テラーノベル
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唯、部屋に居られなかっただけ。
唯、静かすぎただけ。
唯、立ち止まりたかっただけ。
唯、置いていかれるのが厭だっただけ。
唯、ただ……寒いのが好きなだけ。
「 ……雪、好きだったっけ 」
鍵盤をそっと押すように、歩調を合わせて。
でも、一歩分後ろで。
『 嫌いじゃねぇよ。静かだからな 』
此れは本心だ。
綺麗だな、って思うだけでよくて、
白いな、って感想を零せば十分で、
口を噤むと、氷菓よりも苦い風が、間を包んでくれる。
『 テスト、終わったんだろ 』
「 うん 」
『 じゃあ、 』
『 今日は、何も考えなくて善い日だな 』
後ろの彼が息をするより先に、街灯のオレンジは肯定した。
雪に滲んで、影を溶かして、孤独じゃないと訴えて、
「今だよ」だなんて、情けない応援をして。
さくっ、
「 ……如何したの 」
唯、ただ、証拠が欲しかっただけ。
唯、地に足が付いている事を確かめたかっただけ。
『 ……置いてくから 』
一歩前を歩いていた筈の俺は、何時の間にか、三歩も前に居た。
だから止まったんだ。
其れ以上の理由なんて、あってたまるものか。
「 ……そっか 」
冗談にするには、この夜は静かすぎたのだろうか。
それとも、唯、吐く息が白い事を確認したかったのだろうか。
『 ……寒いな 』
「 うん。寒い、 」
一月三十日。
其れは、世界でいちばん、曖昧な季節。
深夜二時。
其れは、世界でいちばん、何者にもなれない時間。
一月三十日。深夜二時。
少ない旋律と、余白ばかりの空白に、
それでも、確かに心臓に響くような、
ピアノの旋律が、世界でいちばん似合う季節。
コメント
8件
まって、好きすぎる… 最高の癒しすぎるよぉ…😇 まじだいすし
あまりに好きすぎて無理です………… ちょっと解釈超長いから下に書きます

このなんか曖昧な関係性を表すような文章好き好き大好き