テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
K-Takasaka
343
#スクラッチャーズ
#スクラッチャーズ
K-Takasaka
143
#タイムループ
K-Takasaka
107
K-Tのカートは、何度アクセルを踏んでも動かなかった。
「Kさん、エンジンが止まってる!」
メバルが振り返る。
「問題ない」
「いや、今回は本当に問題あるよ!」
K-Tは無言でカートを降りた。黒いガラケーを取り出し、アンテナを伸ばす。警棒になったアンテナをエンジン部分へ差し込むと、内部から小さな火花が散った。
カートが一度だけ震える。
そして、後ろ向きに走り出した。
「直った!」
アオノが言った。
「逆方向にね!」
メバルがツッコむ。
K-Tはハンドルを切り、壁にぶつかりそうになったカートを無理やり旋回させた。車体は何度も跳ねたが、なんとか仲間たちの後を追い始める。
洞窟の出口では、六人を待ち構えていた無数のカートが一斉に動き出していた。
アイテム使用禁止区域。
つまり、武器も道具も、ゲームらしい攻撃も存在しない。頼れるのは運転技術だけだった。
「マサカゲちゃん、運転できるの?」
メバルが尋ねる。
「基本的な操作なら問題ない。加速、減速、旋回、ドリフト――」
マサカゲのカートが壁にぶつかった。
「……ただし、コースの幅が想定より狭い」
「それを運転できないって言うのよ!」
前方のコースは、山の斜面に作られた細い道だった。右側は岩壁、左側は深い谷。道の途中にはジャンプ台があり、その先には何もない空間が広がっている。
カキが目を輝かせた。
「ジャンプ台だ!」
「止まって!」
「こういうのは飛ぶためにあるんだろ!」
「飛んだ先に道がある場合だけよ!」
カキのカートがジャンプ台へ突っ込む。
車体が空へ飛び出した。
「うおおおおおっ!」
カキは楽しそうに叫んだ。
だが、その先に道はなかった。
「やっぱり!」
メバルも続いて飛び出し、空中でギターを抱えたまま悲鳴を上げる。
マサカゲ、アオノ、ミステーも次々とジャンプ台を越えた。
最後にK-Tが到着する。
K-Tは一瞬だけ谷を見た。
そして、何の迷いもなく飛んだ。
六台のカートが、青空の下を滑空する。
眼下には、雲の海が広がっていた。
「道がない!」
マサカゲが叫ぶ。
「風向きから判断すると、正面の雲が着地点の可能性が高い」
アオノが言った。
「可能性ってどれくらい?」
「二十八パーセント」
「低い!」
ミステーは空中でカートから立ち上がり、ピラミッドの被り物を押さえた。
「雲は柔らかい。落ちれば、きっと優しく受け止めてくれる」
「それ、ゲームの雲だからね! 現実の雲とは違うからね!」
六台のカートが雲へ突っ込んだ。
ふわり、と車体が跳ねる。
雲は確かに柔らかかった。
しかし、その下には道ではなく、巨大な空中迷路が広がっていた。
カートは雲を突き抜け、迷路の壁に沿って落下していく。
「これは落下ではない」
ミステーが言った。
「どう見ても落下でしょ!」
「空が下へ移動している」
「同じことよ!」
K-Tは落下中に防弾盾を取り出した。盾はアイテム扱いではないらしく、使用禁止区域でも動作した。
盾を車体の前に固定すると、カートの落下速度がわずかに下がる。
メバルもアコースティックギターを前に構えた。
「ギターで何とかならないかな!」
「楽器に空気抵抗を期待するのは非効率だ」
アオノが言った。
「じゃあ、何か作ってよ!」
「現在、工具がない」
マサカゲが下を見た。
迷路の最下層には、一本の道路がある。だが道の中央には巨大な矢印が描かれ、そこには「落下専用」と書かれていた。
「全員、着地地点を合わせろ! ばらばらに落ちると、迷路内で分断される!」
「どうやって合わせるの!」
「左へ寄せろ!」
六台のカートが空中で大きく揺れる。
カキは右へ寄った。
「カキ、左だ!」
「分かってる! 右へ行けばいいんだな!」
「逆だ!」
カキのカートがミステーにぶつかり、ミステーの車体が回転する。
「回転は、地球と同じだ」
「今そんな話してない!」
メバルがミステーのカートへ手を伸ばした。届かない。
そのとき、K-Tが防弾盾を外し、空中で投げた。
盾はミステーのカートに当たると、なぜか磁石のように吸い付き、二台を一時的に固定した。
K-T自身のカートは制御を失い、先に落ちていく。
「Kさん!」
メバルが叫ぶ。
「問題ない」
K-Tは落下しながら、ガラケーのアンテナを伸ばした。アンテナは警棒になる。K-Tは迷路の壁へ警棒を突き刺し、車体の向きを強引に変えた。
カートは壁を削りながら減速し、道路へ着地する。
衝撃で車体が跳ねたが、K-Tはすぐに立ち上がった。
「問題ない」
「二回も言うってことは、絶対どこか壊れてるでしょ!」
メバルたちも次々と着地した。
六台はなんとか同じ道路に集まった。
だが、道路の先には三つの分岐がある。
左は明るい花畑。
中央は巨大な歯車が回る工場。
右は、真っ暗なトンネルだった。
それぞれの入口に、看板が立っている。
『左:安全』
『中央:少し危険』
『右:非常に危険』
カキが右へ向きを変えた。
「またそれを選ぶの!?」
メバルが叫ぶ。
「非常に危険ってことは、何か特別なものがある!」
「学習して!」
マサカゲがカキを止めようとした瞬間、道路全体が突然傾いた。
六台のカートが、右のトンネルへ向かって滑り始める。
「ブレーキ!」
マサカゲが叫ぶ。
「ブレーキがない!」
アオノが即答した。
「そんなわけないでしょ!」
「ゲーム上、減速は壁への接触で代用する仕様だ」
「もっと早く言って!」
カートが次々とトンネルへ吸い込まれる。
暗闇の中で、無数の赤い目が開いた。
エンジン音が響く。
そして、トンネルの奥から巨大な看板が迫ってきた。
『ようこそ、落下コースへ』
ミステーが真面目に呟く。
「今度は、落ちることが目的らしい」
「目的にするなぁ!」
メバルの叫び声とともに、六台のカートは再び足場のない空間へ飛び出した。
コメント
1件
うおお第3話読み終わったよ〜!!😭💕 もう毎回メバルのツッコミが冴えわたってて最高すぎる!!「学習して!」には笑った(笑) K-Tさんの「問題ない」連発も逆に緊迫感あって好き…あとカキくんがマジで学習しないのウケるw 「非常に危険」に吸い込まれていく流れ、めっちゃワクワクした!!次どうなるんだろ…続き気になりすぎる!!🌸✨