次の日、学校に行くと、佐野くんと話す機会がまた増えていた。授業の合間にちょっとしたことを教えてくれたり、気になるところを指摘してくれたり。その度に、小夏は胸がちょっとドキドキしてしまう。
昼休み。小夏が教室でお弁当を広げていると、佐野くんがひょこっと顔を覗かせた。
「お前、一人で食べてんの?」
「う、うん。なんか、まだうまく馴染めてないから…。」
小夏は少し照れくさそうに答えると、佐野くんは少し考えてから言った。
「じゃあ、隣座ってもいいか?」
その言葉に、心臓がドキドキと早くなったけど、何とか冷静を装って「どうぞ」と返す。
佐野くんは無言で座り、小夏のお弁当を見てきた。
「それ、うちの母さんが作ったやつ。」
「うまそう。」
「えっ、ほんまに?」
「うん、見た目が綺麗やし、作り方にもこだわりありそうやな。」
「うちも料理は好きなんやけど…。」
「なら、今度教えてくれ。」
「え?ほんまに?」
「うん。」
ちょっと予想外の返事に、小夏は驚いた顔をした。
その後、しばらく二人で黙々と食べながら、周りの騒がしい雰囲気の中でも、なんだか落ち着いた気持ちになっていた。
放課後。小夏は部活の帰り道、佐野くんと一緒に帰ることになった。途中で、少しだけ歩くペースを落として、話しやすくなった頃。
「小夏って、料理とか以外にも得意なことあるん?」
「うーん…どうやろ。得意ってほどじゃないけど、音楽とか好きかな。」
「音楽?」
「うん。昔、ピアノ習ってたんやけど。」
「へぇ、ピアノか。意外。」
「そうなんや。あんまり言ってないけどね。」
「やっぱり、なんかそういうのあったんやな。」
「うん。」
佐野くんは少しだけ無理に笑わないようにして、「ピアノか、いいな。」と静かに言った。
その瞬間、小夏は思わずその目を見つめてしまった。佐野くんがこうやって自分に興味を持ってくれることが、何よりも嬉しかった。
家に帰ると、また奈子にLINEを送った。
**小夏**:「今日、佐野くんとまたちょっと話したんやけど、なんか気になることがいっぱいあって…。」
**奈子**:「どんなこと?」
**小夏**:「音楽の話とか、料理の話とか、なんかすごく気を使ってくれてるんかなって。」
**奈子**:「そりゃそうだろ!小夏のこと、気にしてるからでしょ!」
**小夏**:「でも、まだよく分からへん。ほんまにただの気遣いかもしれんし。」
**奈子**:「そんなわけないって!佐野くん、あんなに真剣に話してくれるなんて…確実に気になってるよ!」
**小夏**:「そんなに思われると、恥ずかしいな…。」
奈子の言葉に少しだけ心が軽くなった。でも、佐野くんの本当の気持ちはどうなんだろう。少しだけモヤモヤするけれど、そのモヤモヤが心地よかった。
次の日、また佐野くんが声をかけてきた。
「小夏、今度一緒にランチでも行かへん?」
その言葉に、小夏は驚きと嬉しさが入り混じった気持ちになりながらも、必死に冷静を装った。
「えっ、ほんまに?」
「うん。」
「わ、わかった。」
その瞬間、小夏の胸はまた高鳴っていた。これから何が起きるのか、まだ分からないけれど、少なくとも心が少しずつ動き出しているのを感じていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!