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「おっ、はっ、よー!」
朝からテンションの高い雲善(うんぜん)。
「おぉ、おはよー…」
と顔を一瞬見て、上唇にホクロがあるのを確認して
「雲善(うんぜん)」
と言った。ワイヤレスイヤホンを外す名良(なら)。
「名良(なら)、おはよ」
と爽やかで落ち着いた声もする。後方に風善(ふうぜん)がいた。
「おぉ、風善も。おはよ」
双子でここまで違うものかと思う名良(なら)。
正門から敷地に入り、下駄箱で上履きに履き替え、名良と雲善(うんぜん)はC組に、風善はD組の教室へ入った。
「イサさん!おはよーございます!」
「あ、木扉島(ことじま)くん。おはよ。あ、紺堂くんも、おはよ」
「おはよ」
というのと同時に
まあ、転校してきて間もないし、雲善に双子の弟がいるなんて思わないよなぁ〜
と思った。
「イサさん、昨日放課後体力測定だったんですよね」
「うん。シャトルランやったよ」
「うわぁ〜シャトランか」
「イサさんサッカー部だったんですよね?何回でした?」
「48回?だっけな?」
「あ、意外と少ない」
「まだできたんだけどね」
「あぁ。めんどくさくてやめたパターンですね」
「ま、そんな感じ。紺堂くんは何回だった?」
「オレは…8…2、3?だったかな?」
「80回越えたんだ?!すごいね?!」
「いやいや」
と言っているとヨルコの前の席で鼻の穴を大きくし、鼻高々に聞いて欲しそうにしている雲善(うんぜん)。
「雲善(うんぜん)は何回だっけ?」
と名良(なら)が聞くと、待ってました!と言わんばかりに振り向いて、コホンと喉を整え
「えぇ〜、僕ですか?そうですね。ま、ざっと130回?うん。
ま、まだまだいけたんですけどね?みんなの体育の時間が?うん。長引いちゃうかなって」
とコッテリラーメンくらいカッコつけて答える雲善。
「130!?スゴっ!」
素直に驚くヨルコ。
「最後のほうはバスケ部サッカー部まみれでしたね。あ、テニス部もいたか」
「やっぱり体力が重視される部活ですもんね」
「そうなんですよ〜」
そんな話をしていると担任の先生が入ってきて朝のホームルームが始まる。
1時間目は世界史の授業。準備をし終え
ヨルコの席の近くに糸と嶺杏(れあ)が教科書とノートを持ったまま集まり話をしていた。
「ヨルちゃんってそーいえばどこ出身なの?」
「あぁ、たしかに」
女子の会話に
「たしかに気になるわ」
と雲善(うんぜん)も参加し、必然と教科書とノートを持った琴道(ことみち)と
席に座っている名良(なら)もその会話に半分参加していた。
「盗み聞き?」
「いや、盗むもなにも丸聞こえだから」
「で、ヨルはどこ出身なん?」
「あ、嶺杏(れあ)ちん、呼び捨てズルいぞ」
「ズルいって。そもそも呼び捨てじゃないし」
「私もヨルって呼ぼー」
「じゃあ私もヨルって呼ぼー」
声色を変えた雲善(うんぜん)の声。
「…」
「…」
教室は他の生徒たちで賑わっているが、ヨルコたちの周りは氷河期が来たが如く静かで
まるで吹雪いているように少し寒く感じた。
「じょっ、冗談じゃないですかぁ〜。で、イサさんはどこ出身なんですか?」
なぜか雲善(うんぜん)が話の舵を主軸に戻した。
「あぁ〜。えぇ〜…。イ」
「イ?」
「イギリス?」
「そ!イギリス!」
咄嗟に出た。
「おぉ〜英国夫人だ」
「イギリスか。きんいろでモザイクなイメージだけど」
と呟く琴道(ことみち)。
「え?エロい話?」
と近くにいた名良(なら)が小声で言う。
「あ、違う違う。アニメの話」
「へぇ〜イギリスなんだ」
と言いながらも全員
イギリスってピンク髪が地毛になるもんなの?
と疑問に思ったが、誰もそれを口にはしなかった。1時間目の世界史の授業が始まった。終わった。
そのまま4時間目まで授業が終わり、お昼となった。
「お昼じゃーい!ヨル、またこっちおいでよ」
「あ、うん。あ、奥田くん。またイス借りるね」
「あ、はい。逆にまたお借りします」
「どうぞー」
「あ、そうだ。恋弁(れんか)ちゃんも呼ぼーよ」
とスマホを出した糸に
「大丈夫なの?同クラに友達…」
と言いながら思い出す嶺杏(れあ)。
「いないって言ってたじゃん」
と言う糸。
「それもそうか」
「じゃ、LIME送りまーす」
とかいう話をしていると
「お邪魔しまーす」
と小声で言いながら風善(ふうぜん)が入ってきた。ヨルコは風善を見て
「あれ?」
と思い前を見る。そこには雲善(うんぜん)の後ろ姿が。
「あれ?」
また風善(ふうぜん)を見る。
「あ、ども。昨日振りで」
と風善に言われて昨日のことを振り返るヨルコ。
…
それはヨルコが転校してきて2日目。糸と嶺杏(れあ)が校内を案内してくれていた。
「で、逆サイドには図書室があります。私はあまり使いません」
「聞いてないね」
ヨルコが笑う。するとガラガラと図書室から人が出てきた。
「あ、木扉島(ことじま)くん」
とヨルコが呟くと「?」という顔をして、会釈して通り過ぎる木扉島(ことじま)。その隣には女の子がいた。
「え、かわい。誰?知り合い?」
「いや?知らない。あ、そうか」
などの会話が聞こえた。
…
「あぁ!あのときの女の子って」
と気づくと風善(ふうぜん)の後ろから、ひょこっと恋弁(れんか)が顔を出した。
「あの女の子?」
「そう!恋弁(れんか)ちゃんだったんだね!昨日の」
「あぁ、図書室の前で会ったやつ?」
「そうそう」
「あぁ〜…」
と納得したものの恋弁(れんか)の前の男子の処理がまだである。
「えっとぉ〜…」
「あ、どうも。兄がお世話になっております」
と落ち着いた声で、澄ました顔で軽く頭を下げる風善(ふうぜん)。
「お兄さん?」
風善(ふうぜん)の声で雲善(うんぜん)が振り返る。
「ふー!ちゃーん!」
ヨルコが前を向く。落ち着いていない、テンションの高く笑顔の雲善(うんぜん)。
「…同じ顔」
ヨルコが雲善(うんぜん)と風善(ふうぜん)を交互に見る。
「あぁ。オレたち双子なんすよ」
と言う雲善(うんぜん)。静かにコクリと頷く風善(ふうぜん)。
「あぁ、なるほどね。ヨルちゃんふーのこと知ってるのかと思ったけど、雲善と勘違いしてたのか」
と納得する恋弁(れんか)。
「あぁ、だからリアクションが」
と言いながらまた雲善(うんぜん)と風善(ふうぜん)を交互に見るヨルコ。
喋らずとも表情だけでもテンションの違いが明らかである。
「なんかいつもならテンション高いのにすごい静かだったから
どうしたのかな?って思いました。彼女さんの前でカッコつけてるのかなって」
「恋弁(れんか)が彼女?」
「雲善(うんぜん)が彼氏?」
「「ないない」」
とハモる雲善(うんぜん)と恋弁(れんか)。
「相変わらず仲良いよな」
と笑う風善(ふうぜん)。
「あ、風善(ふうぜん)くんだ」
「ほんとだ。しかも笑ってる」
「珍しー」
「相変わらずカッコいい」
同じ顔がクラスにいるのに、なぜか風善(ふうぜん)はイケメン扱いである。
「あ、恋弁(れんか)ちゃん、呼ぼうと思ってたんだ」
「そうなんだ。呼ばれる前に来てしまった」
「あっちに糸ちゃんと嶺杏(れあ)ちゃんいるから」
と糸と嶺杏(れあ)のいるベランダ側の席を見ると、糸が恋弁(れんか)に気づき、手を振っており
その糸を見て嶺杏(れあ)も振り返り「おっ」っという顔をしていた。
「じゃ、行こっか」
「うん」
一応、風善(ふうぜん)に軽く頭を下げて行くヨルコ。それに応えるように軽く頭を下げる風善。
「ふーちゃん!おいでおいで。お兄ちゃんのイスに2人で座ろ」
「嫌だよ。狭いし」
「狭いって点なんだ。嫌がるとこ」
と笑いながら言う琴道(ことみち)。
「たしかに」
と名良(なら)。風善(ふうぜん)はいない人の席のイスを
「すいません。お借りします」
と言って借りて雲善(うんぜん)の机にお弁当を置く。パカッっと蓋を開ける。
雲善と風善のお弁当の中身は2人の顔と同様、全く同じだった。
「おぉ。内容物同じ」
「ま、双子ですから」
となぜか誇らしげな雲善(うんぜん)。
「双子じゃなくてもお父さんと息子同じ弁当とか、兄弟同じ弁当とかザラにあるんじゃない?」
と冷静に言う風善(ふうぜん)。
「たしかに」
と納得する名良。
ま、お弁当箱(外見)は同じでも、中身全然違う例がまさに目の前にあるけど
と雲善(うんぜん)と風善(ふうぜん)を見ながら思う名良(なら)と琴道(ことみち)であった。
「へぇ〜!恋弁(れんか)ちゃん、木扉島(ことじま)兄弟と幼馴染なんだ!?」
卵焼きをお箸で持ちながら驚く糸。
「うん。そんな驚くこと?」
「いや、まあ。でもあの2人と幼馴染って…スゴいね」
「そお?別にそんなことないでしょ」
「あの2人だよ?架け橋役とか妬みとかあったでしょ」
「あぁ〜。あったね。特に雲善(うんぜん)」
「!?」
卵焼きを口に入れたまま、表情で驚く。ゴクンと飲み込み
「マジで?」
と言う。
「マジで」
「あれでしょ。静かより騒がしいほうがモテる頃でしょ」
とポテトサラダをお箸で掴んで冷静に言う嶺杏(れあ)。
「はいはい。あったあった。小学生くらいね」
「そうだね。雲善(うんぜん)のピークは小学生だったかな」
「ご愁傷様です」
「ま、顔は一緒だけどね。あ、きゅうり…ほい」
とこれまた冷静に言いながら、ポテトサラダの中のきゅうりだけを糸のお弁当箱に移動させる嶺杏(れあ)。
「きゅうり嫌いなの?しょーがないなぁ〜。糸ちゃんが食べたげる」
「あざす」
「中学…1?年かな?くらいからふーのほうがモテ出したね」
「わかるわかる。小学校高学年くらいで
落ち着いた男子のほうがカッコいいことに気づくのよね。ま、人によりけりだけどさ?」
「でも結局1軍と呼ばれる陽キャ組がモテるのよね」
「それな。女子も然り。イギリスでもそーゆーことあった?」
と急に球がヨルコに飛んでくる。
「え?…うぅ〜ん。まあ、そうだね。割と似たような感じかな?」
とテキトーをこくヨルコであった。
「ジャッ、ジャーン!」
雲善(うんぜん)がスクールバッグの中からサティスフィーを出す。
「お。雲善(うんぜん)も持ってきたんだ」
「そ。ふーが持ってきてるって知ったからさ?」
「あ、取ってくるわ」
と言って教室を出ていった風善(ふうぜん)。お弁当箱を置いてサティスフィーを手に戻ってきた風善。
「ということで〜。こないだできなかった4人同時対戦でございます!パチパチィ〜。はい拍手ぅ〜」
「おぉ〜」
4人、謎の拍手をする。ということで大騒乱スパイクファミリーズを4人でプレイした。
あっという間に昼休みは終わり、5時間目の授業へ。
「終わったぁ〜」
と背もたれにもたれかかる雲善(うんぜん)。パッっと振り返る雲善(うんぜん)。
「イサさん。今日も放課後は体力測定ですか?」
「うん。今日は持久走?」
「あぁ〜。じゃ、校庭か。何回回んだっけ?」
「…たしか1.5だから…7周半」
「そんな回ったっけ?」
「オレは6周半だけど」
「うわぁ〜名良(なら)悪っ」
「あ、女子は1キロなんだって」
「あ、そうか。じゃあ5周だ」
という話をしていると担任の先生が入ってきて、終わりのホームルームが始まる。終わる。
「起立」
生徒が立ち上がる。
「礼」
「はい。お疲れ様でした」
教室内が帰る支度をする生徒、教室を即座に出る生徒などで騒めき始める。
「さぁ〜て。オレ様は今日サッカー部あるんで」
「お。そうなんだ。じゃ、サティスフィー貸してよ」
という名良(なら)。
「ん?別にいいけど」
「あ、琴道(ことみち)ー」
「雲善(うんぜん)、名良(なら)、お疲れ。どーしたの?」
「ん?いや、今日、雲善(うんぜん)がサッカー部の練習らしいから
サティスフィー借りて琴道となんかやろうかなって」
「なるほどね」
「この後予定あった?」
「ないない。大丈夫」
「はい。サティスフィー」
と雲善が名良(なら)にサティスフィーを手渡す。
「さんきゅ」
と言っていると
「あ、兄ちゃん」
と風善(ふうぜん)が教室に入ってきた。
「お、ふー。ふーも今日バスケ部あるっしょ?」
「あるある。んでさ、汗拭きシート切れそうだから何枚か恵んで」
「別にいいけど?」
「あ、ふー。サティスフィー借りれない?」
「ん?別にいいけど?」
と風善がスクールバッグからサティスフィーを出して、名良(なら)に手渡す。
「ありがと」
そして琴道(ことみち)に手渡す。
「なんか2人でできるやつない?」
雲善(うんぜん)が汗拭きシートを数枚出しながら
「スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)4人でやったじゃん」
「ま、そうなんだけど。通信できるやつ」
「あぁ〜。スパファミはソフト1本だけだしな」
「だいたい2人でやるときはリビングでテレビに繋いでやるからね」
「そそ」
「あ、ワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)は2人とも入れてたはず」
「あぁ!たしかに!しかもダウンロード版じゃなったっけ?」
「あれそもそもパッケージ版あんの?」
「じゃ、2人でできるやん。スパファミもやって飽きたらワメブロやるか」
「いいね」
と楽しそうに話す男子。
「ヨル〜行くぞぉ〜」
とヨルコに近づく糸。その後ろには嶺杏(れあ)。
「じゃ、奥田くん、木扉島(ことじま)くん…」
と言ったところでその場に「木扉島」が2人いることに気づくヨルコ。
「雲善(うんぜん)くん、風善(ふうぜん)くん。紺堂くんも、また明日ね」
「はい。また明日」
「おぉ〜!イサさんに名前で呼んでもらえた!双子でよかった〜」
「兄が騒がしくてすいません。また明日もよろしくお願いします」
「うん。また明日ね」
ヨルコと糸と嶺杏(れあ)が教室を出ると恋弁(れんか)がいた。
「恋弁ちゃーん。恋弁ちゃんも持久走?」
「そ。一緒行こ」
「4人で行こー!」
と女子は更衣室へと向かった。