雪がしんしんと降る聖なる夜
大森元貴は仕事を終え、帰路についていた
夜なのにも関わらず街はイルミネーションで彩られて明るかった
「今日、クリスマスか」
年末で忙しいのもあり、街の風景を見て今日がなんの日か思い出す
「クリスマス……?」
はっと思い出す
そうだ、今日は記念日だ
1年前 この聖なる夜に誓いを交わした
どうして今のいままで忘れていたのだろう
「ケーキでも買って帰るか」
そう思ってケーキ屋に寄るも今日はクリスマス。
皆考えることは同じである
このまま帰りが遅くなってはもっと心配をかけてしまう
家への道を辿りながら、どうしようかと考える
彼はマメな人だ。
1年記念日もきっと覚えているだろう
さてどうしようか
己の失態に呆れるように白い息を吐く
結局何もまとまらず、家に着いてしまった
「ただいま、」
「! おかえり、元貴!」
待ってましたと言わんばかりの勢いで駆けつけてくる
愛おしさと同時に襲ってくる罪悪感
リビングへ行き、ソファーに体を沈める
横にちょこんと座る彼が愛しい。
きっと、記念日を忘れていたことを伝えるとさぞ悲しむんだろうな
そんな顔を見るのが嫌で、伝えるタイミングを見失う。
「元貴、 今日、なんの日でしょう…、!」
ものすごく自信がなさげだ
分かっている、何の日かは分かっているが 少し意地悪をする。
「んー、 クリスマス?」
「ぇ、 あ、 うん、。 そうだね…、」
目線を下へ逸らす彼。
あぁ、そんな顔しないで
そんな気持ちと裏腹に興奮してる俺もいるんだけど。
しばらく沈黙が流れ、やってしまったと思い口を開こうとすると
手をぎゅっと握りしめて、口を噤んで
ぽろぽろと涙を流す若井が居た。
ごめん、嘘だよ
スッと、そう言ってあげたい
でも、加虐心が擽られる
だから俺は知らないふりをする
俺のために泣いて 俺のために苦しんでよ若井。
こんな感情を、若井に向けたのは初めてで
もっとそんな顔が見たくて
俺はそこで
狂ってしまった。
「ぅ゛っ、 かはっ…!゛」
「なに?もうギブアップ?」
俺の下で、苦しそうに顔を歪めて必死に酸素を補給しようとしている
手に力を入れると、もっと苦しそうな顔をして
俺に絶望している若井が愛おしくて愛おしくて
「も゛ぉぎっ゛! ゃえ゛っ……」
「涙と涎で顔グッチョグチョ。 思い出に残る夜にしようね」
もう記念日忘れたりなんかしないからね
若井。
END …
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うわ、好きですこういう系、、、 / イマハベンキョウキュウケイチュウダシ..