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部屋の中には、また一人お兄さんがいた。この人も藤音先生と同様、美形なお兄さんだった。
目は水色、長く綺麗な緑色の髪を耳より下でくくっていた。
「…お、やっときたか」
「遅くなっちゃってごめんね、輝くん」
白衣を着てないからお医者さんではない…?
「君が恋くんだね?」
輝仁と呼ばれるお兄さんが俺に近づきそう言った
「はい、そうですけど…」
「俺は翠 輝仁(カワセミ テルト)。不審者じゃないから安心しろ~」
「は、はぁ」
「急に連れてきてごめんね。上だと話せないから…」
話せない?
「何でですか?」
「それはこれから話す、まぁ座りなよ」
そう輝仁さんが部屋の中央にある椅子へと俺たちを案内する。
「俺紅茶淹れてくるね。輝くん、説明お願いね」
「あ、ありがとうございます!」
「お菓子もお願~い」
輝仁さんがそう言うと藤音さんはニコッと笑い部屋を出る。
「よし、じゃ今から説明するからよく聞けよ~」
「は、はい…」
やっと説明かぁ。何て言われるんだろ。
何か重い話をされると思った俺は一言一句逃さないよう輝仁さんの話に聞き耳をしっかり立てる。
「月が赤く見える理由は…」
「…ゴクリ」
「お前が吸血鬼になったからだ」
「…は?」
え、ちょっと待って今吸血鬼って言った?
「は、え、はぁぁぁあ!?」
「おぉ初々しいなぁ~」
「え、どうやって?」
「吸血鬼に噛まれて」
「はぁぁあ!?」
「月が赤く見えるのは吸血鬼の証拠だ。お前誰に噛まれたの?」
「全く記憶に御座いません…」
「まじか…」
「え…どこ?どこ噛まれた~!?」
「定番は首だろ。ほら、鏡貸してやるよ」
輝仁さんがポイッと俺に鏡を投げた。
「っと、ありがとうございます。」
鏡で首の周りを調べると…
「…あった!」
俺から見て左側の首に平行に並ぶ2つの丸がついていた。これが多分噛み跡だ。
「お~これこれ。」
「え、誰に噛まれたんですか俺?」
「いや俺に聞かれても分かるわけないじゃん」
「ですよね~」
コンコン、ガチャ
「紅茶とお菓子持ってきたよ~」
「お、ありがとう流綺」
「あ、ありがとうございます!」
「それで、どこまで説明した?」
「吸血鬼になる方法まで」
「まだ全然話してないじゃん…」
流綺さんが頭を抱えながら椅子に座り、喋り始める。
「取り敢えず恋くんは吸血鬼になったからうちの組織に入ってもらうね」
「組織?」
「うん、俺たち吸血鬼だけが集まる組織」
「そ、それって強制…?」
「まぁそうだね」
「えぇ…?」
「組織については今から説明するからしっかり聞いてね!」
吸血鬼はみんな俺たちみたいに自我を保ってる訳じゃないんだ。普通は上手く吸血鬼にはなれない。吸血鬼に血を吸われた瞬間、俺たちみたいに血を吸わなくても生きていけるわけではなく、死ぬまで血を欲する半吸血鬼、ヴァンピールになるんだ。死ぬまで血を欲するヴァンピールは血を吸うために人間を襲う。警察がどうにかしようとしても、人間より遥かに強いヴァンピールに人間の警察は手も足も出ない。そんな時にどうにかするのが俺たち吸血鬼だけが集まった組織「紅影」の出番ってわけ。
「紅影…」
「まぁ簡単には言うと警察の吸血鬼バージョンだね。」
「はぁ…それで入るのは強制なんですよね?」
「うん…。僕たち吸血鬼ってまだ人間たちにあんま信用されてなくてさ。お前らもいつかヴァンピールみたいに我らを襲う気か!って怪しまれてるんだ。だから警察さんたちは俺たちを組織に強制的に入れて管理下に置きたいみたい。」
流綺さんはとても申し訳なさそうに説明してくれた。この人も強制的に入れられたのかな…
「ま、組織に入ってもデメリットばっかじゃないぜ」
「そうなんですか?」
「給料出るし、人間の血を提供してくれるし、組織の奴ら全員吸血鬼だから堂々と血飲めるし。さすがに人間の前はダメだけどな」
「皆最初は人間の血を飲むのには抵抗があるから、1ヶ月くらい自分を吸血鬼にした吸血鬼の血を飲ませてもらって練習するんだ。そうすると段々体が血に慣れてくる。人間の血を飲むのはその後なんだけど…」
「お前自分を吸血鬼にした相手が分からないんだよな?」
「…あ、そうじゃん」
「…ごめんけど血を飲む練習をせずに人間の血を提供するのはダメなんだよね。」
「あ~…まぁ探すしかないですよね」
「うん。俺たちも協力するから頑張って見つけようね!」
流綺さんの笑顔を見て少し安心した。
「はい!」
「じゃ、俺らからは以上かな。何か質問あるか?」
「う~ん。あ、学校とか家族とかはどうなりますか?」
「学校にもご家族にも恋くんが吸血鬼になったことを説明するよ」
「お前の通ってる学校には吸血鬼もいるから説明したら理解してくれるだろ。だから続けられると思うぞ。」
「ホッ良かったぁ」
「問題は家族だな」
「人によるけど自分の子供が吸血鬼って知ったとたん気味悪がって家を追い出そうとする人もいる…でも、恋くんのお父さんとお母さんは受け止めてくれると思うよ。ニコッ 」
俺もそう思った。俺はお父さんとお母さんを信用して、愛している。吸血鬼になってもその気持ちは変わらない。俺の気持ちが変わらないように、お父さんとお母さんの気持ちも変わらないと信じている。だが、やはり不安だ。
…でも
「…俺も、そう信じています。」
少し恥ずかしいが、はっきり俺はそう言った。