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外套も脱がずに、ベッドにもたれかかるようにして座り込む。ふと、脇になにか光るものを見つけた。
「あ……」
小さな白いボタン。自分のものではない。
「太宰の……」
知らず声が漏れた。
互いの家への行き来はあった。なんならつい先週も、太宰はここに来た。なにか美味いものを食わせてくれと、高い酒を片手に。ニコニコと年相応の無邪気な顔をして。
そうしてほどよく飲んで、食べて、上機嫌になった太宰は、ここでこの白いボタンのついた服を脱いだのだ。
そのままベッドに腰掛けて「おいで、中也」と優しく伸ばされた手をとるのは、その時が初めてではなかった。
その夜のことを思い出して、たまらなくなって、ボタンをギュッと強く握り締める。そのままそれを力任せにゴミ箱に投げ捨てると、ふーっと長い長い息を吐いた。
することはしていたが、恋人だったのかと聞かれたら答えは「NO」だ。愛を囁かれたことも、囁いたこともない。もちろん友人というわけでもなく、やはり仕事上の「相棒」という表現が一番しっくりくる。
しかし、中也にはどこか自惚れがあった。
「同じ女と二度寝ない」と揶揄されるほど女性をとっかえひっかえしていた太宰が、最近はとんと大人しくなり、頻繁に中也の元を訪れてその度に体を重ねている。
太宰の長い指が中也の頬を撫でる度、自分の爪が彼の背中に傷をつけるのを許される度、スカスカの心臓にとくとくと暖かいものが注がれていくような心地だった。