいだ。何か面白いネタでも拾ってきたんだろ?フッフッフッフッ……』

流石だ。気持ち悪いくらい俺の事を理解してやがる。『へぇ……オレのこと毎日遠くで見守ってるドフィには全部分かっちまうんだなァ』とたっぷりの嫌味を込めて悪態を付いたはずなのに『素直に『毎日オレのこと監視してて気持ち悪ぃ』って言えばいいのによ。そんな濁した言い方されたらおれは勘違いしちまうぜ?フッフッフッ……』なんて腕を掴みながら言われてしまうものだから本当に関わりずらい。

掴みどころがなくて、オレの隙を見逃さず、いとも容易く懐に入り込んでくる。本当に大っ嫌いだ。

『……オレとしては相当不本意だが、お前に頼みがある』本題はここからだ 。

『この子に……せめて、せめて人並みに生活できるような衣食住を与えてやって欲しい』

モモカの方を少しチラリと見やりながら頭を下げる。せめて人並みになんて予防線を張って、もし受け入れてくれなかったらオレはどうするつもりなのかさえ分からないまま必死に懇願する。

『オレは、オレはどうなったっていい。だから、この幼い子だけは……』

『……どうも気に食わねェな?ガキなんかおれの所にもいる。なのに何故わざわざそいつを優しく扱う?』サングラスで見えない目はきっとオレを見下しているだろう。そんな感覚がひしひしと伝わってくる。

『コイツは特別だ。何も知らない、親に愛されて育った純粋な心の持ち主だ。でもその心をオレ一人の影響で大人をトラウマになんてさせたくない。だから頼む……』

『………………はぁ、仕方ねぇなァ?テメェからの珍しい頼みなんだ、断れるわけねぇだろう』

『……借りは必ず返す』

『なら今ここでおれのファミリーにでもなっとくかァ?』『それはお断りだ』

オレの肩に手をかけようとするドフィの手を強くはらう。話が理解出来ているかは分からないが、一部始終を見ていたモモカに話しかける。

『よかったな。この……あー……いけ好かないヤツが住むところやら服やら食べ物をくれるってよ』

『……でも、なんか、この人嫌だ…………』

『……』

『ももちゃんは別に、カルトといっしょにたびしてても、いい……』

子供の直感というのはやけに当たりやすい。現にドフィはニセモノの家族のボスだ。でも、そんな子がオレのことを、選んだ。オレなんかいつクズに成り下がってしまうか分からないのに。

……あの許しがたい最低な親と同じになってしまうか、分からないのに。

『……大丈夫だ。オレはお前のことを見捨てたりなんかしない。だって、オレはお前の…………仮の父親、だからな』

そんな考えとは裏腹に口から出た言葉は、モモカを精一杯安心させるための『仮の父親』という言葉だった。オレは見捨てられてもいい。嫌われたって、憎まれたっていい。

仮でもいいから……親として、そばにいてみたかった。

『オレがお前を守るから。大丈夫だ』

頭を撫でると嬉しそうに笑うモモカの顔を見て、やっぱりオレはこの子を手放すことは出来ないと悟った。『おい、ドフィ。その子の衣食住の世話は任せたぞ。傷付けたらぶっ飛ばす』『おーおー、怖ぇなァ?』

そう言うドフィの口はやけに綺麗な笑みを描いていて、ゾッとした。それからオレはとある元MADS所属の男の家に盗みという名目で監禁されている子に会いに行ったり、またある時は日雇いで男娼として体を売ったりした。

早く金を集めて、さっさとモモカを自分一人の手で賄えるようにしないとと焦っていた。

このままドフィのところに置いておいたらモモカがどんな目に合うか分からなくて、恐ろしかったのだ。

そのせいでしくじった。

コラソン、いや、ロシナンテが海軍からのスパイというのは秘密裏に知っていた。ドジを良くするが、今まで自分の素性だけは明かさなかった。それのおかげで油断してた。

あの白い町で見た珀鉛病の子供、ローのことを連れてどうにか珀鉛病を治すための方法を探すのとドフィの元から抜けさせるために船を降りて旅をしていたらしい。けれどロシナンテが船を降りてから海軍船が追いかけて来なくなったのを不審に思ったドフィが色々していたらしい。

ロシナンテは上手くローのことを逃がせたらしいがきっとローと関わりがあったであろう小桜の命が危うい。

全速力でドフィの元へ向かったオレの喉は乾ききって、肺は酸素を取り込もうと一生懸命収縮を繰り返す。ドフィの元へ辿り着いた瞬間、冷たい視線が突き刺さる。

『……なんだカルト。お前もアイツと同じように裏切る気か?』

そう言う声には怒り、呆れ、そして、悲哀が含まれていた。

『違う。オレは小桜の安全を守ることをお前に約束して欲しいだけだ。絶対に手出ししないと誓って欲しい』

『へぇ、あのガキか。お前そこまでが執着する必要ねぇんじゃァねぇか?フッフッフッ……』

そう不敵な笑みを浮かべるドフィにさっきまでの恐ろしさは含まれていない。けれど、ドフィはどこかオレと自分を重ねている気がする。

『……それはアンタだって同じだろうが。ローに執着しやがって』

こんなに皮肉めいたことを自分で言っていることが信じられないが、どうせ同類なのだから今更だろう。『……まあ、その条件を飲んでやらんこともねぇがな。でもそのガキ一人のためにお前は何をかけるんだ?まさか何も無しで取引しようだなんて思ってねぇだろうなァ?』

『そういう所だけ目ざといヤツめ……いいぜ、何をかければテメェの気が済む』

さて、ここからどうするか。どうやってコイツの要求を出来るだけ引き延ばせるか。引き延ばせないとしてもどうやってモモカに危害が及ばないようにするか。どうせ一度借りを作ってしまった身、討論でドフィに勝てるはずがない。

なら当回しにする方法を考える。

『なら……お前の命をかけて貰おうか。ガキ一人の安全とお前の命の等価交換だ。悪くねぇ取引だろう?フッフッフッフッフッ!』

意外なことじゃなかった。ドフィはオレを手中に置いておきたい。手の届く、目の届く範囲で、出来れば忠犬になるよう手なづけたいという魂胆が見えすいていた。

きっとコイツにとってモモカはオレを手に入れるための道具に過ぎない。ならこのときオレができる最善の判断は。

『……それでアイツの命が守れるなら。オレはテメェに嫌々ながら尽くしてやる』

ドフィの交渉を受け入れることだった。

尽くしてやる、という文言を添えて。

『交渉成立だ。ファミリーの一員になったからには、簡単に逃げられると思うなよ?逃げたらあのガキを殺すからな』

『コレだけで弱みを握った気になるなよ。いつかお前をぶっ飛ばしに来るやつが現れるからな』













↓この下男主設定






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カルト

名前は気に入らなくて隠しているだけで本名はある。(ガルシア・カルト)

貴族の生まれだが、両親から虐待を受けた過去があり今はハートの海賊団の船員。身内には優しいが、言い寄ってくる女や面倒くさい大人は嫌い。

特に天竜人と権力を振りかざす貴族が大嫌い。

百華と好みの男に対してはすごくデレデレ。

好きな食べ物はシャンクフード、嫌いな食べ物はコース料理などの高い料理。

基本微笑むことが多く、大口で笑うことは少ない。

身長214cm。好みの男が多いせいで浮気だと言われる事が多々ある。一夫多妻制はいいなと思っている。

悪魔の実を食べている。

隠し名・ネモ ネモとは、誰でもないという意味。

偽名・伊吹狩兎

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