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この作品はnmmn小説となっております。
苦手な方やこの言葉を知らない方はブラウザバックをお勧めします。
・死ネタ要素
・病気の症状の捏造
等を含みます。
ご本人様とは一切関係ありません。検索避けのご協力よろしくお願いします。
彼は今、なにを見ているのだろうか。
黒side
「あ、にき、、、?あにき、あにき、、、」
「、、、まろ、ここにおるで。大丈夫、大丈夫。」
空に伸ばされた手を取る。虚な目はなにも映してはいなくて。
「あにき、、、置いてかんといて、、、あにき、、、」
戯言のように繰り返される俺の名前。
昨日は約1時間、一昨日は5時間ほど。日によって変わるこの時間は、彼を違う世界へと飛ばしてしまうようで。
「、、、あにき、あにき、、、?」
「、、、大丈夫やで」
なにが”大丈夫”なのだろうか。彼に安心感を与えるためか、それとも自分自身に言い聞かせているのか。自分でもわからない。
ガクリ、と力の抜けた体を支える。ようやく、戻ってくるようだ。
「、、、ん、あにき、、、?」
「まろ、おはよ」
大きなあくびをする彼の目は、ようやく、俺を映した。
「おはよ、、、、今日は、どんくらいやった、、、?」
会話ができる喜びを噛み締める。
どんなに辛くとも、これは俺が望んだこと。あいつらみたいに彼を放り出して逃げたりなんかはしないと心に決めていた。
「んー大体4時間くらい、やな」
「、、、そっか、」
申し訳なさそうに眉を顰める彼。
____『こんなのッ!何かの間違いよ!!!私は信じない!!!』『申し訳ないがひとりでどうにかしてくれ』
彼の病気が判明したとき、彼の両親が放った言葉。
それにイラついて、殴りかかりに行こうとした俺を引き留めた彼は、しゃーないやんwなんて笑っていたっけか。
無意識のうちに夢をみる病。それがいい夢か悪い夢かはわからない。ただ、目は開いたまま。声も出るし体も動く。夢の中の行動と同じ動きを行おうとする。
俺は、彼がどんな夢を見ているのか分からない。
起きている間は、こんなにも普通なのだ。少しの間だけ、ここからいなくなってしまうだけで。
ひとりでの生活は危ないと、医者に伝えられた彼は両親に報告に行った。1人は怖いから、と俺を付き合わせて。
あのときの顔は忘れられないだろう。
しゃーないやん、なんて気にしていない風に笑っていて。どうしてそんなにもバレやすい嘘をつくのだろうか。
俺の家に住むか?という質問に、彼が少し安心したように笑っていたのを覚えている。
「あにき!!ご飯なんにする??」
そんな元気のいい声で、我に返る。もうそんな時間か、と時計を見れば、12時少し前を指していて。
「なんでもええよw あ、でも塩足りんかもしれん」
頭の中に調味料の入っている棚を思い描く。たしか、昨日の夜に塩が足りなくなるな、と思ったばかりだ。
「え!そうなん??!まろ買ってこようか??」
「あーいや、ええよ。俺が今から行ってくるわ!!」
今から作り始めるのであれば、完成する頃には帰ってこれるだろうと考えて、椅子に掛けてあった上着を手に取る。
「あ、ほんま?じゃあ作って待っとるわ!」
「おー!頼んだ!!、んじゃ行ってくるわ」
はーい、なんて伸びた声にくすりと笑いながら靴を履く。
、、、そうだ、こんなにも普通なのだ。
彼と笑い合える、こんな空間が大好きだ。ただ少しだけ、夢を見てしまうだけ。
青side
「あにき、帰ってこんや〜ん、、、」
目の前の机に並べられた2人分の食事に向かって小さなため息をこぼす。1時間ほど前に家を出たのだから、すでに帰ってきていてもいい時間なのに。
もう一度ため息を溢せば、手元のスマホが震えた。
『あにき』と表示されている画面に少し驚きつつも、通話開始ボタンを押した。
「もしもし、あにき??今どこおるん??」
「、っあ、!もしもし、ご家族の方でしょうか?」
返ってきたのは、知らない人の声。少し慌てたようなその声にこちらも焦りを感じる。
「あっ、えっと、一緒に住んではいますが、、、」
震えそうになる手を必死に抑える。
「、、、えっ、?」
続いて聞こえた言葉に頭が真っ白になる。どうして、なんで。
ぐるぐると回る思考。その中の冷静な部分が、淡々と説明を続ける電話先の相手の声を聞いている。
“赤信号無視” “事故” “頭部強打” “大量出血”
物騒な言葉が並ぶ。
ここまで聞いても実感なんか湧かなくて。
さっきまでここで笑っていたのに。なんで、どうして。
電話先の相手は、あにきが運ばれた病院の名前だけ伝えて電話を切った。
会いに行く勇気なんか出なかった。冷たくなったあにきなんか見たくない。もう笑いかけてもらえないんだ、という事実に耐えられそうにない。だいすき、だいすきだよあにき。俺を置いていかないで。
ちがうんだ、あにきがもうここにいないのなら、俺が、あにきのもとに会いに行けばいいじゃないか。
黒side
目的であった塩と、安売りされていたお菓子などで膨らんだビニール袋を片手に玄関のドアを開ける。
普段なら玄関を開ける音を聞いただけでバタバタと出迎えにくる音が聞こえるのに、今日は不気味なほど静まり返っていた。
「まろー、ただいま」
なんてそこそこ大きな声で叫んでも、返ってくるのは静寂のみ。
嫌な予感が背中を這い上ってくる。
急いで靴を脱いでリビングへと迎えば、美味しそうなご飯の匂いとともにツンと鼻をつく匂いが漂ってきて。その匂いに思わず顔を歪める。
ガチャリと音を立てながら扉を開く。テーブルの上にポツンと置かれた2人分の料理。ぐるりとその場で見回しても彼の姿はない。
「まろーー?どこおるん?」
返ってくることのない返事。
ふわり、と匂いがキツくなった気がして台所へと視線を向ける。床を見れば、明るい茶色であるはずのフローリングが真っ赤に染まっていた。
「、、、ッ!!?」
一瞬にして体が硬直する。
紅の中に倒れ込む青。
フラフラとおぼつかない足取りで台所へと向かえば、はっきりと現実を突きつけられる。
「まろ、、、ッ!!!!」
虚な、それでいて青く綺麗な目を開けたまま、彼はそこにいた。お腹の辺りには包丁が突き刺さっていて。今もどくどくと血が溢れ出ている。
「あ、にき、、、いく、まって、て、おねが、、、い、、、」
「まろっ、まって、俺ここおるよ、まろ、」
足が紅に染まることなんて気にならなかった。
「ぁにき、、おいてかなぃで、、、あ、にき、、、」
あぁ、これは夢なんだ。すべて、夢。
___すべて、ゆめのせい。