テラーノベル
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続
Y「さのさ、」
廊下に出て
やっと口を開いた吉田さん。
そんなオドオドした吉田さんを
無視して俺は吉田さんの手を引いて
階段をあがる。
Y「保健室、あっちの校舎、、」
本当に保健室に連れて行ってもらえると
思っているのか。純粋なんだなぁ。
こんな欲にまみれたクソガキに
身を委ねてしまうだなんて。
S「座って」
屋上へと続く階段へと
放り投げるように座らせる。
Y「いっ、さのさ、?」
俺の右手が吉田さんの
左耳の後ろに触れる。
人差し指で吉田さんのマスクを取る。
Y「さのさん、どうしたんです、っ!」
吉田さんの頬を掴み唇を当てる。
Y「んっ、さの、」
吉田さんの言葉を無視して
口内に舌を突っ込む。
入れたと同時に口内を
ぐちょぐちょに掻き回す。
Y「ん、ぁ、ぅあ」
時々漏れる吉田さんの声が
余計に俺を興奮させた。
S「ん、」
Y「んはぁ、」
取ったマスクを吉田さんへ返すと
S「今日一緒に帰ろっか」
そう言い残すと俺は
教室へと足を運ばせた。
放課後。
皆がぞろぞろと教室から出ていく。
吉田さんを勉強道具を
丁寧に詰めている。傍から見れば。
いつも吉田さんは授業が
終われば直ぐに勉強道具を
かばんに詰め終わる。
今日は俺を待つために
不自然にならない程度に
偽装しているのだ。
「勇斗ー?一緒帰ろー」
S「悪ぃ、俺今日用事あるんだ
先帰っといてー」
「あ、おけー、また明日なー」
S「またなー」
S「吉田さん」
Y「佐野さん、」
教室が俺たち以外の人影を消したのを
確認すると俺はすぐ近くの
吉田さんに話しかける。
S「吉田さんって正門側?」
Y「そうです佐野さんは?」
S「俺もー」
Y「あ、良かったです」
英語の時間息が出来なくなる手前まで
吉田さんはめちゃくちゃにされたのに
普段通りに接してくる吉田さんに
何故か少しだけ腹を立てていた。
S「吉田さんさー、なんとも思わない?」
Y「え、」
S「あんなにめちゃくちゃにしたのに」
Y「そ、そりゃあ色々
思うこともありますけどねぇ、、」
S「嘘だ、そんな平然として」
Y「色んな気持ちがぶつかり合って
逆に冷静になれてるんですよ」
S「吉田さんって不思議だね」
Y「貶してます?」
S「ふっ、まさか」
そう言った吉田さんの耳は
先程よりも少しだけ
赤みを帯びているように感じた。
S「吉田さん優しすぎて心配だわ」
Y「急になんですか」
帰り道誰もいない細い上り坂を
自転車を押しながら2人で登る。
S「あんなことされたら
拒絶とかするでしょ」
Y「そうなんですか」
S「なのにこんな頭のおかしい男と
一緒に帰っちゃってさ」
Y「佐野さんはおかしくないです」
S「どうしてそう思うの」
Y「佐野さんはいい人だから、」
目をキョロキョロと泳がせながら
その言葉を発する吉田さん。
S「そうなのかな」
Y「はい、」
S「ねぇこの後暇?」
Y「暇、です、はい」
S「何時位まで空いてる?」
Y「今日は、何時でも」
S「ちょっと遠いとこ行こ」
Y「遠いところ?」
S「2駅隣に出来たあそこのカフェ」
Y「あ、パフェが沢山の」
S「そー休日は人多いじゃん」
Y「確かに」
S「その後ちょっとぶらぶらして」
Y「良いですね」
S「制服のままでいいからさ」
Y「分かりました、楽しみです」
S「ほんと?」
Y「友達と出掛けたことなかったので」
友達。
前の俺なら喜んでいた単語だろう。
恋人。
今の俺が1番欲しい単語。
吉田さんを俺のものにしたい。
いつからかそんな欲が芽生え、
大きく大きく俺の心を侵略していった。
S「吉田さんの初めて貰っちゃうね」
Y「佐野さんは初めてを
沢山奪っていきますね」
S「なんか、」
Y「どうしたんですか、?」
S「いや、なんでもない!
俺こっちだから後でここ集合ね!」
Y「えっ、ちょ、」
S「じゃあね!」
Y「ま、また!」
S「なんか、初めてって、嬉しいな」
Y「さのさん!」
S「お、来た来た」
Y「待たせちゃいましたよね」
S「全然!てか俺ここから家近いから」
Y「なら良かったです」
運動が苦手なのに
俺の姿を見ると頑張って走ってきてくれた。
不格好な走り方も可愛い。好き。
てか、吉田さんの全部が好きなんだけど。
S「じゃ、駅行こっか」
Y「はい、!」
はー。かわいいな。
何回でも言うけどかわいいな。
なんでこんな可愛いんだ。
てか、吉田さんは俺の事
どう思ってるんだろ。
優しさだけで関わってるのなら
大分悲しいことだけど。
Y「佐野さん、?」
S「えっ、は、はい」
Y「何ボーッとしてるんですか、
電車、もうきてますよ?」
S「あ、ほんとだ」
Y「最近変ですよ」
当たり前だろ。
学校でも家でも風呂でもベッドでも
ずっと吉田さんの事で
頭がいっぱいなんだよ。
S「んー、寝不足かなー」
Y「ちゃんと寝ないと、
寝る子は育つって言いますし」
S「いいのいいの俺はもう十分高いから」
Y「煽ってますよね」
S「当たり」
Y「くっ、言い返せないのが悔しい」
S「吉田さんはちっちゃくて可愛いよ」
Y「可愛い、ですか」
S「うん、可愛い」
吉田さん気付いてるかな。
可愛いって言う度
俺ドキドキしてるんだよ。
可愛いって思う度
俺めちゃくちゃにしたいって
思うんだよ。
S「あ、ついた」
いつの間にか
もう目的地の駅に着いていた。
吉田さんの居ると居心地が良くて
何も話していなくても
気まずい空気にならないのは
吉田さんの独特な雰囲気の
おかげなのかもしれない。
Y「またぼーっとして、」
S「おっ、と」
俺に比べて大分非力な力で
グイッと電車の外へと引っ張られる。
Y「置いていきますよ」
S「待って待って笑」
Y「一緒に来てくれて
ありがとうございました!」
S「そんな、全然いいのに」
Y「何事も思った時に伝えておかないと」
S「思った時に、?」
Y「後で後悔するより
絶対いいじゃないですか」
S「あー確かにね」
Y「でしょ!」
S「じゃあ俺も伝えとこうかな」
Y「何をですか?」
3番ホームに快速電車が参ります。
危ないですので、、、
そんな何度聞いたか分からない
駅のアナウンスが駅全体を突き抜ける。
S「俺は吉田さんの事が、」
Y「吉田さんの事が、、?」
プシューっと電車のドアが開く音がする。
言うのに緊張しすぎた。
S「あー、後で言おっかな」
Y「え、今言うんじゃないですか!」
S「じゃあ今日はありがと
遅くまで連れ回してごめんね」
Y「こちらこそありがとうございました
俺門限無いので全然平気です」
S「それなら良かった、また明日ね、」
Y「はい!また明日」
背を向けて少しくらい道を歩き出す
吉田さんを眺めていた。
S「吉田さん!」
Y「え、は、はい!」
急に大声で名前を呼ばれて
びっくりしたのか肩がはね上がる。
S「さっき言い忘れたことあった!」
Y「な、なんですか!?」
S「俺は」
吉田さんへ走っていく。
身体が勝手に動いて行く。
S「俺は、俺は」
Y「佐野さんは、」
S「吉田さんが好き、」
後半になるにつれ段々と
声が小さくなっていき情けない。
Y「へ、」
S「それだけだから、じゃあね、」
逃げるように自分の家の方向へ歩き出す。
Y「俺も好き」
S「え?」
Y「なん、ですかね/」
若干の涙目と困り眉が俺の理性を刺激した。
S「ずるいよ吉田さんは」
Y「わ、分かってますよそんなの
でもまだ分からない、
男の人を好きになったのも
人を好きになったのも全部全部初めてで、
俺好きって事がまだ分からない」
S「好きって言うのはねその人が目の前に
居るだけでドキドキしたり、
ずっとその人のことを考えて
夜も眠れなくなったり、そんな感情を抑えられなくて気持ちが溢れちゃうことだよ」
Y「ドキドキ、?」
S「吉田さんは俺を見て
心が苦しくならないの?」
Y「な、なりますよ!佐野さんと居ると
ずっと苦しいですよ、でも、
佐野さんみたいに 誰にでも優しくて俺なんかにも笑顔で接してくれる人が、俺を本気で好きになると思いますか、!?」
S「俺は!吉田さんが好きだから」
Y「もう、知ってますよ、ばか」
目から溢れ出る大粒の真珠みたいな
涙がどうしても綺麗で
消えてしまいそうで、、
S「吉田さん好きだよ」
Y「何回も言わなくても、知ってます、」
優しさなんかじゃ無かった。
吉田さんは俺の事が好きだったんだ。
逆に俺が吉田さんを不安にさせてたんだね。
S「好き、好き、、仁人」
Y「俺も好きです、勇斗、」
お互いに潰れるくらいに強く抱き合って
お互いの存在を確かめあって
喉がカラカラになるまで好きって
言いあって。
S「また明日」
Y「うん、また明日」
S「大好きだよ仁人」
Y「俺もだよ、勇斗」
まだ名前を呼ぶ度に恥ずかしがっている顔も
告白の時のあの綺麗な泣き顔も
一生懸命勉強している顔も
デート中に笑っている顔も
美味しそうにご飯を頬張る顔も。
俺の目を見る度に逸らしてしまう照れ顔も。
全部全部。
俺だけに見せて?
ーENDー
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