春「あれ?今日は全く突っかかって来ないね」
三「昨日のが効いたんじゃない?」
夏休み前のムードが広がる教室の隅で古風と話していた。
昨日のが効いたか知らないが全く突っかからなくなった。
三「あんまり気にすることないよ、このまま前と同じくらいの距離になればいいよ」
春「まぁ、そうだね」
一成の事など忘れてその日も学校を謳歌した。
やはり、女の子になってから何もかも変わったなぁ、と実感している。
学校も終わり帰路に着く。
今日は古風が部活の助っ人でいない。
春「あ〜、疲れた〜」
この口癖は女の子になっても治らない。
春「今日帰ったら何しようかな〜」
ルンルンでいつもの帰り道に沿って歩いていく。
ふと後ろの方から何かを感じる。
春「ん?」
後ろを振り返った。
春「あれ、誰か走ってる、、あれなんだろ」
遠くで男が何かをもってこちらに走ってくる。
春「陸上部かな?」
その男に見入っていた。
徐々に近づく度に鮮明に見えてきた。
春「…..え?」
その男は一成だった、持っていたものはフルーツカット程の包丁だ。
その瞬間本能的にその場から走り出した。
カバンも捨て、今までの人生で1番本気で走った。
目が涙で見えない中拭って走った。
ひたすら走った。
後ろで走る音が大きくなる。
人通りの多い道に入り道行く人がこの事に気づき、止めにかかった。
安堵してほっとした瞬間。
「グサッ」
春「…..え???」
背中に激痛を覚え、悲鳴が聞こえた瞬間から記憶が消えた。
春「!」
ふとした瞬間目が覚めた。
春「んっ!」
背中がジリジリと焼けるような痛みがある。
「あ、起きたのね!動かないで!」
近くにいた看護師らしき人にそう言われた。
春「す、すみません、今どういう…」
なにか察したのか看護師が説明する。
看「あなたね同級生に背中を刺されたのよ、それで小さいナイフだったからまだ良かったけど少し深くまで入っちゃって、でも安心して!傷跡はほとんど残らないから」
それを聞き涙が流れた。
それと共に吐き気も襲ってきた。
看「あ、あ、大丈夫?ティッシュあげるからね…」
春「す、すみません」
女の子になって心も弱くなったのか私は完全に女の子になっていた。
看「あ、起きたばかりで申し訳ないんだけどご両親はいる?」
春「すみません、両親共働きで少し遠くにいます」
看「そうなのね、じゃあおじいちゃんとかいる?」
春「それもわかんないです、、、」
春「一応幼なじみ的な信頼してる人はいますが、、」
困った顔の看護師にそう言う。
看「あ、じゃあその子に連絡しよっか、電話繋げられるかな?」
春「分かりました。」
その後古風に電話し、看護師に渡した。
その後別の看護師に色々質問された。
看「名前は?」
春「春です」
看「いい名前ね」
少し私を子供のように扱った看護師を前になんとも言えぬ顔で寝ていた。
看「今、何年生かな?中学生?」
やはり幼く見えるのだろうか?
春「一応、高校生です。」
看「あ、そうなの!ごめんなさいね」
看「あ〜なんか春ちゃん刺されたって聞いたんだけどその人の名前とかわかるかな?」
その質問に言葉が詰まった。
言いたくても名前を出したくない。
春「うう、」
心が不安定なのかまた泣いてしまった。
看「ああ、ごめんね、無理な時無理でいいからね。じゃあ別の質問するね」
涙が治まってきたあたりで。
「ガラガラガラ」
その音ともに入ってきたのは。
三「は、春!」
春「古風?」
息を切らし膝に手を当て息が戻ったところでこちらに近づいてくる。
三「春〜!」
春「ちょ、ちょっと」
私の体に抱きつくようにベッドに倒れてきた。
看「あ、今怪我してるので出来ればベッドには入らないでください」
三「あ、すみません」
少し静かになった古風。
春「ごめん、古風、わざわざ来てもらって」
三「大丈夫よ!春のためならたとえ火の中水の中森の中!」
私はいつも通り元気な古風を前にほっとした。