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81 ◇そんなことがあった──んだよ
永堀がやきもきしている間、橋本蓉子もまたいろいろと奥田に対して思うところが
あったのだろう。
30才を目前に奥田とはいつ結婚できるかもわからず、橋本は別の男を
見つけるという風に舵を切ったのだろう。
とうに25日で売れるはずのクリスマスケーキが、28日になっても
売れ残ってしまってるわけだからな。
一時、若さを武器に妻から奥田を奪って優位に立ったつもりでいた
のだろうが、そうは問屋が卸さず、妻の座は揺るがなかった。
時間が経つにつれ、橋本はそのことに気がつき焦れていたはず。
そこへ妻である永堀が罠をしかけ、俺と言う餌に蓉子はまんまとかかったのだ。
『ああ、永堀の想像と俺たちのヤったことが合っていたら、ご想像通りの
そんなことがあったんだよ』
『私がしている想像通りのことがあったとしたら、今ちょっと驚いてる。
だって、彼女は夫にかなりご執心だったって思ってきたから』
『彼女がご執心だった永堀の旦那から別の男に舵を切ろうとしたのは、おそらく
婚活パーティーが切っ掛けだろうね。
そう考えると、永堀はいい決断をしたってことだろうね』
『渋谷くんとのことは、この日のための出会いだったのかしらっていうくらい、
不思議なご縁だよね』
『……だね。
ま、お互いの思い違いがないように具体的に話しとくわ。
昨日のうちに、俺たちは身体の関係まで進んでいて、彼女は俺との結婚に
かなり乗り気だな』
『頼んでおいて、今更だけど。
渋谷くんはそれでいいの?』
『不足はないよ。
彼女は、いうてまだまだ若いだろ? で、人のものを盗ろうとする女で
身体の相性もいい。
そして、もしかすると結婚後、永堀の旦那と寄りを戻す可能性もある。
なんなら、マッチングアプリなんぞして、またやらかす可能性も感じられる女だからな。
俺の結婚相手に不足はない。
素敵な女性を紹介してくれてありがと』
『渋谷くん、一生恩にきます』
永堀が俺に、一生恩にきると言う。
それほどに旦那から蓉子を切りたかったんだな。
そっか、まだ旦那に惚れてるのか──
もしくは情が残っていて決着をつけたかったんだな。
永堀の本当の気持ちを聞くのは憚られ、この辺のことは推測でしかないが、
どちらにしても彼女の望みを叶えられてよかった。
星キラリ

2,012
ムメイ
661
まなこ〜友
476
俺はあまりそれほど親しくもない永堀に大学を卒業する日に声を掛けた。
後年ずっと、あの日、声を掛け彼女に自分の癖について語ったことになんの意味が
あったのか? などと、考えたこともあり──
『あぁ、この日のためだったのか』と腑に落ちて、ずっと
探していた理由に出会い、すっきりした。
コメント
1件
わっ、第81話、めっちゃ重層的な人間ドラマだった……! 永堀が仕掛けた罠にまんまと引っかかった蓉子、でもその蓉子を渋谷が逆に利用して「結婚前提」に持っていく流れ、読み応えあったわ。特に「人のものを盗ろうとする女で身体の相性もいい」「またやらかす可能性も感じられる」って渋谷の冷めた分析、怖いくらい現実的でゾクっとした。そして最後の「この日のためだったのか」で伏線回収されるところ、構成上手すぎる。永堀の「一生恩にきます」に彼女の本心が透けて見えた気がしてジーンときたよ。設楽理沙ワールド、また深掘りできて嬉しい🔥