【プロローグ】
こんにちは、炭酸水です。
今回のお話はちょっとホラーをやめ、普通のストーリーを書きました。
叶えるお願い。これは叶えてもらう側はとても嬉しいことですね、ですが叶える側は、どんな苦労をしているのでしょうか?
…?そこの者、ちょっとわらわの話を聞いておくれ…わらわか?わらわは……まぁここに住んでいる神じゃよ…なんて冗談さ。わらわは狐であり、人間であり…まぁ神ではない。そんなことより話をしようじゃないか。
わらわは…人の願いを叶えろと神に告られた。ただそれだけじゃ。
…だけどまぁ、こうなるとはな。
人間とはなんとまぁ…不思議な生き物だ。人それぞれ価値がある者や、無い者が……あ、お主は人間か。なら言うのはよそう。
これは昔の話じゃ。
告げられた通り人の願いを叶えていた時。一つの願いを見つけた。
この願いじゃ。わらわは残念だが、人を作ることは出来ん。だから叶えることは無理じゃ。その時ここ…この森にこの願いの持ち主が来たんじゃ。
「なんだお主は。ここは立ち入り禁止のはずじゃぞ」
「…ここは昔来た」
「今は禁止の場所じゃ。とっとと帰なされ」
「母さんがここにいる…」
「…何を言っとる。ここに人は埋まっていないぞ」
「…そうですか。また来ます。」
よく分からん奴じゃ。母さんがいる?いるわけなかろう…ここに人はいないし、お墓もないし、人も埋まっていない。わらわが調べ尽くしたからな。
その日からこの小僧は毎日のように来よった。どうやら小僧の名前は…奏。相馬 奏 じゃと。そして母さんは数年前に病気で亡くなったらしい。
『母さんはこの場所で病気になってここで死にました。』
小僧はずっと1人だったんじゃな。そう思ったが、わらわはさっきも言った通り、人は作れぬ。それどころか残像すら出せんのじゃ。
彼はずっと言っていた。『叶えてください』とな。
そこまで言われりゃあな、小僧の為にあらゆる事をやったさ。
『この本…デタラメか?…でも冥界にあったしな…いやデタラメじゃな。』
『神よ。頼む。お前んとこの…相馬 奏の母ちゃんを呼んでやってくれ…応答無しじゃな。』
『この中に、相馬 奏の母ちゃんはいるか???いるなら手を挙げてくれ。』
どの方法も意味なかったがな。
そんなある日、小僧が突然。
「私の母さんは…貴方だったんです。」
「はぁ?」
思わず持っていた三色団子が潰してしまったなぁ。見事に弾けていったわ。
「お主…突然何を言いよる。わらわがお主の?冗談はよせ。今は忙しい…お主の茶番には付き合ってられん。」
「信じないなら…信じなくてもいいです。ですが、僕には貴方が母さんに見える…無理なことなのに…必死に答えを探し出す…いや…僕のために…」
「…お主にはきっと…妖怪が取り付いておる。わらわがとってやる。だからもうここには来るのではない。」
咄嗟に考えて出た答えがこれだったのう。
彼は必死に考えて答えを出したんだろうが…わらわには当然分かるわけがなかろう。
「嫌です。」
「ならとらなくてもよい。ここには来るな。わらわは忙しい。」
「だって…母さんは…!」
「「出ていけ!」」
叫んだんじゃ。早く…消えて欲しくて…もう願いも叶えるのも辞めよう…人間に関わってはいけぬ…
それから4ヶ月…いや、6ヶ月だったか…そんな月日が流れたんじゃ。そしたらあの小僧が現れたんじゃ。
「もう…ここには来るなと言ったじゃろう。なぜここに来た?」
「…ここ、無くなるんです。」
「何故…それは本当か?」
「……えぇ。」
小僧は泣いておったな。
「お主…なぜ泣いておる。」
「…母さんをここで失って…ここまで失うなんて…母さんに会えなくなる…そんな…気がして…」
「母さん…か。わらわには分からぬ。わらわは生まれた時からひとりじゃ。人間から生まれたのか…狐なのか…それとも神なのか…」
小僧は無言だったのう…ただ母さん、母さん泣きわめいて…まるで…自分の息子を見ているかのようだったのう。
わらわには息子はいないはずなのになぁ…これが…息子を持つ母の気持ちなのか。
まぁ、ここが無くなると聞いて、わらわは荷物をまとめていた。そしたら写真が出てきおって…その写真は…
あの小僧とわらわによく似た人が写っておったんじゃ。
わらわは半分狐やからのう…耳や黒い部分があって…まぁ小僧の母ちゃんは誰かは分からんかったわ。
そんな写真を小僧にあげたら…小僧はとてもびっくりしていたのう。
小僧は言っておったわ。俺が写ってるってな(笑)
結果。森は壊され、わらわは帰るとこがなくてな…結果冥界に戻ったんじゃ。
そしたら神に告げられたのじゃ。
「君は生前している時、とんでもない罪を残していった。だから人の願いを叶えさせたのはその償いだよ。」
「わらわが生前?つまり…わらわは人間だったんか?」
「あぁ…そうさ。君は人間の女性で、狐になりたいとよく言っていた。それは貴方があの場所…つまり森で祈ったから私が君を狐と融合させたんだ。」
「そうなのか…それは嬉しい事じゃ。もう何年も生きとるから忘れたわい。」
「君が来てからまだ4〜5年しか経ってないけどね。」
「まだそんな経ってないのか…。それにしてもまぁ…不思議な体験やったわ。」
「お疲れ様。相馬 薫さん。」
「ん?なんか言ったか?」
「いいや。何も?」
不思議な体験やったわ。…神が呼んどる、わらわはもう行くな。ほな気をつけや。
「エピローグ」
いかがでしたか?叶える仕事は簡単ではありません。狐…薫さんは自分の生前を忘れてしまっているようです。苦しいのは奏さんではありません。1番気づけず、息子に冷たい態度をとった薫さんです。叶えてもらうには代償が要ります。足が早くなりたいなら努力をすればいい、みたいにね。ですが叶える側にも代償は必要なのです…皆さんは叶える側か、叶えてもらう側…どちらにまわりたいですか?ではまた次のストーリーでお会いしましょう!
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