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追放殿下は隣国で、セカンドライフをおくります! 〜良い人過ぎてセルフ追放。だけど良い人だったので、ケ
第62話 - 第61話 一方その頃母国では(8) ~抜けた穴は意外に大きく~
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2026年03月14日
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2026年03月14日
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「そんな、まさか」
「部屋まで念のため行って確認しましたが、殿下の姿は既にありませんでした」
「……渡す予定の金は、未だここに置いてあるぞ」
「はい」
私がそう問い詰めるも、彼は冷や汗を垂らしながらそれしか言わない。
が、まぁ幾ら詰め寄られたところで事実は変わらないんだから仕方がない。
これからどうにでもすればいい。
そう思い直し、コホンと一つ咳払いをする。
「アルドは代わりに、どのくらい部屋のものを持って出たんだ」
「あぁいえそれが、装飾や宝飾の類には全く手が付けられておらず」
「何? ならばアルドは一体何を持って行ったのだ」
「目撃者によると、どうやら殿下は平民が着る様なボロボロの服とボロボロのリュック一つを携えていた、と」
「ボロボロ?! リュック一つ?!」
なんと、曲がりなりにも一国の王太子だった男がそんな。
「そ、それで一体どこへ行った?」
「いえ、それがどうやら分からないらしく」
「は? 何を言っている。馬車で外に送ったのだろう? ならば最終的な行先は分からずとも、せめてどちらの方面へと行ったかくらいは――」
「それが、殿下は歩いて城を出たとの事で……」
「『歩いて』?!」
何という事だ。
それでは場所が分からぬどころか、今頃は既にどこかで野垂れ死んでいる可能性だってある。
すぐに探さねばなるまい。
が、アルドは既に廃嫡し、平民になった後である。
王城が行方を捜すにしたって大義名分が立てられない。
例えばアルドを罪人としてなら探せるだろうが、その場合、見つかった時に処罰をせねばならなくなってしまう。
「ぅむ……昔は子飼いの密偵も居たという話だが、先代から王位を継いだ時には既にそんなものは居なかったしな……」
そして残念ながら今代も、そういう人材には未だ恵まれてはいない。
一応表の世界で活躍できる臣下は居るが、彼らは裏で秘密裏に動かせるようなヤツらではない。
――仕方がない。
結局そう結論付けて、アルドを探す事はしなかった。
が、それを今になって後悔している。
金が無いと気が付いてから、増やす術を探していたらアルドの今までの功績の数々に突き当たった。
どれも地味で当時は気にも留めなかった施策だ。
しかしそれも、こうして並べてみても一貫したコンセプトが見えてくる。
「民の暮らす環境を良くし、結果的に税収を増やして国庫を潤す。アルドは思いの外、金策が上手かったのだな……」
しかもそれだけでは無かった。
現在明らかに財政を圧迫している、バレリーノ周りの支出たち。
それが、アルドの婚約者だった時には今の3分の1ほどに抑えられている。
アルドはあれで、きちんとバレリーノに好き勝手されないように国庫の財布の紐も締めていたのだ。
税収は増えず、グリントは財布の紐を締めるどころか喜んで全開にしている始末。
そんなので金が減らない訳が無い。
今からでも出来る最善は、財布の紐を締め直した上でアルドがかつてしていたような施策をまた行う事だろう。
が、案も思いつかなければ、アルドが責任者として進行中だった施策においても、どうやら上手く行っていないらしい。
元々かなりギリギリなスケジュールで進行していたらしいのだが、それを引き継いだグリントは采配をサボっているらしいのだ。
お陰でケツを叩くものが居なくなった今、丸々一か月の間まるで進展が無いと聞く。
グリントは一体何をしているのか。
アヤツの評価が低い理由が、今更ながら理解できた。
「はぁー……」と深いため息を吐く。
しかし幾ら吐いたところで、何かが変わる訳じゃない。
頭が痛い日々は続き、改善の兆しは全く見えない。
これは一体、どうすればいいのだろうか。
誰か私にコッソリ耳打ちしてくれないか。
心の中で、小さくそう呟いた。
が、誰も答えてくれはしない。
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