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猫塚ルイ

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聖杯
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魔法が身近にあるこの世界で、彼はいつも、わたしの特別な人だった。
「あれ、髪切った? 似合ってるよ」
放課後の夕暮れが差し込む教室。
学校中の女の子の憧れの的である彼が、ふっと困ったように笑って、わたしの顔を覗き込んできた。
いつもわたしの小さな変化に、誰よりも早く気づいてくれるのは彼だった。
その優しい笑顔に、これまで何度も救われたことか。
だけど、彼の顔が近づくたびに、わたしの周りには甘い香りのする透明なシャボン玉がぷくぷくと浮かび上がってしまう。
心が大きく動くと「恋心の泡」が出てしまう、わたしの恥ずかしい魔法の体質。
これが出ているってことは、彼のことが大好きだとバレてしまうようなもので。君のこと、本当に好きだった。
でも、ずっと友達のままで居たかった。
彼のその綺麗な瞳を見るたびに、想いを伝えてしまったら、もう元の関係には戻れなくなるから。
だから、彼にこの気持ちを悟られないように。
わたしは必死に感情を抑え込んで泡を消し、「好き」に蓋をして、ただの友達として笑ってみせたんだ。
――それから、季節が巡って、時が流れて。
ある事情で、彼は突然わたしの前から姿を消してしまった。
彼がいない日々は、まるで色を失ったモノクロの景色のようで。
世界からポロポロと色彩が落ちていって、やっと気づいた。
友達のままなんて、選ばなければよかった。
もしもあの時、素直に「好き」と言えていたら、どんな結末が待っていたのかな、って。
駅前の、あの小さなパン屋さんの前を通るたび、いまでも彼の横顔を、しつこいくらいに思い出してしまう。
「もしも、もしも」って。もうどうにもならないことは分かっている。
それでもわたしは今日も、モノクロの世界の中で、一人で彼の『恋のいろ』を探していた。
「……やっと見つけた」
その時、パチンと目の前で、あの懐かしい甘い香りの泡が弾けた。
聞き間違えるはずのない、低くて愛おしい声。
驚いて顔を上げると、そこにはあの日と変わらない笑顔の彼が立っていた。
しかも彼の周りには、わたしのものより何倍も大きくて甘い、ピンク色の泡が溢れんばかりに浮かんでいる。
「迷子にならずに、俺のこと探しててくれた?」
彼は愛おしそうに目を細めると、わたしの華奢な体を、壊れそうなくらい強く抱きしめた。
彼の体温が触れた瞬間、わたしの周りからも、隠しきれない大量の泡がポコポコと舞い上がっていく。
「もう絶対に、その恋心に蓋なんてさせないから。……ずっと俺の隣にいて?」
耳元で囁かれた甘い言葉。
あの日必死に閉じ込めたはずの「好き」の蓋が、一気にパチンと弾け飛ぶ。
彼の腕の中で、モノクロだったわたしの世界が、鮮やかな恋の色に染まっていくのを感じた。
コメント
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ローファンタジー × 甘々だー‼️❣️‼️ キャ──o(((。>ω<。)))o──♡
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す ご い .ᐟ